【資料】飯山陽 「ハマス・パレスチナ・イスラエル」(扶桑社新書)より抜粋

この資料は、Awiの検証記事のためのエビデンスとして作成しました。

 当記事は、2024年2月に発行された、飯山陽 著「ハマス・パレスチナ・イスラエル」(扶桑社新書)より、池内先生・篠田先生についての言及箇所を抜粋したものです。

第1章 ハマスを擁護する日本のマスコミと“専門家”

【「イスラエルは国際政治法違反の虐殺国家」という世論形成のウソ】
P55-57
 諸悪の根源はイスラエルの国際法違反、ハマスも無差別攻撃したかもしれないがイスラエルも無差別攻撃した、だからどっちもどっちだし、そもそも悪いのはイスラエル、だからイスラエルが悪い、という、いつものお馴染みの言説です。
 ハマスがイスラエルの民間人標的に無差別テロ攻撃をやるたびに、同じロジックが展開され、結局、やっぱりイスラエルが悪いということになって終了する。
 彼らが論うイスラエルの国際法違反は、占領だけにとどまりません。日本共産党だけでなく、国連も、EUも、メディアも、そして日本の「国際政治学者」のみなさんも、みんなで口を揃えてガザの完全包囲も国際法違反だしmガザ攻撃も国際法違反だとイスラエルを非難します。
(Awi註:以降、他の専門家の発言・投稿を羅列している為、中略)
〈1948年の戦争で逃げたら二度と家に返してもらえなかった人たちの子孫が多数を占めるガザの住民のことを「逃げればいいのに」「エジプトはなぜ入れてやらないのか」と言うのは、最低限の知識か人の心のどちらかがないのでは。逃げたら二度と家に帰れないと信じるだけの根拠はあるでしょう。〉(池内恵@chutoislam 2023年10月24日)
(Awi註:以降、他の専門家の発言・投稿を羅列している為、中略)
 これらのロジック、この主張、この批判は本当に正当でしょうか。

P60
東京大学教授の池内恵氏に至っては、「イスラエルが軍事力でガザのハマースの石を挫くことは容易ではなく、(略)交渉によって解決する以外に方法はない」(新潮社ニュースサイト「フォーサイト」、2023年10月8日)と述べている。1200人以上を惨殺し、200人以上を拉致し、今後も無差別テロを続けると宣言しているハマスと交渉しろ、軍事力は無駄だと、日本の「専門家」がイスラエルに対して大上段から訓示する様は、滑稽ですらあります。

【中東紛争が拡大するかのように恐怖を煽る日経新聞】
P7071
 エジプトの国家安全保障評議会は、パレスチナ人がエジプトに大量に流入することは、エジプトの国家安全保障上のレッドラインだと明言しています。
 なぜなら、パレスチナ人の中には当然、多数のハマスが含まれている。ハマスの大半は便衣兵です。外見では一般人と区別がつかない。
 しかも、ハマスを作ったのは、エジプトで生まれたイスラム過激派テロ組織の最古参であるムスリム同胞団です。ムスリム同胞団のガザ支部がハマスですから、ハマスのエジプト入りを認めるということはすなわち、ハマスがムスリム同胞団と一緒になってエジプトを転覆させる動きに出ることになる。エジプトは実際、2011年にそれを体験しています。
 だから「レッドライン」という非常に強い言葉で、ガザ住民をエジプトに受け入れるわけにはいかないとはっきり言っている。彼らがパレスチナ人はパレスチナにとどまれと言っているのは、パレスチナ人のためのように聞こえるかもしれませんが、第一義的には自国の安全保証のためなのです。
 東大教授の池内恵氏は、新潮社ニュースサイト「フォーサイト」への10月8日の寄稿で、「ハマースがアラブ世界の中で地位を認められ、そこから和平交渉に向かうきっかけになる可能性もある」と述べています。彼は、エジプトをはじめとするアラブ世界にとって、ハマスがレッドラインであることを理解できていないようです。

