FRaU
Photo by iStock
Photo by iStock

加害者ひとりを罰しても変わらない。精神科医が考える、日本の性暴力が根絶しない理由

性暴力がなくならない理由 前編

「フジテレビの問題で、 第三者委員会の報告書 を読みました。そもそも、今回の性暴力問題が起きたのは2023年6月。2023年3月のBBC放送以降、ジャニー喜多川氏の性暴力の疑いで報道が絶えなかった時期でした。2023年9月には旧ジャニーズ事務所が性加害を認め、会見をしています。しかしフジテレビ、また男性タレントはこの当時も『自分がやってることはこの流れのことと同じ』ということを理解できずにいたわけです。彼らの生きてる世界がいかに歪んでるかが象徴されていますね」

こう語るのは、アメリカのハーバード大学に勤務する小児精神科医であり、『 ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る 』の著者である内田舞さんだ。

photo/iStock 

3月31日に公表された、フジテレビ第三者委員会による報告書は、中居正広氏が元フジテレビ社員の女性に業務の延長上の関係から性暴力を起こしたことを認めたものだった。しかも、過去に性暴力の被害に遭ったフジテレビ社員も複数おり、社員の希望を無視して「そのような事実はない」と公表したことまであったと伝えた。

中居正広氏が芸能界を引退し、当時の港社長が1月27日付で交代、3月31日には日枝久氏がフジサンケイグループ代表の座から降りた。そして今は、中居氏と被害女性とを近づけるきっかけを作り、今回の性暴力のあとも中居氏のために動いていたことが明らかになったフジテレビ幹部のB氏に矛先が向かっている。もちろん問題がなぜ起きたのかを追及することも重要だが、被害女性がコメントを出した「このようなことが社会全体からなくなることを心から望みます」という願いを実現させるためには、何が必要なのか。

内田さんが性暴力が根絶しない理由を綴った記事を再編集の上お届けする前編では、自身の体験をもとに考察した「女性をぞんざいに扱う空気感」について伝えた。それでは問題の本質とともに、どうすればこういった問題を生まない社会が作れるのかを内田さんとともに考えていく。

以下、内田舞さんの寄稿です。

-AD-

被害者を責める声が起こるのはなぜか?

繰り返しますが、最近の報道でよく登場する「上納システム」や、飲み会後に女性を「お持ち帰り」するといった言葉など、女性をモノ化する表現が浸透していることに、日本社会における女性の尊厳の低さが表れていると感じます。これは芸能界だけに限ったことではありません。こういった認識のゆがみが、性加害問題を生み出す根本にあると感じます。

また、性加害が言及される中で、「なんで警察に行かなかったのか」「なんでもっと早く訴えなかったのか」「そもそもなんでそんな飲み会行ったんだ」「そういうことがあるって予想できなかったのか」と、被害者を責める声が多く上がります。

photo/iStock 

本来、加害問題が起きたとき、責任は「加害者以外にない」はずなのに、被害者が不当に責められることを「Victim Blaming(ビクティム ブレイミング:被害者非難)」と言い、それはマイクロアグレッション(自覚がない差別)の典型例でもあります。被害者を責める心理はなぜ起こるのでしょうか。

一つには、我々は誰でも、「世の中はコントロールが利くはずだ」「自分はコントロールができている」と思いたい願望を持っているからです。

こういった心理から、例えば「この人が被害を受けたのはこの人に落ち度があったからで、だからそういった落ち度がない自分は被害を受けることはない」と安心したい気持ちが沸いてしまうわけです。

しかし、実際の世の中は自分のコントロール利かないことがたくさんあり、何をしても、しなくても被害を受けることになる状況はたくさんあります。その現実を怖いと思うのは当然ですし、そのランダムな不幸に直面したくないと多くの人は思います。そういったものを恐れる心理から、「悪いことが起きてしまった人にはそれなりの理由があったはずだ」と考えることで、「自分には起きないはずだ」と言い聞かせている部分があるのです。

もちろん被害を避けるために、自己防衛できる判断をすることは大切です。しかし、身を守ったとしてもそれを上回る力(権力や威圧含め)や恐怖で、自己防衛が叶わないこともあります。そういった状況があるにも関わらず、被害者がこうすればよかったと被害を被害者の責任にしたり、被害者の告発を待っての対策しかできないような、「被害者任せの対応」をしているうちには、こういった加害問題はなくならないでしょう。

SHARE

  • Facebook

  • X

  • URLコピー

FRaUこどもプレゼン・コンテスト2026