第二の宇宙 残された歴史
朝目が覚めると、近くのリンドバーグ公園で子どもがはしゃいでいる。おそらく、この声に起こされたのだと、習慣で分かっている。砂の城を築き上げる子どもたちは、まだあの話をしている。セントカロライナについての調査のようなものだ。この私が存在しているこの宇宙は、新たな宇宙──それは第二の宇宙──と教えられた日から、本当に前宇宙が滅びたのか、にわかに信じられなかった。その教えを聞いたとき、セントカロライナ問題という言葉を知った。宇宙が本当になくなったのか、という問題と捉えて間違いないであろう。子どもたちは、『何で宇宙がなくなったの』『新たな宇宙はどうやって、しかも、前の宇宙はどうやってできたの』という科学的な話をしている。私はその問いを一度も抱かなかったわけではない。技術は一億年かけてルネサンスを迎えた。前宇宙の技術をコピーするというイノベーションも古くから起きてきた。子どもはまだ砂場で、『いつ第二の宇宙が出来たか』という問いを発した。私は今までたくさんの問いを見つけたが、この問いに驚くことも、新鮮さを感じることもなかった。『第一の宇宙は全神のせいだと聞いたよ』と得意気に話す子どももいた。私は、『む、全神さんのせいだとよく知っているな』と気づけば砂場に接近していた。子どもは、『お兄ちゃん、"全神"って僕の父親が言ってたんだよ』と教えてくれた。全神さんは、何でも超能力で破壊できる強者だ。一億二千年前年にこの第二の宇宙が出来たことは、全神さんが一番よく知っている。第一の宇宙の始まりはいつなのか、という問いはトップシークレットと言っていた。ヒントは未来から過去に効いた魔術のせいと言っていた。これではトップシークレットなのに露出しているとも思えた。私は『君の父親の職業は』と訊ねた。その子は『プログラマーって言ってたよ』と応えてくれた。私は『プログラマーか。なら宇宙はプログラムできるとか言ってなかったか』と訊ねた。子どもの名は勇士。宇宙はプログラムなんて一言も言ってないはずだよ、ほとんど無口で、でも謙虚で、園六という名を持っている、と言った。私は、『その園六という父親に会わせてくれないか』と真剣に言った。勇士は、『いいよ、助六という弟と一緒にぼくの家に行こう』と言った。勇士は私を訝しがることもなく、助六を紹介してくれた。助六は、『ぼくのお父さんは天文学的なことを研究しているんだ』と言った。私は、そんな熱心な人がなぜ結婚するのかな、と疑問を抱いた。君のお母さんはどんな、と言いかけると、雨が降ってきた。勇士は、『早く一緒に行こう、ついてきて』と弟と私に言うと、駆け足で家へ向かった。家は一キロぐらい離れていたが、ぽつりぽつりが少し進んだ程度で、ずぶ濡れになることはなかった。この子たちのお父さんは、怒らないようなイメージがあるが、案の定、彼に会ってみると、大人しい感じを受けた。園六は、『何のようでしょうか』と訊ねた。私は、『簡潔に言おう。宇宙は作れるか、その応えと宇宙の作り方を』と言った。『なるほど宇宙はプログラムできるかということが知りたいということですね。できる可能性はあります。まだ前宇宙があったとき、群心という方が"世界はゾンビだらけになった"と遺しています。何か察せますか』と丁寧に園六は言った。私は、『ゾンビばかりいて大変すぎて解決するために宇宙をなくしてしまったのでは』と言った。『お目が高い、そういうことですよ。宇宙は屍の蔓るところであるのでは残酷すぎるということです。全神さんが宇宙もろとも無くしたことで有名ですね』と園六は言った。勇士と助六は、全神さんって前も言ってたね、どんな人なの、と呟いた。私は、『時々この宇宙が無くならないか不安になる、全神さんにおいては警察もお手上げだ。彼は永久中立国スイスにお城を引いている』と言った。『率直に言ってくれてありがとうございます。全神さんが宇宙を無くさなければ良いのだが、その辺りが心配だということですね』と園六は言った。私は、『それで、宇宙はどうやって創るんだろうか』と言った。園六は、『エルフ隊という魔術集団があります。第一の宇宙が消滅する二千年前から、宇宙が消滅することを予言していました』園六はコップ一杯の水を飲む。私は、『エルフ隊とやらが、未来の第二の宇宙環境を整備すべく、援護射撃していたのか』、と思った。園六は、『宇宙が消滅した地点の辺りに第二の宇宙を召喚されるように仕組んだのが、エルフ隊です。魔法は一億件にも及びます』と熱心に言った。私は、『正直に言ってくれてありがとう。ところでこの宇宙はいつか無くなるかな』と訊ねた。『無くなるのは宇宙環境に欠陥があったからと思います。この宇宙にゾンビなどの欠陥生命体がいなければ、宇宙は破壊されないと』園六は言った。詭弁にも感じそうな発言にも感じた。
