還暦を過ぎると、新聞を読んでもクマ1頭に大騒ぎしているテレビを見てもめったに驚かなくなったのだが、9日付新聞各紙の社説を読み比べてビックリした。
なんと、読売と朝日の社説がうり二つだったのだ。多くの読者の皆さんは、読売は産経と同じような保守で、朝日や毎日はリベラルという先入観でみられていると思う。事実、憲法改正など政治的なテーマでは、読売と朝日は、正反対な論陣を張る場合がほとんどだ。だが、アレに関しては、ほぼ同じだったのである。
産経新聞は強く支持したが
前日の8日、衆参両院の正副議長は、旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える案と女性皇族が結婚後も身分を保持する案をいずれも「了」とし、政府に法制化を求める案を与野党の全体会議で提示した。
産経新聞は、9日付の主張で「日本の皇統を護る内容だ」と強く支持したが、読売と朝日は真っ向から反対した。ちょっと紹介してみよう。
A「皇族数確保が目的と言いながら、実際は男系男子による継承の維持に道筋を付け、女性・女系の継承をあらかじめ封じようという意図が透けて見える」
B「男系男子論からは、女性皇族の子には皇位継承資格を与えるべきではなく、養子の子には与えられることになるが、賛成できない」
そして、結論はこうだ。
C「女性・女系天皇への道を閉ざさず、広く国民が納得できる議論の場を、速やかに設けてもらいたい」
D「政府は改めて有識者の会議を設け、皇統の安定的な継承策を正面から議論し直すべきだ」
さて、どれが読売でどれが朝日か、お分かりになっただろうか。これが分かれば、相当な新聞通である。正解は、AとDが読売で、BとCが朝日である。どうですか? そっくりだったでしょう。
生きている?ナベツネ遺訓
朝日新聞が、男系男子論について「『男尊女卑』の考えや慣習が埋め込まれていないだろうか」と反対するのは、いつものことなので驚かないが、読売まで歩調を合わせているのはどうしてか。
読売は昨年5月、女性天皇のみならず、将来的には母方のみが天皇の血を引く女系天皇の可能性も視野に入れた皇室典範改正に関する提言を発表している。しかも戦後に皇籍を離脱した旧宮家の男系男子を皇族の養子とする案に「国民の理解が得られるのだろうか」(令和7年5月15日付)とけなしている。
この提言に当時、立憲民主党代表だった野田佳彦は欣喜雀躍(きんきじゃくやく)したが、保守系論客は「読売新聞は0点」(八木秀次、月刊正論令和7年7月号)などと、強く反発した。
ただ私には、読売の「女系天皇」へのこだわりは、2年前に亡くなったナベツネこと読売新聞主筆だった渡辺恒雄の〝遺訓〟のような気がしてならない。彼は終戦直後、天皇制廃止を主張していた日本共産党に入党した(後に除名)。旧軍に対する嫌悪の情も強く、首相の靖国神社参拝に強く反対する社論を展開し、朝日新聞と〝共闘〟したこともある。
今回の一件で、そんな昔を思い出したのだが、新聞はみな同じでないから面白いね、ナベツネさん。=敬称略(コラムニスト)