事件の捜査でみずから取り調べた女性と不適切な関係を持ち、金品を受け取るなどしたとして、法務省は東京地検特捜部に在籍していた48歳の男性検事を29日、懲戒免職にしました。
懲戒免職になったのは、去年まで東京地検特捜部で現場の検事をとりまとめる「キャップ」を務めていた西田将仁 検事(48)です。
東京地方検察庁によりますと、この検事は2024年ごろから事件の捜査でみずから取り調べた女性と不適切な関係を持ったり、3000円分の電子マネーを受け取ったりしたほか、別の事件で国会議員を聴取するために公費で確保したホテルにこの女性を呼ぶなどしたということです。
不適切な関係は女性に対する略式命令が確定する前に始まり、刑事手続きが終了していない段階でした。
電子マネー3000円分を受け取ったのもこのころで、東京地検は女性と利害関係にある時期にこうした行為に及んだことは検察官の公正性に対する信頼を根底から揺るがせるものだとしています。
また、上司についても監督責任を果たしていなかったとして、当時の東京地検特捜部長の伊藤文規 松山地検検事正(57)を厳重注意に、当時の副部長だった関口新太郎 東京地検特捜部長(53)を訓告としました。
一方、東京地検は、女性を脅すなどして証拠の提出を求めたり、供述を引き出すような不適切な取り調べが行われたりした事実は確認されず、女性を略式起訴した判断も検察内部の決済を経て処理したものだとして、捜査への影響は認められなかったと説明しました。
東京地検は、再発防止策として、捜査や裁判の対応が終わったあとを含め、業務上の必要がないのに検事が関係者と私的に接触することを禁止するなどとしています。
懲戒免職の検事「略式起訴をしたことで気が緩んだ」
東京地検によりますと、西田検事は調査に対し「取り調べた相手と関係を持つことは適切ではないと考えていたが、略式起訴をしたことで気が緩んだ。本当に申し訳ない」などと話していたということです。
当時の東京地検特捜部長「信頼裏切り 心からおわび」
当時、東京地検特捜部長で厳重注意を受けた、伊藤文規 松山地検検事正は、「元部下が懲戒処分を受けたことは誠に遺憾で、元上司として監督上の責任を痛感するとともに、国民の皆様の信頼を裏切ったことを心からおわび申し上げたい。今後は一層、検察庁職員の倫理を意識し、部下職員を適切に指導監督して再発防止に努めたい」とコメントしています。
当時の特捜部副部長「監督責任を痛感」
当時、副部長で、訓告を受けた関口新太郎 東京地検特捜部長は、「処分を受けたことを重く受け止めており、みずからの監督責任を痛感し、このような事態となったことについて深くおわび申し上げる。より一層の綱紀の保持の徹底を図り、国民の皆様からの信頼の回復に全力で努めてまいりたい」とコメントしています。
東京地検「検察に対する信用損なわせる 極めて遺憾」
東京地検は、「検事が、自身が取り調べていた女性と不適切な交遊を継続するだけでなく、女性に対する略式命令が確定する前という、利害関係者としての地位を有する時期に物品の贈与を受けたことや、取り調べに用いるために公費で宿泊料が支払われていたホテルの一室を業務と無関係の行為に用いるなどしたことは国家公務員倫理に背くもので、検察官の職権行使の公正性に対する信頼を根底から揺るがせ、公費の支出の適正さにも多大な疑念を抱かせた。一連の行為は、検察に対する信用を著しく損なわせるものとして極めて遺憾で、国民の皆様に対し深くおわび申し上げます。今後、再発防止を徹底してまいりたい」とコメントしています。
検事が処分される事案 相次ぐ
検察庁では、検事が不適切な行為によって処分される事案が相次いでいます。
去年10月、千葉地方検察庁の男性検事が、過去に取り調べを担当した事件の関係者からあわせて100万円余りの飲食接待を受けたなどとして、停職10か月の懲戒処分を受けました。
去年12月には、さいたま地方検察庁の男性検事が、特定の人物の前科など職務上知ることができた情報を交際相手の女性に漏らしていたとして懲戒免職となり、国家公務員法違反の罪で罰金30万円の略式命令を受けました。
また、特捜部をめぐっては、取り調べをめぐる問題も相次いで明らかになっています。
このうち、2019年に大阪地検特捜部が捜査した横領事件では、田渕大輔 被告(54)が不動産会社の担当者の取り調べで机をたたき「検察なめんなよ」などと罵倒し続けたとされ、特別公務員暴行陵虐の罪で被告となり、裁判が始まっています。
また、2021年に東京地検特捜部が捜査した詐欺などの事件では、堀木博司 検事(58)が黙秘する太陽光発電関連会社の社長に「黙秘を人のせいにするな」とどなったとされ、同じく特別公務員暴行陵虐の罪で被告となっています。
元東京地検特捜部の弁護士「不適切極まりない悪質行為」
東京地検特捜部に在籍していた検事が懲戒免職となったことについて、かつて東京地検特捜部の副部長などを務め捜査の現場に詳しい西村尚芳 弁護士は「特捜部のキャップが取り調べの相手と不適切な関係に陥るなど前代未聞だ。権力的な職務にあたる立場だったともいえ、女性が弱い立場にあったことを考えると不適切極まりない悪質な行為だ。キャップとしてほかの検事以上にモラルに厳しくなければならなかったはずで、こうした人物を登用した上層部にも非常に問題があると思う」と指摘しています。
特捜部をめぐっては、東京地検や大阪地検の検事が取り調べで相手を罵倒するなどして被告となる事態も起きていて、西村弁護士は「取り調べ室では検事と相手では明らかに立場が違う状況下にあり、だからこそモラルが重要となる。相次いでいる一連の問題は、検事の倫理的な欠陥が原因だと思うが、上層部はキャップまでもが問題を起こしたことを深刻に受け止めるべきだ。兆候を見抜いて早めに手を打つ必要がある」と話していました。
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