《深夜2時、ひとりで…》「事故物件」専門の調査会社を立ち上げた元エリート不動産マン 全国から依頼が集まる“新ビジネスの舞台裏”
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心霊現象ではなく「愛」が残った部屋
児玉さんがこれまでに調査で関わってきた事故物件は、会社員時代も含めると400室を超える。調査だけでなく、特殊清掃や原状回復にも携わることから、現場では遺族と言葉を交わす機会も少なくない。 そんな中、今も忘れられない現場がある。大病を患った末に未来に絶望し、自室で自ら命を絶った高齢女性の部屋の調査だ。高齢女性は「家族に迷惑をかけたくない」という思いを抱えていた。 「女性は病に苦しみ命を絶つ選択をした後も、最期の瞬間まで離れて暮らす娘さんのことを気にかけていました。遺書には『変わり果てた姿を見せてしまってごめんなさい。でもこうするしかなかった』という謝罪と、『あなたのことを深く愛している』『残した資産で迷惑をかけてしまった分の支払いを済ませて、残りはあなたの人生のために使ってください』という言葉がつづられていました。事故物件というと、何か恐ろしいものが残っているように思われがちですが、その部屋に残されていたのは苦しい状況の中でも、最後まで家族を思い続けた母親の愛情だったんです」 児玉さんは調査の後、環境データに異常がないことに加え、調査報告書へこう記した。 「健康上の事情を背景としたものであり、遺恨や憎悪などはなく、最後まで残された家族を思っていた様子が書面から読み取れたことから、心理的瑕疵は軽微であると考えられます」 この報告書はオーナーだけでなく、故人の娘さんにも渡すことになった。 「『母の最期の思いを残してくれてありがとうございます』と、涙を流しながらお礼を言ってくださったことが忘れられません」 ■事故物件の調査が守るもの 「一見するとオカルト調査のようですよね。でも実際は、家賃収入が減り、資産価値の低下に苦しむオーナーさんに寄り添い、次に住む入居者さんの不安を取り除く仕事です。ときには遺族の方の心を少しだけ軽くすることもあるかもしれません。調査をすることで、みんなが幸せになる仕事だと思っているんです」 超高齢社会を迎え、孤独死は今後さらに増えていく。事故物件をどう扱い、次の住まい手へつないでいくのか。その答えを探すように、児玉さんは今夜も、誰もいない暗闇の部屋で、静かにカメラを回し、測定器の数値を見つめ続けている。
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