2026年5月、ログリー株式会社(東証グロース)がプレスリリースを発表しました。
2021年に買収した子会社「moto株式会社」を吸収合併するという内容です。
一見すると、よくあるグループ再編に見えるかもしれません。でもこの案件、SEO業界やWebメディア業界にいる人間からすると、かなり示唆のある事例だと感じました。
なぜなら、このmoto株式会社は5年前、最大10億円規模で買収された会社だったからです。
今回はこのM&A案件を見ながら「SEOメディアの企業価値とは何なのか?」について考えてみたいと思います。
2021年、ログリーはmoto株式会社を最大10億円で買収していた
2021年4月、ログリー株式会社は転職メディア事業を展開していたmoto株式会社を買収しました。
買収条件は以下です。
- 買収金額:約7億円
- アーンアウト(業績連動成功報酬):最大約3億円
- 合計最大:約10億円
当時、moto株式会社は主に転職系SEOメディア 「転職アンテナ」 を運営していました。転職領域のビッグワードでも上位表示されており、SEO業界ではかなり成功していたメディアでした。
当時の業績を見ると、かなり優秀です。
- 売上:約3.16億円
- 営業利益:約8,000万円
転職領域では国内トップクラスの収益性の高いSEOメディアだったことが分かります。
moto株式会社の売上は5年間で約94%減少していた
そして2026年5月。
ログリー株式会社はmoto株式会社を吸収合併すると発表しました。今回のIR資料には、moto株式会社(消滅会社)の直近財務状況も記載されています。
2026年3月31日時点の数字がこちら。
- 総資産4,042万円
- 純資産3,732万円
- 売上高1,908万円
- 営業利益915万円
- 経常利益1,003万円
- 当期純利益756万円
ここで2021年買収時の数字と比較してみます。
2021年
- 売上 3.16億円
- 営業利益 8,000万円
2026年
- 売上 1,908万円
- 純利益 756万円
つまり売上ベースで見ると
3.16億円 → 1,908万円
約94%減少しています。これは単なる事業変動ではありません。かなり大きな価値毀損が起きていると考えられます。
吸収合併は「成功した統合」ではなく「整理統合」の可能性が高い
今回のプレスリリースにはよくある文言が記載されています。
経営資源の集中及び経営効率化
IRでは頻繁に使われる表現ですが、M&A実務では大きく2パターンあります。
パターン1:成功したので本体統合
- 事業成長に成功
- 子会社として残す必要がない
- 本体に統合して効率化
パターン2:想定通り成長せず整理統合
- 子会社維持コストが無駄
- 当初の成長シナリオが崩れた
- 法人整理も兼ねて吸収合併
今回の数字を見る限り、かなり後者の可能性が高そうです。
SEO事業は買うものではなく、理解している人間が運営して初めて価値が出る
今回の案件を見ると、2021年の買収価格が異常だったとは思いません。当時の相場なら成立する価格です。でも問題はその後です。
SEO事業は放置しても利益が出る事業ではありません。アルゴリズム変化に対応し続ける必要があります。
昨日まで1位だったページが、半年後には圏外になることも普通にあります。
コンテンツも改善し続けなければいけない。競合分析も必要。Googleのアルゴリズムも追わなければいけない。
つまりSEOメディアは買った瞬間から価値が減少し始める可能性がある事業なんです。
まとめ
多くの企業はメディアを買収するとき、PVや売上、利益といった数字を見ます。しかしSEOの世界では、その数字は永続的なものではありません。
重要なのは「今いくら儲かっているか」ではなく、Googleが変わり続ける中でも成果を維持し続けられる運用力があるかどうかです。
結局のところ、価値があるのはWebサイトではありません。
そのサイトを成長させ続けられる人材、つまりSEOを理解し、運用できる人間そのものに価値があると私は思います。
今回のmoto株式会社の事例は、それをかなり分かりやすく証明しているように感じました。