【サウジがハマスを切り捨てた瞬間】
P85-86
 日本政府、あるいは日本の外務省は、ハマスに忖度することがアラブ諸国に忖度することと勘違いしている。繰り返しますが、これは大きな過ちです。時代は変わった、ハマスでもなんでも、「パレスチナの大義」を掲げ「抵抗」する者は無条件で支持する、という時代は、とうの昔に終わっているのです。
 ところが、そもそもそれを外務省に進言する立場にあるはずの、東大教授・池内恵氏のような「専門家」が、外務省から補助金をもらい、ハマースがアラブ世界の中で地位を認められ和平交渉に向かう可能性もある云々と現実離れした「分析」で外務省の前例をひたすら追認する。だから、日本の中東外交は、50年前から変わらないままなのです。

【国際政治学者の「イスラエル作戦は占領政策」の矛盾】
P106-109
 10月7日にイスラム過激派テロ組織ハマスがイスラエルの民間人を標的にした大規模テロを実行した後、支離滅裂で意味不明な発信をしている国際政治学者が散見されます。
 たとえば国際政治学者で平和構築を専門にしている篠田英朗氏は、イスラエルに住む女性の「なぜガザには食料もないというのにミサイルはあんなにあるのか」というポストに対し、こう述べています。
〈申し訳ないけど、答えは「占領されているから」。〉(@ShinodaHideaki 2023年10月18日)
「占領されている」のでガザには食料はないけど武器はある、と彼は断言しています。お前は知らないけれど知者であるオレが教えてやろうという上から目線です。
 では占領しているのは誰でしょう? 彼が含意しているのはイスラエルです。彼が「占領」という言葉をイスラエルとだけ結びつけて用いていることは、彼の他のポストからも明らかです。
〈10月7日の時点で言えたことはすでに言えなくなっており、イスラエルが一連の軍事行動を、実態として占領政策の一環として行っていることは客観的にすでに自明だと私は考えているが、地上戦が始まると、そしてその後に、ますます明らかになる、というのは確かだろう〉(同10月20日)
 イスラエルがガザを占領している。だから、ガザには食料はないのに武器はたくさんあるのだと、篠田氏はこう言っている。意味不明なロジックです。何の答えにもなっていない。ただ心情的に、イスラエルが悪いんだ、全部占領のせいなんだという、そういうやけっぱちを学者の立場から無知な一般人に一方的に投げつけたにすぎない。
 しかも、この認識は間違っています。イスラエルは2005年にガザから撤退しました。ガザはイスラエルによって占領されていないのです。
 しかも、篠田氏は自己矛盾しています。ガザはイスラエルによって占領されている、だからガザには食料はないけれど武器はたくさんあるのだと主張しておいて、その後に「イスラエルの軍事行動は占領政策の一環であることが自明」と言ってしまっている。もし、ガザが今、すでにイスラエルによって占領されているならば、イスラエルは今からガザを占領する必要などありません。というか、そもそもガザはイスラエルによって占領されていない。全く意味不明の相矛盾する主張を展開している理由は、彼が肯定しているポストを見るとなんとなく理解できます。
〈I love Gaza.〉(同10月10日)
 なるほど、そうですか、としかいいようがない。アイラブガザでもなんでもいいのです。この人がガザをどれほど愛しているか、そんなことはどうでもいい。
 しかし、ガザはイスラエルに占領されていませんし、イスラエルの軍事作戦はハマス掃討作戦であって、ガザを占領するための作戦ではありません。これおをイスラエルの占領政策の一環だと、仮にも国際政治学者にして大学教授という肩書きの人間が断言すれば、少なからぬ人々に影響を与えるわけです。
 なるほど、やはりイスラエルはガザを占領するつもりなのか、偉い先生がおっしゃっているから間違いない、となるのです。これは悪質な印象操作です。
 それに、ガザを愛しているならば、緑豊かな土地だったガザを軍事基地に改造し、住宅地の真ん中にロケットランチャーを設置し、学校を武器庫に、病院を司令本部にして住民を盾にとって、自分たちは地下トンネルに逃げ込んでいるハマスを批判すべきです。
 それなのに彼は、占領が!イスラエルが!とだけ主張する。
 彼はガザを愛していないのだと思います。彼は占領を批判し占領者イスラエルを敵視する自分を愛しているのでしょう。義憤に駆られ、弱者である虐げられたパレスチナ人の側に立ち、強者である占領者イスラエルをSNSで攻めることにより、心情的には「抵抗運動」に参加しているのでしょう。いやもちろんこれは私の単なる個人的な感想です。