私は目が覚めると、公園の方から第三、第三、という声が聞こえる。第三の宇宙とコンタクトを取れた、とも聞こえた。エルフ隊は第二の宇宙だけではなく、第三の宇宙をも召喚していたのである。昼寝から起き上がった私は、エルフ隊のもとへ駆けつけたくなった。調査がしたいのだ──なぜ第一の宇宙にゾンビが蔓っていたか、宇宙を消滅させても社会的に赦される訳を──。今度は第三の宇宙という概念まで起きている。私の狙いは、完璧な環境をプログラムすることである。
園六は、完璧な環境をプログラムするというのは信じることです。なぜ前宇宙にゾンビが蔓っていたかは、クワナサンというやらがゾンビを大量に生産していたからでしょう。クワナサンとは会わない方がいいです。赦されるのは、宇宙を消滅させても社会的に正しいとみられたのではないか、と丁寧に説明してくれた。エルフ隊については語らない、と一点張りであるところが面白くないわけではなかった。彼は無口を克復していた。正直に生きるところを私は見習った。信じる生き方も学んだ。エルフ隊と全神さん、どちらもおんなじくらいのレヴェルなのであろう。攻撃は最大の防御、と云うが、全神さんを消滅されれば、こちらに被害はない。全神さんを消滅するのをエルフ隊の一員に打診することが不安から解放される一歩なのだ。
私はエルフ隊の居場所を分かっているわけではなかった。だが私は、エルフ隊は全神さんを消滅させると念じて信じた。そうすると、全神は消滅される気がして焦った表情を見せた。全神は誰が手を打ってくるか、考えを巡らせた。エルフ隊の一員、ホロフのせいだと気づいたときにはもう遅く、ホロフは全神を消滅させた。その三秒後、『宇宙が崩壊します。他世界へ避難してください。』とコールが鳴った。ホロフは私に操られていたことに気が付いた。私はホロフの所在に気付かなかったが、第三の宇宙に奇跡的にテレポートした。コールが鳴った理由は、──宇宙が崩壊する理由は──全神さんが自分自身の命が無くなっても世界を消滅させれば良いというわがままから爆弾として置いたのだという。エルフ隊と園六たちは焦った。解決しようとしていると、第三の宇宙の元帥がエルフ隊よ、この宇宙に来い、と命令した。エルフ隊は全神の部下はいないか調査していたが、全神の部下らしき人物はみられなかった。エルフ隊は助けてよい人物を探した。残り時間3分24秒で第二の宇宙は崩壊する、急げ、善良な人物をテレポートさせるんだ。園六はテレポートプログラムを開発させていた。奥さんはエルフ隊の一員、ゼネロフであった。園六の四人家族は第三の宇宙にテレポートすることに成功した。過去に砂の城に指輪を落としたゼネロフは、今もう一度砂場を探したい、と思ったが、園六に止められた。私もそこにいては奥さん自身が消滅してしまうと危惧していた。エルフ隊は全神と共に消滅した。奥さん以外のエルフ隊は、ダークエルフ隊に命を脅かされていた。奥さんは、ダークエルフ隊と一騎討ちになりそうであったが、時間切れでダークエルフ隊は消滅された。私は第四の宇宙を園六と共に創ろうと思い立った。
実は私と園六は双子兄弟であることが後に分かる。だが、園六は兄弟には無頓着だった。考えたこともなかった。全神が宇宙を消滅させられうるのであれば、今回もまた似たような現象である。彼は、第三の元帥に怒られやしないのか、考えたとしても、復活することもないであろう。第三の宇宙の元帥は、全神が無くなった理由を私に尋ねた。私は「エルフ隊のせいにしたかったのです。でも彼が生きていれば、どの宇宙も、人々も凄く危険であることはたしかでしょう」と言った。


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