週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

大谷翔平“スイングスピード低下”の答え合わせ 元巨人監督・高橋由伸氏が指摘した大谷の変化

丹羽政善

大谷の変化の行き着く答えは…

今年のスタンスの変化について大谷が説明したこととは? 【Photo by Caleb Bowlin/Getty Images】

 そこで前回、MLB.COMのデータリサーチャーであるデビッド・アドラー氏に、様々なデータを提示して意見を求めたところ、こう指摘した。

「コンタクトポイントが下がっている。それが原因ではないか」

 なるほど。Baseball Savantで取得したデータを元にそれを再現してみると、こうなった。

大谷の平均コンタクトポイント(2023~2026) 【参照:Baseball Savantのデータを元に筆者作成】

 これは、平均コンタクトポイントを分かりやすく示したもので、ホームベースの一番投手寄りの辺が基準となっている。コンタクトポイントがホームベースよりも前の場合はプラス、後ろの場合はマイナスで示されているが、昨年は-1.4インチだったのが、今年は-4.3インチまで下がっている。その差をセンチに直すと7.4センチ。ちょうどボール1個分の直径である。

 つまり今年は、スイングスピードがピークに達する前にコンタクトするケースが多く、結果として平均値が下がっているのでは、という仮説が成り立つ。それは、ボールを長く見ようという意識、つまり、やはりアプローチを変えたから、という推測を裏付けるものではあったが、もちろん、“他の何かを変えたから、結果的にそうなった”という可能性もある。

 前回はそこまで辿り着き、そこから先は大谷に確認するしかない、ということになったが、それを聞こうとしていた10日、ドジャー・スタジアムで一緒に試合を見ていた高橋由伸氏(野球解説者、元巨人監督)が、大谷の打席を見ながら、こんな指摘をした。

「去年より、スタンスが狭くなってないですか?」

 早速調べてみると、昨年と比べると、6インチ近く、構えたときの右足が捕手寄りになっていた。

スタンスの変化(2025年[赤]と2026年) 【参照:Baseball Savantのデータを元に筆者作成】

 ベースの一番投手寄りの辺から6インチのところに黒い線を引くと、今年の踵は12インチラインにあるが、去年は6インチラインにかかっている。その差は13~14センチ。

 また、スタンスの幅そのものも確認すると、昨年は36.7インチで、今年は33.8インチだった。その差は2.9インチ(7.3センチ)で、それはコンタクトポイントの差と、ほぼ一致する。

 左足の位置も微妙に異なるので、右足の差とスタンス幅の差は必ずしも一致せず、打つときに大きく踏み出すようになっているなら話は変わるが、そこまで変化はないので、右足が捕手寄りに下がり、スタンスが狭くなった結果、コンタクトポイントも後ろに下がったと考えられる。

 となると、そもそもなぜ、スタンスを変えたのか? ということになる。

 ということで10日の試合後は、コンタクトポイントではなく、その点を大谷に確認すると、スタンスが狭くなった、という指摘に頷き、その意図をこう説明した。

「それに関しては、全体の帳尻合わせ」

 というと?

「スタンスを狭くすることで方向性が決まったりとか、(肩を)開くとどっちにいったりとかっていう、そこで合わせることもありますし。グリップの高さで合わせるときもあるので、その都度その都度変えるようにはしています」

 しっくりとする構えを模索する中での変化。例えば今年、左投手と対戦するとき、昨年よりも右肩はクローズになっている。それによって体の方向が変わり、投手の見え方も変わってくる。全体の構えを、そうして微調整している。

 スタンスそのものは、さらに調べてみると、エンゼルス時代の2023年とほぼ同じだった。そのときよりもコンタクトポイントが下がっているので、その差が、スイングスピードの差(77.4→74.8)となって表れているのでは? と解釈すれば、アドラー氏の指摘で説明がつく。

 去年と今年の差については、捕手寄りに立つようになったことで、コンタクトポイントも下がったと考えられるので、スイングスピードが低下した理由としては説得力を欠くが、1マイル程度の差なので、そもそも明確な答えは存在しないのかもしれない。

 結局は、構え。大谷の変化を辿ると、行き着くところは、やはり常にそこである。

(編集:スリーライト)

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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