住宅街に響く怒号、学校に届いた爆破予告 法整備でも変わらぬヘイト
日曜日の昼間。一軒家が多く並ぶ静かな住宅街に、怒号が響いた。
「日本の国土の安定を揺るがす移民政策には反対」「常盤にインドインターナショナルスクールはいらない」
約10人がメガホンを手に声を響かせた。日の丸を掲げる人もいた。
札幌市南区。廃校になった常盤小学校跡地にインター校を開く計画をめぐり、反対する人たちが地域でのデモに乗り出した。
主催者の男性は参加者に対して、「住民の方々にもきちんとわかってもらいましょう」と呼びかけていた。
外国にルーツのある人々への差別言動を規制する「ヘイトスピーチ解消法」が施行から10年となりました。この間、社会に、ネット空間にあふれるヘイトはどう変化したのか。不当に誰かを傷つける言説は、どう規制されるべきか。北海道の現場から伝えます。
一方、デモ隊を取り囲むように倍以上の人たちが集まり、「差別に抗議中」などと書いたプラカードを掲げ、カウンターの声を上げた。
「差別をやめろ」「レイシスト(差別主義者)は出ていけ」「ヘイトはやめろ」――。
呼びかけた女性は言う。「住民に向かってヘイトをまき散らす。こんなに悪質なデモはほかにない」
常盤小の跡地活用に関する市の公募で、経営母体の本部をシンガポールに置く東京の会社が選ばれ、2027年の開校をめざしている。
ところが、昨夏ごろからSNSに「インド人が増える」「治安が悪化する」といった書き込みが急増した。
市議会にも「性犯罪が増える」などとして中止を求める90件の陳情書が出された(すべて不採択)。そのほとんどが同じ文面だった。
常盤小跡地を訪れると、正門前にロープがかけられ、雑草の手入れはされていなかった。校舎裏手の空き地では、インター校の開校に合わせるように宅地開発が進められていた。
デモは、学校区だった住宅街で実施された。地元に長く暮らす70代女性は、大音量のデモ行進を前に「びっくりした」と言い、こう続けた。
「デモの目的が、本当にこの地域を心配してやっているようには思えません。デモをされて、この地域がほかからどう見られるか心配です」
ヘイト被害に苦しんできた朝鮮学校
札幌市清田区の北海道朝鮮初中高級学校に昨年12月、差出人不明の1通のはがきが届いた。こう書かれてある。
「朝鮮に帰れ!! バカチョン公!! 大地震のデマに気をつけろ!!」
同校は道内唯一の朝鮮学校で、計25人が所属。在日朝鮮人の子どもたちが自らのルーツがある朝鮮の言葉、歴史、文化を学ぶ場だ。
今年で創立65周年となるが、長くヘイト被害に苦しんできた。
10年代、札幌を含む全国各地で在日朝鮮人を標的にしたヘイトスピーチが吹き荒れた。
在日朝鮮人が多く暮らす大阪・鶴橋では、ヘイト街宣に参加した女子中学生が、マイクを手に「鶴橋大虐殺を起こしますよ」と発言した。
必ずと言っていいほど向けられる言葉が、北海道朝鮮学校に届いたはがきのように「国へ帰れ」だった。
16年、ヘイトスピーチ解消法が施行され、外国にルーツのある人々への不当な差別言動が規制された。だが、罰則規定のない理念法のため、成立前から批判の声が上がっていた。
「法整備によってヘイトがやむことはなかった。何も変わらなかった」。同校の朴大宇校長(50)は言う。
19年には、公衆電話から「そちらの建物におもしろい物を仕掛けた。明日の昼に作動する」という電話がかかってきたため、臨時休校を余儀なくされたこともあった。
こうした爆破予告のほか、子どもたちへの危害をほのめかす手紙やメールが相次いだ。児童が差別的な言葉を投げかけられることもあったという。
朴校長は「差別は今も昔も変わらない。朝鮮人に対する無理解と無関心が生むヘイトは、この社会の病理として存在し続けている」と話す。
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