安いのに“客離れ”が止まらない「かつや」 男性客を遠ざけた、ワンコインの壁とは?
低価格帯の「かつや」で客離れが進むワケ
低価格のかつやで、なぜ客離れが進んでいるのか。結論を先に言うと「低価格メニューを求める男性客が減少したこと」が要因だと筆者は考えている。 かつやの強みは明確な「男性客ターゲット戦略」と、100円割引券を使った「クーポン戦略」だ。客は500円以上の会計で、100円割引券をもらえる。カツ丼の中で最も安い「カツ丼(梅)」でも500円を超えるため、事実上、訪れるたびに割引を受けられる仕組みだ。 同社によると利用率は約65%で、来店のきっかけにつながっているという。これまでは100円割引券を使うことで、500円未満で「カツ丼(梅)」を食べることができ、外食頻度が高い独身男性の支持を集めていた。 だが、2024年6月の値上げで「カツ丼(梅)」は616円になり、同年10月の値上げで649円になった。現在の価格は682円だ。客は割引券を使っても、ワンコインに抑えることができなくなった。 競合の「松のや」は「ロースかつ丼」の並盛を690円で提供している。丼ものの価格帯はかつやの方が安いが、定食メニューは松のやの方が安い。また、牛丼の並盛を500円未満で提供する牛丼チェーンも競合である。低価格メニューを求める男性客は、かつやの来店頻度が低下したか、他社を選ぶようになったと考えられる。
客数減少に歯止めをかけるには
2026年2月期におけるアークランズの外食事業は、売上高608億円(前年同期比8.3%増)、営業利益53億円(同10.5%減)の増収減益で着地した。今期は客離れが深刻だが、客単価の低い層が離れたことを踏まえると、収益への影響はそこまで深刻ではないと筆者は考えている。少なくとも、赤字で不採算店の閉鎖が相次ぐ事態にはならないだろう。 最近のかつやは1000円を超える「合い盛り丼」など、高価格帯の期間限定メニューで集客を図っている。ボリューム感を訴求する戦略で、現在展開している「うな玉とロースカツの合い盛り丼」は1320円だ。しかし前述の通り、1200円超えのラインは他社も苦戦している。 かつやはロードサイドでの出店が中心なため、宣伝では不利な状況にある。駅前に展開するチェーンと比べると認知率は低く、利用機会が少ない人も多い。だが、外食産業では依然として低価格帯に位置しており、事業拡大の余地は大きい。 他業態と比べた価格面での優位性を打ち出し、中価格帯チェーンを利用する層を呼び込むことで、客数減少に歯止めをかけられるかもしれない。
著者プロフィール
山口伸:経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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