“遺骨収集問題” 北海道大学の謝罪に アイヌの人たちは
北海道大学は研究目的としてアイヌの人たちの遺骨を収集し、保管してきた問題で27日、初めて謝罪する声明を出しました。
アイヌの人たちからは、今回の謝罪について前向きに評価する一方、直接の謝罪の場の実現を求める声も聞かれました。
北海道大学は昭和初期から道内各地などでアイヌの人たちの遺骨を収集し、学内で保管していたことがわかっていて、これまでの調査では、当時の遺骨収集や研究はアイヌの人々や、その文化に対する理解を欠いた姿勢など、尊厳に対する配慮が十分に払われないまま行われていたことなどが明らかになったとしています。
27日の会見では寳金清博学長が大学として、初めて正式に謝罪しました。
遺骨収集の問題をめぐっては北海道大学は7年前(2019年)に「反省する」などという声明を出していましたが、これまで正式に謝罪をしたことはありませんでした。
今回、大学側が、謝罪したことについて、日高の平取町に住むアイヌ民族の木村二三夫さんは、「やっとアイヌの方を振り向いてくれたと感じる。今回の謝罪は大きな一歩だとは思うが、スタートラインに立っただけとも言える。全道や全国にいるアイヌすべてに行き渡るような謝罪の方法はないのか、考えてほしい」と述べました。
また、アイヌ民族の山下明美さんは、「謝罪の声明はあいまいなものではなく、『過去の研究が、アイヌの人々に対する差別や偏見を前提としていた』と明確に示したことは真摯な反省の姿勢を示していて、評価できる。ただ、私たちが求めたいのは直接の謝罪の場で、これからも実現するよう訴えていきたい」と述べました。
【北海道アイヌ協会コメント】
北海道大学がきのう初めて謝罪したことについて北海道アイヌ協会は「北海道大学の決断に対し、その真摯(しんし)な姿勢に深く敬意を表します。当協会と北海道大学の関係はこのたびの声明をもって終わるものではありません。今後も相互の信頼のもと緊密に連携・協力しながら遺骨返還をはじめとする諸課題の解決に取り組んでまいります」とコメントしています。
【北海道大学の研究とこれまでの対応 】
北海道大学は過去にもアイヌの人たちの研究を巡り反省を示す声明を発表していますが、謝罪はしていませんでした。
▽2005年には当時の中村睦男学長が「民族の尊厳に対する適切な配慮を欠いていたことを真摯に反省する」などと声明を発表しました。
▽2019年には当時の笠原正典学長職務代理が会見を開き、「アイヌ民族の尊厳に対する適切な配慮を欠いており、極めて遺憾であり真摯に反省しております」と表明しました。
一方、謝罪について問われると「反省と謝罪することは別だ」と述べています。
2013年には遺骨収集の経緯について調査報告書を公表しましたが、収集方法に違法性は確認できなかったとしていました。
こうした中、27日、北海道大学が公表した調査報告書は、1933年度から1937年度にかけて行われたアイヌの人たちの人種的な特性の研究について、▼特定の民族を身体的・精神的に劣っていると決めつけようとする姿勢が存在し、▼差別や偏見を前提として立証できていない仮説に拘泥するなど、現代の学術研究としても否定されるべきものだと指摘しました。
この報告書の公表とあわせて北海道大学は27日、「一連の行為について心を痛めてこられたすべてのアイヌの人々に対し心からおわび申し上げます」と初めて謝罪しました。
【アイヌ研究の問題に詳しい札幌大学の本田優子教授の話】
アイヌ研究の問題に詳しい札幌大学の本田優子教授は北海道大学がきのう、初めて謝罪をしたことについて「アイヌ研究の代表格ともいえる北海道大学が謝罪まで踏み込んだのは歴史的な意味がある」と評価しました。
また、正式に謝罪をするまでに時間を要したことについては「今もなおアイヌの人々に対する差別的な言動が見られるなか、安易な謝罪では当事者に対してさらに悪影響を及ぼしかねないという懸念があり、慎重に時期を見定めた結果だと思う」と話していました。
そして、今後大学が果たすべき役割については「謝罪で終わりではなく、これからが本番だと思う。大学内の研究姿勢を本当の意味で改め、アイヌ研究の振興に積極的に取り組んでいく必要がある」と話していました。
【黄川田こども政策担当大臣 “北海道大学が適切に対応すべき”考え示す】
アイヌ施策を担当する黄川田こども政策担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「北海道大学の今後の具体的な対応を通じて、アイヌの方々の民族としての誇りが尊重される社会の実現に貢献するものとなってほしい」と述べ、今後、北海道大学が適切に対応すべきだという考えを示しました。
その上で「近代化する過程でアイヌの方々が差別されてきた歴史的事実は従来から政府として厳粛に受け止めており、現在も変わることはない。アイヌであることを理由に差別することはあってはならないと改めて明確に申し上げ、アイヌの方々の誇りが尊重される社会の実現に向けて引き続き、力を尽くしていきたい」と述べました。