日本の医療費は年々増加している。「国民の高齢化」により国民医療費が増加するスピードはますます加速……。「病院は儲かっているのでは?」と思うが、そんなことはない。果たして日本の医療はどうなっていくのか? 吉田 浩さん著『日本人全員が佐藤さんになる日』から一部抜粋して解き明かす。
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社会インフラとしての病院の赤字
「それでも病院はもともとが儲かっているんでしょ? 少しぐらい収入を削られたからといって、赤字になることはないでしょ?」と思う読者もいるであろう。「乗る人がいない赤字ローカル線と違い、病院は患者(とくに診療単価の高い高齢者)であふれているのだから……」と。しかし図表5–8を見たあなたは信じられないと驚くであろう。日本病院会等の公表結果によれば、なんと全国の84.6%の病院が基本的な診療に基づく医業利益で赤字となっている。それでも、「私立病院とは違って国立の大学病院なら大丈夫」と思うだろうが、実はそうではない。
2024年度の国立大学病院の赤字は、2023年度の60億円から激増して285億円に達し、全体の7割の国立大学病院が赤字になっているという衝撃的な結果が公表されたのである。さらに、2025年度には赤字が400億円を超える見通しであるとされた(2025年10月、国立大学病院長会議)。
さらに、信用調査機関の帝国データバンクの調べによれば、2024年中の医療機関の「倒産」は64件と過去最多を記録し、さらに倒産とはならないまでも、休廃業・解散は倒産の10倍以上の722件で、こちらも過去最多となったと伝えられている。このままでいけば、あなたの町でもスーパーやデパートが突如閉店してなくなり「買い物難民」となるように、病院がなくなり「命の難民」になるかもしれない。こうなれば、医師の高給もこれまでのようなわけには行かなくなってこよう。近年、少なからぬ医師が「直美(ちょくび)」と呼ばれる報酬の高い美容整形の分野に流入していることは、その示唆的な現象と言えよう。
このように医療費が増加し続ける中で、国民の負担は増え、診療機関も赤字となれば、世界一の長寿を実現してきた日本の医療システムと健康保険システムは、医学的な理由ではなく経済的な事情により崩壊の危機に直面する。
▶本書ではさらに詳しく
『日本人全員が佐藤さんになる日』では、今回ご紹介したトピックに加え、
・健康保険はそもそも保険料だけでは賄えない
・公費負担とは誰の負担か
・病気にならない人で健康保険は成り立っている
・製薬の将来への不安
など、健康を守る行動の仕方を変えるしかない「人口減少社会」について徹底検証しています。