【極左の前衛ハマスを擁護する国際政治学者たち】
P115-116
私は、日本の国際政治学者や安全保障の専門家が、ロシアのウクライナ侵攻について客観的な分析をし、それをテレビや新聞も封じたのを見て、彼らは中東研究者のようなバイアスのかかってない人たちなのかと思っていました。
 ところが残念ながら違った。イスラエル政府はウソつきだとレッテルを貼り、
〈「Stand with Gaza」と言う人物を迫害することによって、「ハマスとガザの市民を区別してる」という言説を自ら全否定するイスラエル政府。そしてイスラエル政府は最初から欧米諸国向けの嘘の言葉を先述的に並べているだけだ、という世界の多くの人々が抱いている印象は、いっそう強化されていく。〉(篠田英朗 @ShinodaHideaki 2023年10月23日)
「親イスラエル」なる集団をバカにし、
〈やる気一つで乗り切る気概は驚きに値するが、とはいえあまりにも多くの世界中の人々を非難しなければならず、親イスラエル派の方々も多忙を極めている最中〉(同10月26日)
アメリが衰退していると嘆き、
〈ここのところの最近の数週間ほど、アメリカの衰退を確信したときは、今までの私の人生にはなかったかな。出口がない。〉(同)
 中国がまともだと賞賛する。
〈中国政府の安保理での発言あまりに普通でヤバい〉(同)
 日本政府がG7と横並びにイスラエルの自衛権を支持したら、アメリカが対テロ戦争だといってイランとの戦争をはじめる。その時、確実に日本は見捨てられる。だから日本はイスラエルの自衛権を支持すべきではない、イスラエルの自衛権を支持しないことこそが国益だ、という謎理論を展開したり、
〈あとさあ、言いたくないんだけど、もしここで米国が、対テロ戦争だといって、イスラエルの右派か、あるいは米国内の右派に押されて対イラン開戦したら、おそらく米国は中国に接近するよ…さん方面作戦はできないからね。その時切られるのは日本だよ。本当に、馬鹿に煽られて国論誤るなよ。〉(池内恵 @chutoislam 2023年10月24日)
 だから、日本はイランと仲良くすべきだ、それが日本の安全保障だといったりしている。
〈世界中の国はアメリカに梯子外され慣れているから、むしろ信じきって頼りきっていた日本人を不思議がるのでは。こんな流れにならないことを祈るが、バカが間違って尻馬に乗ってイラン叩けとか言い出して結果としてイラン戦争になった場合、日本の安全保障は極めて困難になるよ〉(同10月27日)
 はっきり申し上げますが、日本がいくら「イランは日本の友好国」「伝統的友好関係」とか言おうと、そんなものは、これまでアメリカとイランの関係を良くしたことなど一度もありません。

第2章 日本政府の"亡国”中東外交

【パレスチナ自治政府に停戦を呼びかける岸田首相の愚行】
P151-152
 朝日新聞も「試されるバランス外交 岸田首相、イスラエル・パレスチナと協議調整」(高橋杏璃・長崎潤一郎、2023年10月10日)という記事を出しました。この中で、東大先端科学技術研究センターの池内恵教授は、岸田政権の対応について、こう評価しました。
「日本としては全面的にイスラエルの報復を支援するとは言いにくい。現実的かつ適切な判断だ」
 池内氏はウソをついています。G7諸国は、「イスラエルの報復を支援する」などとは言っていません。「イスラエルが自国を防衛し、最終的に平和で統合された中東地域の条件を整えられるよう、われわれは同盟国として、イスラエルの共通の友人として、結束と連帯を続けていく」(ロイター2023年10月10日)と言っている。
 つまり、G7が支持したのは、イスラエルの自衛権です。「報復」などという攻撃で、反感を買うような言葉遣いはしていない。というか、「全面的にイスラエルの報復を支援する」なんて言っている国はどこにもない。
 それを池内氏は、そんなこと言う必要ないんだから、岸田政権の対応は現実的ですばらしい、と言っているわけです。これは藁人形(ストローマン)論法と呼ばれる詭弁です。池内氏は誰も言っていないことを勝手に言ったかのように捏造して、それを批判している。
 日本以外のG7諸国は、イスラエルの自衛権を支持すると明言しています。岸田声明は暗に、日本はイスラエルの自衛権を支持しないと言ったに等しい。これが、欧米とは異なる「日本独自の中立外交」として賞賛されるべきものなのか。

