通常の打撲痕であれば時間とともに薄く消えていきますが、いつまでも痣が消えない場合や身に覚えのない痣が繰り返し出現する場合には、別の原因が潜んでいる可能性があります。ここでは、痣が治りにくい・できやすいと感じるときに考慮すべき代表的な病気と、その対処法について説明します。
特に「ぶつけた記憶がないのに痣ができる」ような場合、体の止血機能に関わる病気が隠れていることがあります。代表的なのは以下のような疾患です。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や血小板機能異常症
血液中の血小板が極端に減少したり働きが低下する病気で、体のあちこちに点状の紫斑(小さな内出血斑)が出現します。軽い打撲でも大きな青あざができ、鼻血や歯ぐきからの出血も起こりやすくなります。
血友病など凝固因子異常
遺伝性の凝固因子欠乏症(血友病A・Bなど)の場合、幼少期から内出血や関節内出血を繰り返します。また重度の肝臓病でも凝固因子が減少し、同様に出血傾向(痣ができやすい状態)になります。
白血病などの血液のがん
白血病では骨髄で正常な血球が作られなくなり、血小板減少によって全身に内出血(紫斑や青あざ)が現れることがあります。倦怠感や発熱、貧血症状を伴う場合は注意が必要です。
血管炎・膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE)など膠原病の一部でも血小板減少や血管炎により皮膚に紫斑が出ることがあります。また壊血病(ビタミンC欠乏症)では血管壁が脆弱化し全身に内出血が生じます。
このように痣の背景に様々な病気が考えられますが、頻度としては深刻な疾患が原因のケースはごく一部です。それでも「原因不明のあざが複数できている」「1ヶ月以上消えない痣がある」といった場合は、念のため血液検査による評価をお勧めします。
内科や血液内科では、血算(血液中の血球数)や凝固検査(PT、APTT)、肝機能検査などを行い、血小板減少や凝固異常の有無を調べます。早期発見できれば適切な治療につなげることができますので、不安な症状があれば放置せず医療機関を受診するようにしましょう。
先天性の赤あざ・青あざ・茶あざ・黒あざは放っておいても自然には消えませんが、現代の医療ではレーザー治療を中心に改善させることが可能なものが多くあります。
痣の種類に応じて適切な治療法(主にレーザー照射や外科的切除など)が選択されます。例えば赤あざ(単純性血管腫)に対しては、血管の赤色に吸収されるダイレーザーという特殊な光を照射し、拡張した毛細血管を破壊する治療が行われます。生後間もない乳児のいちご状血管腫(乳児血管腫)は自然退縮することもありますが、視覚的に目立つ場所ではプロプラノロール内服やレーザーで早期から治療することもあります。青あざ(太田母斑など)にはメラニン色素に反応するQスイッチレーザー(ルビーレーザーやアレキサンドライトレーザー等)が用いられます。これらは皮膚の真皮層に存在する色素細胞を破壊し、数回の照射で徐々に色調を薄くしていきます。茶あざ(扁平母斑など)もレーザー適応になることがあり、特に思春期以降でも残存するものは治療を検討します。黒あざ(巨大な色素性母斑など)は悪性化のリスクも考慮して外科的切除が選択される場合があります。
痣治療の多くは美容目的と思われがちですが、一定の条件を満たす先天性のあざ治療には保険適用が認められているものもあります。
具体的には青あざ(太田母斑・異所性蒙古斑)や茶あざ(扁平母斑)、赤あざ(単純性血管腫・いちご状血管腫・毛細血管拡張症)などが保険診療でレーザー治療可能です。小さいホクロのレーザー除去は美容扱い(自費)ですが、生まれつきの広範なあざの場合は保険が使えるケースがあります。治療を検討する際は、まず皮膚科専門医に相談してみましょう。
痣の種類や範囲、患者さんの年齢によって最適な治療タイミングも異なります(例えば太田母斑のレーザーは小学高学年以降に行うのが一般的ですが、単純性血管腫は乳幼児期からでも早期治療が推奨されます)。
専門医は最新のガイドラインに基づき最適な治療計画を立ててくれます。実際に治療するかどうかは痣と付き合っていく上での心理的負担も考慮して決めることになります。当院でも患者様の希望を尊重しつつ、状態に応じた治療法をご提案いたします。