卍とハーケンクロイツ
卍について、改めて書いておきたいと思います。
現代において卍という形を見ると、ナチス・ドイツを連想し、強い嫌悪感や恐怖感を抱かれる印象が世界には浸透しています。
それは歴史的に当然のことであり、二十世紀にこの紋章が政治的・暴力的な象徴として印象付けられた事実は、決して軽く扱うべきものではありません。
しかし同時に、卍という紋章そのものの本来の意味まで、すべて悪として消し去ってしまうことは、古代から伝わる智慧への理解を失うことでもあるように思います。
卍は、サンスクリットでは svastika と呼ばれます。
語源的には、
su + asti + ka
に分けられます。
su は、善い、吉祥、幸い。
asti は、在る、存在する。
ka は、それを形として表す働き。
つまり svastika とは、本来、
善く在るもの
吉祥なる存在
幸いが成り立つ印
という意味を持っています。
これは、憎悪の印ではありません。
破壊の印でもありません。
本来は、宇宙の秩序、吉祥、法の安住、生命の循環を表す聖なる紋章でした。
仏教においても、卍は仏の胸や足跡などに表されることがあり、仏の徳、吉祥、無限の智慧、法の旋回を象徴するものとして扱われてきました。
ここで大切なのは、卍が単なるマークではないということです。
卍は、中心から四方へ広がり、また四方から中心へ戻る形をしています。
中心があり、四方がある。
静止しているようで、旋回している。
一つでありながら、全方位へ開いている。
この構造は、密教だけではなく、カタカムナの図象構造とも深く照応しています。
カタカムナの図象には、中心があり、そこから渦が展開し、また中心へ還っていく構造があります。
見えない潜象の力が、中心から現象へひらき、現象となったものが、また中心へ還元されていく。
つまり、カタカムナの構造は、
中心から外へ出る力
外から中心へ還る力
潜象から現象へ出る力
現象から潜象へ戻る力
この往還によって成り立っているのです。
それを具現化したものが天津金木です。
卍の左回転と右回転も、まさにこの二つの力を象徴しているように思えます。
一方は、ほどき、祓い、解き放つ働き。
もう一方は、結び、満たし、成就させる働き。
この左右の旋回は、単なる向きの違いではありません。
それは、宇宙の呼吸のようなものではないでしょうか。
出る。
戻る。
ほどく。
結ぶ。
祓う。
満たす。
火で清める。
水で成す。
密教の作法の中で、香水を加持する時に、梵字の ラン と バン が出てきます。
ランは、サンスクリットでは raṃ。
密教では火大に対応する種字です。
火は、焼き清めます。
濁りを焼きます。
不浄を祓います。
迷いを智慧の火で焼き尽くします。
つまりランは、
火による浄化の種字
と見ることができます。
一方、バンは、サンスクリットでは vaṃ。
密教では水大に対応し、また大日如来の種字としても深い意味を持ちます。
水は、潤します。
満たします。
清めます。
甘露となって生命を養います。
つまりバンは、
水による成就と甘露化の種字
と見ることができます。
加持香水の作法では、まずラン字をもって左に転じ、次にバン字をもって右に転じます。
これを深く読むと、
左転のラン
火によって濁りをほどき、焼き清める。
右転のバン
水によって清浄を結び、甘露として満たす。
という構造が見えてきます。
つまり、
火で浄め、水で成就する。
この火水の働きが、卍の旋回と重なります。
左回りは、濁りを解き、祓い、焼き清める働き。
右回りは、清浄を結び、満たし、成就させる働き。
この二つは、対立するものではありません。
中心において統合されるものです。
ここに、カタカムナの構造との深い一致が見えてきます。
カタカムナは、ただ文字が並んでいるものではありません。
中心から渦が起こり、潜象が現象へ開き、また現象が中心へ還る構造を持っています。
密教で言えば、これは曼荼羅的な展開でもあります。
中心に大日如来があり、そこから諸尊が展開する。
しかし諸尊はバラバラに存在しているのではなく、すべて大日如来の智慧と慈悲の働きとして、再び中心へ統合されていく。
カタカムナで言えば、中心図象から響きが展開し、言霊として現象化し、また中心へ戻っていく。
卍で言えば、中心から四方へ旋回し、四方から中心へ戻っていく。
密教のラン・バンで言えば、火でほどき、水で結ぶ。
この三つは、表現は違っても、同じ宇宙構造を別の言語で示しているように感じます。
つまり、
卍は、中心と四方の旋回。
密教は、火水による浄化と成就。
カタカムナは、潜象と現象の往還。
この三つを重ねると、非常に深い構造が見えてきます。
卍とは、本来、宇宙の吉祥なる旋回であり、中心から全方位へ開かれる法の印です。
ランは、その旋回の中で濁りを焼き清める火。
バンは、その旋回の中で清浄を甘露として満たす水。
カタカムナは、その火水の往還を、潜象と現象の構造として示しているように思います。
そう見ると、左回転の卍と右回転の卍は、単なる図形の違いではありません。
それは、
祓いと成就
火と水
出現と還元
潜象と現象
ほどきと結び
という、宇宙の根本運動を表しているように感じます。
ナチスが用いたことによって、近代以降、この紋章は世界的に強い負のイメージを帯びました。
しかし、ナチスが使ったからといって、古代インド、仏教、密教、東洋文明の中で伝えられてきた本来の意味まで消えるわけではありません。
むしろ、ここに現代人が学ぶべき大切なことがあると思います。
象徴は、浅く見れば誤解されます。
歴史を知らなければ、憎悪の印にしか見えないこともあります。
しかし深く学べば、それは本来、吉祥と法の秩序を表す聖なる印であったことがわかります。
だからこそ、象徴を軽々しく扱ってはならないのだと思います。
嫌悪する前に、学ぶ。
否定する前に、由来を知る。
恐れる前に、どの文脈で使われてきたのかを見極める。
卍は、本来 svastika。
善く在ること。
吉祥が成り立つこと。
法の秩序が中心から四方へ開かれること。
そして密教的には、ランの火で濁りを焼き、バンの水で甘露として満たすように、火水の働きを通して、場と心を本性清浄へ戻していく。
さらにカタカムナ的に見れば、それは潜象と現象の往還であり、中心から展開し、また中心へ還る宇宙構造そのものでもあります。
卍とは、憎悪の印ではなく、
本来は、天地の秩序と清浄の旋回を示す印です。
火で祓い、水で成す。
左でほどき、右で結ぶ。
中心から開き、中心へ還る。
その本来の意味を、もう一度、丁寧に学び直していきたいと思います。
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Charming Tezo
素晴らしい贈り物をありがとうございます。
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