【日本政府が急に「ハマスはテロ」と言い始めた理由】
P155-156
 驚くべきは、日本の中東研究者や国際政治学者が軒並み、日本政府の当初の「どっちもどっち」声明を高く評価していたことです。
 東大先端科学技術研究センターの池内恵教授は、「日本としては全面的にイスラエルの報復を支援するとは言いにくい。現実的かつ適切な判断だ」(朝日新聞2023年10月10日)と評価していました。
 正直、私はこれを読んでかなり驚きました。ハマスの蛮行をテロと呼ばないことが「現実的かつ適切な判断」だという言葉が池内氏から出たことに、びっくりしたわけです。しかし、池内氏も他の多くの「国際政治学者」も、外務省から補助金をもらっている事実を勘案すれば、彼らの岸田政権への迎合も合点がいく。

【岸田首相はイスラエルの自衛権を擁護したのか?】
P175-180
 日本以外のG7諸国の共同声明は、10月7日のハマスによるテロ攻撃開始の2日後の10月9日と、10月22日に出されています。共に主旨は、「ハマスの攻撃をテロと非難」「イスラエルの自衛権行使を支持」というものです。これはまさに、法の支配による秩序の維持、力による現状変更の否定、というG7が共同で掲げてきた理念の体現そのものです。
 日本はそこに呼ばれることすらなかった。要は、日本は価値観を共有していない、と元からみなされているということです。
 池内氏は、これは「悪いことではない」、むしろいいことなのだと評価しました。
〈私が「イスラエルの側に立つ」という欧米の声明に日本が加わるべきない、正確には「加われない」と考えるのは、イスラエルの生存とパレスチナ問題には、欧州のユダヤ人問題や戦後の世界秩序形成を巡る超大国や旧「列強」と不可分なので、日本は単に「お呼びじゃない」それは悪いことではない。〉(@chutoislam 2023年10月24日)
 なぜなら、「ホロコースト後のイスラエルに、日本ができることは少ない」からだと言う。
〈同時に、米国とドイツのモラルと責任に支えられた第二次世界大戦後・ホロコースト後のイスラエルに、日本ができることは少ないと痛感する。そして米国とドイツが負ったモラルと責任の崇高な重みとは無縁の過酷な境遇をなぜパレスチナ人が受難しなければならないのかについてはここで答えられても問われてもいない〉(同)
 私は全くそうは思わない。イスラエルの自衛権行使を支持することこそ、イスラエルに対して「日本ができること」であり、それはイスラエルに対してだけでなく、テロ攻撃を受けたあらゆる国に対して「日本ができること」であり、それだけでなくG7の一員として、民主主義国家として「日本がすべきこと」「日本がしなければならないこと」だと思います。
 日本はこれまで躊躇することなく「テロとの戦い」を支持し、参加してきた。池内氏も日本がアルカイダや「イスラム国」を相手とした「テロとの戦い」を支持することを批判してはいないと思います。
 ところが、池内氏は、イスラエルがテロと戦う時には、テロとの戦いを支持すべきではないと言う。日本に声がかからないのはむしろいことなのだと言う。なぜなら、
〈これに日本が入ればイスラエルの生存とその裏返しのパレスチナ問題という、近代国際秩序の結果の負の要素が、「G7の問題」にされてしまう。日本にこの問題について旧欧州列強のような責任がありますか? 日本の戦後復興によってかろうじてその一角を得たG7という場に、暗い影が差してしまう。〉(同)
 イスラエルという国家の存在は、国際的に承認されている。池内氏は、イスラエルが「米国とドイツのモラルと責任に支えられた」と言っているが、それだけではありません。日本もイスラエルを国家として承認し、外交関係を結んでいる。日本はイスラエルという国家を承認している。その国際秩序の維持を支持する立場であるはずです。それが日本の責任であるはずです。
