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3月の会見でのひかりさん(写真左)と田中弁護士 撮影/FRaUweb
3月の会見でのひかりさん(写真左)と田中弁護士 撮影/FRaUweb

【大阪地検・元検事正の性暴力事件】PTSDは「死ぬような恐怖を体験したことによって起こる脳機能の異常」

性被害を告発した女性検事が辞任を余儀なくされた背景 中編

検察の現場で起きた性被害を告発した検事のひかりさん(仮名)が、4月30日に辞職を余儀なくされた。いったいなぜこのようなことになっているのか。そして問題点はなにか。多くの性暴力の裁判を傍聴し、今回の事件も取材を続けてきたライターの小川たまかさんが詳しく伝える前編では、誤解も多々ある事件を振り返った。ひかりさんがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していることから、ひかりさんと弁護士は準強制性交致傷罪に訴因変更するよう伝えているが、検察側からは納得できる説明がないまま避けられているという。

中編では、今回の事件においては被告人が守ろうとしているもの認め検察のメンツ」である、というねじれがある中、PTSDと性暴力裁判との関係性を伝える。

※記事内に、性犯罪事件の被害内容を記載しています。

4月30日、辞職について会見をするひかりさん 撮影/小川たまか
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難しいケースでもPTSDによる「致傷罪」はある

本件が準強制性交等致傷罪への訴因変更が行われないのはなぜか。 
田中弁護士は3月の会見で、PTSDを「致傷」として認めた裁判例を10ケース紹介した。

この中には、「被害から6年後の正式診断でPTSDを致傷と認めた裁判例(神戸地裁・平成22年9月30日)」「被害者と加害者が知人関係の事件で、PTSDを致傷として認めた裁判例(富山地裁・令和5年12月13日)」など、ひかりさんのケースと似た部分がある裁判例も含まれている。

神戸地裁で「6年後の正式判断でPTSD」を致傷と認める判決があった Photo by iStock
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PTSDを「致傷」とする裁判は珍しいわけではなく、実際にこれまでも様々なケースで認められてきたことがわかる。

10ケースのうちの1つに、「PTSD発症を争われたが、15年後に診断されたPTSDに因果関係を認めたもの」(横浜地裁小田原支部・令和3年7月16日)があった。私はこの裁判の傍聴をしている。これが記憶に残っているのは、致傷がついたことにより時効が伸び、犯人が逮捕された事件だったからだ。

事件が起こったのは2005年で、被害者の高校生は路上で見知らぬ男から脅迫され廃屋に連れ込まれて被害に遭った。その日のうちに警察に届け出てDNA型が採取されたが、強姦罪の時効である10年(当時)が過ぎても犯人が見つからなかった。

※2017年・2023年の刑法改正前なので、不同意性交等罪ではなく強姦罪。時効については2023年の改正で延長されている。

事件発生から13年後の2018年に事態は動く。別事件の関係者として浮上したある男のDNA型を採取したところ、当時採取していた型と一致したのだ。

強姦罪の時効成立後でありながら逮捕・起訴できた理由は、被害者の負ったPTSDを「傷害」であるとし、強姦致傷罪が成立すると判断されたからだ。強姦致傷罪の時効は当時15年だった。

この事件でPTSDの診断が取られたのは、DNA型の一致がわかってからだ。時効を成立させないためにPTSDで致傷罪をつけた、という印象を持った。明確な証拠がありながらこんな事件が時効というのはいたたまれない。PTSDの診断を得て致傷罪とすることは、一般市民の感覚にも沿っていたと感じる。

裁判で男の弁護人は、被害者が事件以降も通学し通常の日常生活を送れていたこと、通院していなかったことなどを指摘してPTSDの発症を否定しようとした。鑑定した精神科医が「被害者心理の第一人者」として知られるため、中立性に欠けるとも主張した。

精神科医は、被害者が通常通り過ごそうと努める「回避」の心理状態であったと説明し、判決はこれを支持した。

さらに弁護人は控訴審では、PTSD診断の標準であるCAPS-5を精神科医が使わなかったことを指摘。別の精神科医を証人にして「15年以上もPTSDが継続しているのは誤診」と主張した。致傷罪が成立しなければ免訴(裁判打ち切り)にできるため、この部分の反論に弁護人も必死だったのだろう。

結果的には控訴審でも検察側の主張が認められた。

このケースでは、被害から時間が経ってからの診断も裁判で有効であることがわかる。また、PTSD発症の鑑定が出ると弁護側はその鑑定の信頼性に揺さぶりをかけることもわかる。

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