(社説)消費減税の判断 警鐘を聞き立ち止まれ
高市早苗首相が「悲願」とする2年間の食料品の消費税減税について、与野党で意見はまとまらなかった。首相は、実現の前提とした「野党の皆様の協力」が得られないまま、減税の指示に踏み切る方針という。
財源を示すこともせずに、先に決断するのか。さらなる金利の上昇や円安を招き、国民生活や企業活動に深刻な影響が及ぶおそれがある。その責任はあまりに大きい。必要な物価高対策を冷静に吟味すれば、導き出される答えが減税ではないことは明らかだ。
消費税の減税は、社会保障国民会議の主要議題だ。首相の求めで与野党は3月から実務者会議を21回開いたが、大半は「給付付き税額控除」に時間を費やし、導入までの「つなぎ」のよりよい選択肢の議論は深まらなかった。
近く決定する「中間とりまとめ」の案には、自民党の小野寺五典・税調会長が示した議長案を記す。来年4月から2年間、食料品の消費税率を8%から1%に引き下げ、残り1%分を使って所得に連動した現金給付をするという。
一方、多くの野党は「給付の方が迅速」「減税を終了する2年後に負担増となる者が多い」などと、現金給付に一本化することや恒久的な減税を主張。各党の案を丁寧に検討した形跡はなく、とりまとめ案には野党の主張が羅列された。「具体案について意見の一致には至らなかった」とする結論は、当然だ。
首相は、国民会議を舞台回しに減税の責任を野党と共有しようと試みたが失敗し、一転、強行突破しようというのか。議長案通りの法改正に向けて、自民党に党内手続きを指示する方向で調整する。27日の記者会見でも「何かを成し遂げようとすれば大きな抵抗もあるだろうが、公約実現への思いは決して揺らぐことはない」と、結論ありきのようだ。
「悲願」の実現に不可欠となる、年約5兆円かかる財源の議論は置き去りだ。年末の予算編成で「結論を得る」と先送りするのではなく、同時に示す必要がある。
政府が今年の「骨太の方針」で財政拡大志向を示したことで、市場は財政運営への警戒感を強め、国債、円売りによる金利上昇、円安が起きやすい状況になっている。2年後に税率を戻す「増税」は、極めて難しいという見方は根強い。具体的な財源を示さないまま減税を決めるリスクは高まっている。自民党内からも反対意見が出ている。「抵抗」ではなく、警鐘だ。首相は責任の重みを自覚し、立ち止まるべきだ。