哀悼。とりあえず俺の精一杯で東野ミステリーに寄せてみた。
東野圭吾が亡くなった――その報せは、深夜の静まり返った部屋に不自然なほど軽い音で届いた。
だが、その瞬間、僕の胸に走ったのは悲しみではない。
もっと別の感情だった。
長い間、封じ込めてきた秘密が、ついに外へ漏れ出すのではないかという恐れだ。
僕は彼のゴーストライターだった。
世間が知る東野圭吾の著作は百冊を超えるが、そのうちの多くは僕が書いた。
もちろん、誰も知らない。
いや、知ってはいけないことだった。
彼との出会いは偶然だった。
コボさんが「容疑者Xの献身が面白い」と言い、映画を観るよう勧めてきた。
原作も読んでみようと本屋で手に取った。
ページをめくるたび、背筋が冷たくなった。
そこに書かれていたのは、僕がかつて書いた未発表原稿の断片だった。
なぜ僕の物語が、彼の名で世に出ているのか。 問いただしたとき、彼は静かに笑った。
「君の方が、僕より東野圭吾らしいんだよ」