 ところが池内氏は、そんな責任は日本にはないという。日本はホロコーストに責任がないし、パレスチナ問題にも関係ないから、イスラエルの自衛権行使なんて支持しない方が得策なのだという、全く意味不明な論を展開する。
 ならば、なぜ日本はイスラエルという国を承認し、外交関係を持っているのか。ならば、なぜ日本は、パレスチナに毎年数十億円の支援金をだしているのか。
 しかしこの、池内氏の意味不明な主張は、政府内でも共有されていることが、毎日新聞の記事からわかります。
〈政府内にはこの状況に関して、「中東地域に歴史的因縁が不快欧米諸国と一線を画す方が、日本外交には得策だ」との主張がある一方で、G7議長国として中国やロシアを念頭に、法の支配の重要性やG7の結束を掲げてきた手前、「共同声明の枠組みに入れなかったことは痛かった」との声もある。対応に苦慮する姿が浮き彫りとなった。〉
「中東地域に歴史的因縁が深い欧米諸国と一線を画す方が、日本外交には得策だ」というのはまさに、受け内氏のXでの一連の発信の趣旨と同じです。これを「政府内池内派」と呼ぶことにします。
 おそらく、岸田氏が10月8日に出した声明で、ハマスの攻撃を「テロ」と呼ぶことすら避けたのは、この「政府内池内派」の意向が強く反映されていたからです。
 しかし、10月12日になって、岸田政権はハマスの攻撃をテロと呼ぶことにした。変更したわけです。おそらくこれは、「政府内反池内派」、つまりG7の結束や、法の支配という立場を一貫することにこそ日本の国益があると考える一派の「逆襲」です。「反池内派」は当然、「イスラエルの自衛権行使を支持する」と日本も表明すべきだと考えているはずです。
 しかし、現状、日本は「イスラエルには自衛権がある」としか言っていない。これは「池内派」の意向です。
 要は政府の中で、この件をめぐって、二つの陣営が内部構想を繰り広げている。これが日本政府の立場がどっちつかずでフラフラしている原因だと思われます。
 「政府の中」とは言っても、実質的にはこれは外務省の中と言っていい。外務省の中に、「池内派」と「反池内派」があって、この一件をめぐって対立している。「池内派」が中東外交の主流ではあるが、それは外務所全体の中では絶対強者でもないということでしょう。だから、ハマスの攻撃を「テロ」と呼ぶ変更があった。
 「池内派」と書きましたが、これは戦後、特にオイルショック後の、日本の中東外交の主流派です。それはつまり、親パレスチナであり、反イスラエルです。それは同時に、親イランであり、反湾岸諸国(サウジ・UAEなど)でもあります。
 これを理論的に支えてきたのが、日本の中東業界です、日本の中東業界は左翼の牙城です。左翼の牙城に支えられてきたのが日本の中東外交であり、それが今の日本の中東外交をどっちつかずの全方位嫌われ外交へとリードしている。
 池内氏は元々、この中東業界の主流派とは対立する立場でした。中東業界主流派は、「反イスラエルで親パレスチナ」であり、「イスラム教は平和の宗教」だと言ってきた。池内氏は私より前に、「イスラム教は平和の宗教論」にちらりと異議を唱えた人です。
 しかし、池内氏は中東業界の一つ目の前提、つまり「反イスラエルでシンパレスチナ」というのは、そのまま継承している。彼は、ハマスの「攻撃をもたらした」のはイスラエルの「対外関係の認識の不全」だとし、加害者であるハマスではなく被害者であるイスラエルを非難した。そして、イスラエルに対し、軍事力で「ハマースの意思を挫く」のは無理なのでハマスと交渉しろと迫った。彼のスタンスは明らかです。
 この池内氏が代表を務める「シンクタンク」ROLESは、外務省の補助金で複数の「プロジェクト」を運営している。事実上、御用学者として機能している。

