21日公表の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」は教育分野にも力点を置いた一方、無視できない文言が盛り込まれた。それが「人社系のダウンサイジング」だ。かねて政府などから微妙な扱いを受けてきたのが人文社会科学系の学者ら。日本学術会議の任命拒否問題でも当事者となった。「ダウンサイジング」に込められた真意をどう捉えるべきか。(松島京太、中根政人)
◆「世界的に見ても理工系の学生の割合が低い」
「強い経済」「日本人の底力」「ピープルズパワー」「技術で勝ってビジネスでも勝つ」。そんな文言が目に付く今回の骨太方針。「公教育の再生、研究活動の活性化」の項目で盛り込まれたのが「成長分野の重視や人社系のダウンサイジング」だった。
文部科学省高等教育政策室の寺坂公佑室長は「これまで訴えてきた政策を骨太方針に盛り込んでいただけた」と述べる。成長分野と位置付ける学問は、主に理工系やデジタル系で、人社系は法学や経済学、文学などが該当する。
文科省によると、2024年時点で人社系の学生は全体の46%であるのに対して、理工系の学生は22%と半分以下。寺坂氏は「世界的に見ても理工系の学生の割合が低い」と指摘する。
加えて昨今は、産業界が求める人材の変化もある。
◆2040年時点で「理工農・デジタル・保健系の定員を5割に」
2040年時点では事務職の人材は供給側が過多になる一方で、専門職、特に人工知能(AI)・ロボット等利活用人材では人手不足に陥る恐れがあるという。寺坂氏は「成長分野に注力するため、理工系学生の増加を図りたい」と述べる。
かたや骨太方針では「人社系のダウンサイジング」がうたわれた。この言葉は昨年11月ごろから、文科省内の会議で使われだしたという。今年4月の会合の議事要旨を見ると「私学助成もこれからは人社系ではなく理工・デジタルに配分の基準額をぐっと寄せたい」という文科省関係者の言葉がつづられる。
理工系と人社系を巡る「選択と集中」をうかがわせるが、寺坂氏いわく、「人社系のダウンサイジング」の意図は「教員に対する学生の人数を少なくすることでこれまでより教育の密度を高める」ことだという。
文科省は2030年までを第1期とする。骨太方針の関連資料では、大学について2040年時点で「理工農・デジタル・保健系の定員を5割に」という数値目標例も挙げられる。寺坂氏は「明治期から1959年までに創設された『第1世代大学』は理工系の比率が低い。改革の対象にはなりやすいだろう」と説明。具体的には都市部の私立大などが対象になり得るという。
◆「文系の学問は生きていく上で大切…軽視してほしくはない」
「人社系のダウンサイジング」について世の反応を東京駅周辺で聞いてみた。
「自分は賛成ですね」。そう答えたのは茨城県鹿嶋市の大学4年、山本朔也さん(21)。大学では人文地理学を専攻している一方、「大学に入ってから、高校生の時と学力や知識があまり変わっていないような気がする。大事な学問だとは思っているけど、理工系の研究者のように、自分が日本の国際競争力を高めるのに役立っているとは思えない」と語る。
神戸市から小学3年の子どもと旅行に訪れていた主婦の細谷彩華さん(39)は「無駄な大学や学部は削減していくべきだと思うが、文系の学問は社会で生きていく上で大切なので軽視してほしくはない。哲学や美術も語れないなんて、世界で『日本人はつまらんな』と思われてしまうのではないか」と懸念する。
◆政府はこれまでも人社系を「冷遇」扱い
政府はこれまでも人社系を「冷遇」す...
残り 1473/2951 文字
この記事は会員限定です。エントリー会員(無料)に登録すると、続きを読めます。
- 無料会員(エントリー)に登録すると
- 会員限定記事を読める
- 有料会員限定記事も月3本まで読める
カテゴリーをフォローする
-
渡り鳥 22 時間前
-
AA 7月25日0時18分
-
シミアス 7月24日23時3分
みんなのコメント13件
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。