経営していた「ワインと鍋」というお店を、売却しました。
2021年12月に個人事業として開業してから、約4年半が経ちました。2023年12月には法人化して、会社として運営してきました。閉店ではありません。お店は、次の経営者のもとで続いていきます。
ワインと鍋というお店
東京都中央区にある、16席の小さなお店です。営業は週5日のディナーのみです。ワインを飲みに行く店であり、料理を食べる店でもあります。店名はかなり直球ですが、名前を見た瞬間にお客さんの中で期待値が作られるので、気に入っています。
お客さんは平均で13,000円ぐらい使ってくれます。少しいつもいくお店よりも値段が高いお店です。
リピーターのお客さんが4〜5割を占めていて、XやInstagramなどのSNS経由でほとんどのお客さんが来てくれてました。常連のお客さんと、スタッフに恵まれたお店でした。
一方で、僕の本業はソフトウェアエンジニアで、時間のほとんどをプロダクト開発に使っています。頻繁には行けていませんでした。日々の営業はスタッフに任せ、僕の担当は月に1回の給与振込のみでした。
数字
第1期(2023年12月〜2024年11月): 約114万円の赤字
- 第2期(2024年12月〜2025年11月): 約9万円の黒字
でした。継続するのには非常に難しかったのです。
伸びしろはあった
誤解してほしくないのですが、ワインと鍋に伸びしろがなかったわけではありません。むしろ、やれていないことだらけでした。
- 集客はSNSが7割で、グルメサイトや法人利用はほぼ未開拓でした
- 営業は週5日のディナーのみで、ランチ営業もイベント営業もやれていませんでした。営業日も増やすことができたはずです。
- 16席に対して、1日の平均来客数は約8名でした
席は埋まりきっていません。開拓していない集客チャネルも残っています。打ち手はいくらでもありました。
問題は、打ち手のどれもが「僕が大きく動くこと」を前提にしていた点です。
僕の時間は本業のプロダクト開発に向いています。店の集客やメニュー改善に本気でコミットする時間は作れませんでした。オープンからの4年半で作れなかったのだから、今後も作れないと考えるほうが自然です。
伸ばせる余地が見えているのに、僕が持っている限り、余地は埋まりません。
手放す理由としては十分でした。
閉店ではなく売却を選んだ理由
売却を考える直接のきっかけは、移転の断念でした。
今の店舗は構造的に利益が出にくいため、もともとは移転による拡大と改善を検討していました。ただ、工事費の高騰もあり、資金の目処が立ちませんでした。移転で勝負する選択肢が消えた時点で、残る選択肢は「現状のまま続ける」「閉店する」「売却する」の3つでした。
現状のまま続ける選択肢は、前述の通り赤字が続く想定です。だから実質的には、閉店か売却かの二択でした。
検討してみると、閉店のほうが圧倒的にお金が減ることが分かりました。検討して初めて知ったことも多いので、内訳を書いておきます。
- 店舗の賃貸契約は退去の告知が思ったより前から行わないと駄目だった
- 退去時には原状回復工事の費用がかかります
- 日本政策金融公庫からの借入が残っていて、代表者保証が付いています。会社のお金で返しきれない分は、僕個人が返すことになります
閉店は「店がなくなり、スタッフの雇用もなくなり、お金も一番減る」選択肢でした。
売却であれば、店は残ります。スタッフの雇用も続きます。ワインと鍋というブランドも、お客さんとの関係も残ります。加えて、譲渡対価も入ります。
撤退の判断は、始める判断より難しかったです。始めるときは期待だけで動けます。やめるときは、かけた時間とお金と、自分の判断の甘さを正面から認める必要があります。それでも、ずるずると持ち続けて店の伸びしろを塞ぎ続けるより、伸ばせる人に渡すほうが、店に対して誠実だと思った次第です。
最後に
ワインと鍋に来てくださった皆さま、本当にありがとうございます。ワインと鍋という少し変な名前の店を見つけて、予約して、足を運んでくださったお客さんがいたから、4年半続けられました。
日々の営業を支えてくれたスタッフにも、心から感謝しています。僕が東京にいなくても店が回っていたのは、スタッフの力です。
ワインと鍋は、これからは新しい経営者のもとで続いていきます。僕が持ち続けるより、本気で向き合える人が運営するほうが、お店は良くなります。僕は一人のファンとして、客席からワインと鍋の成長を楽しみにしています。
ワインと鍋を、今後ともよろしくお願いします。