【G7に呑み込まれイランに嘲笑される岸田政権】
P193-195
 日本がイランとの「伝統的友好関係」を強調してイランに媚を売れば売るほど、日本は湾岸アラブ産油国から不信の目で見られているという現実もあります。湾岸産油国にとって最大の脅威はイランなのですから、当然です。
 ところが、岸田政権の中東外交、すなわち「欧米とは異なる日本独自のバランス外交」に日本の中東研究の「権威」 とされる東大の池内恵氏が、「現実的かつ適切な判断」とお墨付きを与えているわけですから呆れます。
 池内氏は、
〈私が「イスラエルの側に立つ」という欧米の声明に日本が加わるべきではない、正確には「加われない」と考えるのは、イスラエルの生存とパレスチナ問題には、欧州のユダヤ人問題や戦後の国際秩序形成を巡る超大国や旧「列強」と不可分なので、日本は単に「お呼びじゃない」。それは悪いことではない。〉(@chutoislam 2023年10月24日)
 と、日本は「イスラエルの側に立つ」という足並みを揃えるべきではない、なぜなら日本は「お呼びじゃない」からだと主張した。
〈これに日本が入ればイスラエルの生存とその裏返しのパレスチナ問題という、近代国際秩序の結果の負の要素が、「G7の問題」にされてしまう。日本にこの問題について旧欧州列強のような責任がありますか? 日本の戦後復興によってかろうじてその一角を得たG7という場に、暗い影が差してしまう。〉(同)
 と、日本が「イスラエルの側に立つ」と言うと、「G7という場に暗い影が差す」という意味不明な、脅しとも言える主張を展開し、
〈日本がアジアの戦後復興の先頭を切ってG7に入っていなかったら、G7はそんなに明るいものではあり得なかったと思う。〉(同)
 と、日本がG7にいるからG7は明るいのだ、という奇妙な「日本救世主論」を唱え、
〈日本以外の多くのアジア諸国が発展していった現在、日本にとってG7は「欧米に追随」するための場ではないと思うんですよね。少なくとも目指すものは。日本がいることで欧米の旧世界の大国がアジアの未来に繋がれるような、そういう場としてG7を使うのでなければ、入っていて何か意味がありますか?〉(同)
 と、日本がG7で欧米に追随しないことこそが、日本の、そしてアジアの未来につながるんだという謎理論を展開していました。
 しかし今回、G7外相会談では、日本は完全に欧米に追随した。ということは、池内理論に則れば、日本が欧米に追随したことで、G7に暗い影が差し、もうG7にかつての明るさはなく、G7は日本にもアジアにも未来をもららさないということです。日本の中東研究なるものが、いかに非現実的で国益を毀損する種のものであるかということ、日本の外交を正しい方向に向かわせるような、そんな知見などどこにもないことが明らかです。
 かように、日本の中東外交、中東研究というのは全く現実を反映していない。妄想に立脚して行われている、完全なる勘違い外交にして、勘違い研究なのです。

