いまだに52%の女性たちが望まないセックスをしている現実〜フランスの場合
先週末は、マクロン大統領が国連でパレスチナ承認を発表する直前で、フランスは政治的に大揺れに揺れていた時期だった。しかし、世界の5大クオリティペーパーの一つとされる日刊紙ル・モンド紙上でアクセスランキング一位になった記事はなんと、プライバシー欄の「なぜ女性はまだ自分の意志に反してセックスするのか?」 だったので紹介したい。
「口論を避けたいから」が理由?
仏世論研究所(IFOP)が2024年2月に発表した統計によると、女性たちが望まないセックスを受け入れることは約40年前に比べると少なくなったようだ。1981年、「望まないセックスをすることはありますか」という質問に、18歳から49歳の女性のうち76%がYesと答えていたが、昨年の統計ではその数は52%に減少したからだ。しかし、それでもいまだに約半数の女性がパートナーに対して自然にNoと言うことができないことは、これまた問題ではないだろうか?
性科学者のマリス・カステ医師によると、まず、そこには「パートナーの気持ちを損ねないために」という女性側のやや過剰な気遣いがあるという。「Noと言うのは恥ずかしい、あるいは喧嘩を避けたいと言う女性が実に多い。後で刺々しい態度を取られたり、意地悪なことを言われたり口論に発展するよりは、嫌々ながらでも応じた方がいいと思っているのです」と。
また、「リピドーを維持するためには頻繁にセックスした方が良い」という真偽不確かな説があり、これを信じている人も多いらしい。「カップル間のつながりの証、だから嫌でも疲れていても相手のために少々努力するのは当然だ、そのうちに欲望が芽生えるだろうと考える人がいる。でも、お腹が空いていなくても無理矢理に食べれば、そのうち食欲が湧くだろうというこの考え方に、私は賛成できません。食べたくない時にお菓子を食べ続けると、最終的には考えるのも、見るのも嫌と言うことになりかねないからです」と同医師は言う。
まだまだ強い性的基準の内面化
性的先進国というイメージが強いフランスだが、実際には、セックスにかんする「こうするべき」、「これが当然」という基準を内面化している女性が多く、自分なりに考えてみる機会を持つ人はあまりいないようだ。同記事内で、性科学者Margaux Terrou医師は「ほとんどすべての女性がこれまでに欲望なしに望まないセックスした経験があるはず、だから自分を責める必要はまったくありません。(…中略…)それよりも、そういう自分に気づくことは、自分の本当の欲望を再発見する機会であって、それをパートナーの欲望とマッチさせるためには、言葉にして話し合う方がいいのでは」と勧めている。どうやら、以心伝心は御法度、「言葉」にすることこそが大切らしい。
では男性側の言い分はどうだろうか?
フランスでは、結婚しているカップルの間でのセックスは「婚姻上の義務」とみなされる傾向があり、2019年にも、セックスを数年にわたって拒否していた女性に「過失」があるとされた離婚裁判の例がある。(2025年1月に欧州人権裁判所がこの判決を違法とし、判決は覆された。)
今や若者の間では、性的同意の必要性はもはや自明のことになりつつあるが、それでもやはりグレーゾーンは存在するのだろうか? 記事内で引用されている例では、45歳のルイ(仮名)は「妻が欲望なしにセックスしてくれたようなことはなかったことを願うばかりですが、やっぱり、私を傷つけないようにと気遣ってYesと言ったことはあったような感じがします。彼女は僕よりも性欲が少ないので、断られることもしばしば。辛くて膨れっ面をすることもあるのですが、ゲーム機を取り上げられた子どものようで大人気ないなと自分でも思う」と言っている。
こうした男性たちの不満も聞いてきたTerrou医師は言う。「男性たちはよく、『セックスを通して初めて、愛されているという感覚が得られる』と言うけれども、挿入を中心としたセックスよりも、日常生活の中にもっと官能的な時を頻繁に取り入れては?たまには長く愛情を込めたキスするだけの方がよかったりしますよ」と勧めている。
セックスの頻度は減少、しかし満足度は上昇?
ところで、昨年、仏国立衛生医学研究所と国立エイズおよび伝染病研究局が、『フランスのセクシャリティー2023年版』を発表した。5年を費やして15歳から89歳の約3万人を対象にして国民の性行動に関する統計をとり、これをまとめて分析したものだ。
過去の統計(2006年版)の結果と比べみよう。国民一人当たりのパートナー数は男女ともに増加、そして性行為のバリエーションも多様化している。注目に値するのは、セックスの回数は減少(1ヶ月あたり女性6回、男性6,7回)したが、それでも満足度は上昇。女性の45,3%、男性の39%が「自分の性生活にとても満足している」と答えており、特に、女性の満足度が過去の統計に比べて著しく上昇している。社会学者で同統計を行ったチームの一人であるナタリー・バジョ氏は、女性が自主性をより持ち、性的同意の新しい基準が普及したことの結果でもあるとしている。
同時に、この統計は警鐘も鳴らしている。18歳から69歳の女性のうち29,8%がセックスを強要された、あるいは強要されそうになったと答えており、その数は、2006年(15,9%)より増加している。