去る4月29日の「昭和の日」に挙行された「昭和100年記念式典」に参列した。後半に、昭和にちなんだ名曲として「上を向いて歩こう」など戦後の6曲が演奏された。
時代精神を表す名曲
この式典の挙行が決定したという記事を読んだとき、その中に昭和に関係した音楽が演奏されると書いてあったので、どういう曲が選ばれるだろうかと興味を持った。というのは、明治の批評家、斎藤緑雨が「音楽は即(すなわ)ち国のさゝやき也(なり)」といったように、音楽はその国の時代精神を表すものだからである。
私が、こういうのはどうだろうと思ったのは、まず戦前からは「椰子(やし)の実」(島崎藤村の詩、大中寅二作曲)、この曲は昭和11年の国民歌謡である。戦後からは「日本のあさあけ」(斎藤茂吉作詞、信時潔作曲)、この曲は昭和27年4月28日の講和条約発効記念式典の祝典歌であり、「占領下」が終わり独立を回復したことの意義を改めて確認することは、「占領下」が、或(あ)る意味でまだ続いているかと思われる今日の状況にとって必要であると思われるからである。それから、「オリンピック・マーチ」(古関裕而作曲)、昭和39年の東京オリンピックの音楽であり、その後の日本の躍進を告げる行進曲であった。
しかし、何よりも、この記念式典でとりあげてもらいたかったのは「海ゆかば」である。歌詞は、大伴家持の長歌から採られ、作曲は信時潔である。日本放送協会の委嘱によって作曲され、昭和12年10月に初放送された。昭和の回顧は、「海ゆかば」の厳粛な音楽を聴きながらなされるべきではないか。このように思わせるのは、「海ゆかば」について改めて痛切な経験をしたからである。