日本は仲介役になれるという「専門家」のウソ
P201-204
 「専門家」である東京大学先端科学技術研究センターの池内恵教授は、日経新聞の記事の中で、日本にとっての中東の重要性についてこう解説します。
〈中東での日本の利益はまず湾岸諸国の石油・天然ガスの安定供給だ。情勢が不安定化しかつてのオイルショックのような事態になることが日本にとっての最悪のシナリオだと考える、現在はイスラエルと友好関係にある国には石油を売らないという禁輸措置をアラブの産油国がとることはなさそうだが、イスラエルとパレスチナの紛争が地域に拡大し石油の供給が滞ることを日本は回避したい。〉
 一見、まともな主張のようですが、意味不明です。オイルショック当時、イスラエルとアラブは敵対していた。しかし今は、イスラエルとアラブ諸国の多くは国交正常化しています。自分たち自身がイスラエルと「友好関係」にあるのに、イスラエルと「友好関係」にある国に石油を売らないというのは、意味不明です。
 池内氏は、「禁輸措置をとることはなさそうだが」とわかったようなことを言っているが、その後に、「イスラエルとパレスチナの紛争が地域に拡大し石油供給が滞ることを日本は回避したい」と不可解な論を展開して、読者の不安を煽っている。
 この紛争が地域に拡大するというのは、具体的にどこにどのように拡大するというのか?
 アラブ諸国がハマスの側に立って参戦する理由は一つもない。こんなことをしても、アラブ諸国は損をするだけで、何一つ特にならない。
 イランがハマスの側に立って参戦する可能性もほとんどない。そんなことをしたら、イランの現体制をアメリカが放置するわけがないからです。
 アラブも参戦しない。イランも参戦しない。にもかかわらず、池内氏は、「日本はこれを回避したい」という。日本が何かすれば、最悪の状況は防げるのだと、日本に何かとんでもない力があるかのように主張している。だからこそ日本は、これまでのバランス外交を続けなければならないという趣旨です。意味がわからない。
 日本にそんな力はありません。日本が何もしなくても、この紛争は地域に拡大しないし、石油の供給量も減らない。
 というかそもそも、石油の供給量を増やさないというのが、今回の紛争発生以前からの産油国の方針です。JOGMEC (エネルギー•金属鉱物資源機構)の分析(2023年11月7日)にもあるように、原油価格の上昇も限定的です。
 池内氏は、事実を隠し、存在しない危機を煽り、結果として明らかに失敗しているバランス外交を続けるべきだと主張する。これこそ、「亡国専門家」です。
 池内氏は、「今の地域情勢に日本がすべきことは」という質問に、次のように回答している。
〈イスラエルのガザ攻撃には国際法秩序から逸脱しているとの批判が強い。イスラエルを全面的に擁護する米国が孤立している。〉
 池内氏は「批判が強い」という言葉で主語をぼやかし、イスラエルは国際法に違反していると一方的に非難する。というか、自分の「専門家」という立場を利用して断定している。
 またアメリカが「イスラエルを全面的に擁護している」という表現で、アメリカはイスラエルの国際法違反も見逃しているのだと仄めかす。
 これも、彼の得意ないつもの藁人形論法です。アメリカもイスラエルには国際法遵守を求めているし、イスラエルも国際法を遵守して作戦を行っていると主張し、その証拠を示している。
 にもかかわらず、池内氏は「国際法違反をし暴走しパレスチナ人を虐殺するイスラエル」という印象操作に躍起になる。ついでに、それを丸ごと擁護する「悪の帝国アメリカ」という印象操作にも勤しむ。
 池内氏は、「中東諸国の意見も取り入れ、ルールに基づいた国際秩序を維持するように方向づけていかなくてはいけない」というが、日本にはそんな能力も実力もない。率先してテロ組織ハマスに忖度し、中東諸国にバカにされ、G7からも除け者にされている日本が、いったいどうやって「ルールに基づいた国際秩序の維持」なんて方向づけられるのか?
 日本自身がルールをガン無視し、国際秩序より国際法っよりテロ組織への忖度を優先しておいて、何を言っているのか? 全く意味がわからない。
 池内氏は最後にこう言っている。
〈G7で唯一の非西洋国として日本はG7以外の台頭する国々との必要不可欠な仲介役にいなれる地位にあるが、これを有効に使えていない〉
 出ました、「G7で唯一の非西洋国として日本はG7以外の台頭する国々との必要不可欠な仲介役になれる」説。外務省お決まりの文句です。日本のバランス外交の理念の提要です。
 しかし、これはウソです。日本は仲介役になどなれない。仲介役を果たしたためしがない。一つも結果は出せていない。
 いまだかつて仲介役など果たしたことがないのに、「日本は仲介役ができる!」と言い続けているのが外務省であり、それを理論的に支えているのが池内氏のような「専門家」です。外務省から補助金を得ている池内氏が、外務省の御用学者として機能しているのは明らかでしょう。


第4章 自由主義社会は「弱者の正義」を超克できるか

【イスラエルVSアラブ全面戦争シナリオのウソ】
P301-302
 イスラエルとハマスの戦争が、イスラエルとアラブ諸国の全面戦争につながるかのような発信をしている「専門家」がいます。
 たとえばこちら。東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏の、
〈イラン外相のアブドラヒアンがイスラエルに対して石油禁輸を呼びかけたとのこと。イランからイスラエルに行く石油はごくわずかだから、他の産油国に呼びかけたということなんだろうが、湾岸諸国はイスラエルを非難しているとはいえ、経済関係を断ちたいと思っているわけではないだろう。〉
(@KS_1013 2023年10月19日) 
を引用して、池内恵氏が次のようにポストしました。
〈湾岸産油国は国交正常化のためにあれだけ対話してきたイスラエルに、文字通り自制を求めている。反応に失望している。このままだとオスロ合意までの30年どころか、第四次中東戦争の1973年まで中東の時計が遡りかねない。〉(@chutoislam 2023年10月19日)
 微妙にぼやかしてはいますが、要するに第五次中東戦争が起こりかねないと仄めかしているわけです。
 しかし、これはおかしい。というか、この「このまま行くとイスラエル・アラブ全面戦争になるぞ!」というのはまさに、ハマスやイランが望んでいる筋書きそのものです。池内氏はハマスとイランのプロバガンダに「インテリ風」の味付けをして広めている。
 では、池内氏のこのポストのどこがおかしいか、説明しましょう。
「自制」を求めることが、「第4次中東戦争の1973年まで中東の時計が遡りかねない」ことを意味する、「というのがこのポストの主旨です。
 しかし、日本の岸田政権などは、ハマスのテロ直後からイスラエルに自制を求めています。では。日本はイスラエルとの国交を断絶して戦争をするとでもいうのでしょうか?
 そんなわけがない。池内氏の主張は意味不明です。いみじくも、彼が「自制」という言葉を使っているように、「自制」という言葉以外には、「第4次中東戦争の1973年まで中東の時計が遡りかねない」ということを示す証拠、ようするに湾岸産油国がハマスの側に立ってイスラエルに全面戦争を挑むというような証拠や兆候はありません。

P304
 池内氏は、10月8日の「フォーサイト」への寄稿で、「ハマースがアラブ世界の中で地位を認められ、そこから和平交渉に向かうきっかけになる可能性もある」と述べていますが、私にはこの主張の合理性は皆目理解できない。

P305
  池内氏の思い描く、「イスラエルVSアラブ全面戦争」、つまり第五次中東戦争というのは、ハマスとイランにとって最も望ましいシナリオです。
 なぜなら、ハマスとイランはイスラエルを倒したい、しかし、それには大量のコストがかかる。そこに、自分たちの的であるアラブ諸国を引きずり込み、自分たちの側に立たせてイスラエルに当たらせれば、自分たちはラクできる。しかも、自分たちの敵同士が戦ってくれるわけですから、両方とも疲弊する。そこへ攻勢をかけて「イスラム革命」を輸出し、「イスラム革命」国家をお建設すればいいわけです。これが理想のシナリオです。
 そんなアホな筋書きに、自国の利益の最大化をめざし近代化の途上にある湾岸諸国が乗るわけがありません。こんなもの、誰がどう考えても「誰得?」です。
 しかし、おそらく日本人の多くは、この湾岸産油国の論理を知らない。だから、池内氏の煽りに騙される人がいるわけです。特に彼は、国際政治の世界で、一目置かれている。中東は池内氏に聞けば間違いない、ということになっている。えらくやっかいな話です。
 なお、池内氏は、日本ならばアメリカが対イラン戦争に突き進むのを阻止することができるとも主張している。
〈では米国が中東の同盟国に煽られて対イラン戦争に突っ込むのはやめてもらうために日本はなんとこあしあにといけない。ものを分かった顔をして座して死を待つのか。役に立たないやつだな。〉(@chutoislam 2023年10月24日)
 これも全く意味がわかりません。

P308
 いったい日本はいつ、イランとアメリカの直接対決を止めるほどの絶大な影響力や外交力を獲得したというのでしょうか?
「イランは日本の伝統的友好国」で「日本はG7唯一のイランとの友好国として西側との仲介役を担える」というのが、外務省の大方針です。池内氏が代表を務めるROLESという「シンクタンク」は、外務省の補助金でプロジェクトを複数運営している。池内氏が現実を捻じ曲げ、妄想を展開してまで、外務省の「大方針」に「お墨付き」を与えるような発言を繰り返す背景には、このような事情、そして「カネの流れ」があると考えられます。



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読み方:あい/東大先端研教授 池内先生と東京外大大学院教授 篠田先生の文章を読むのが趣味。
【資料】飯山陽 「ハマス・パレスチナ・イスラエル」(扶桑社新書)より抜粋|Awi (藍)
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