「沖縄では基地反対運動への批判はタブー視されてきた」。沖縄県の石垣島を拠点とする地方紙「沖縄八重山日報」で論説主幹を務める仲新城(なかしんじょう)誠さん(52)はそう言うと、こう続けた。「県紙はあえて、知事の政治的責任から県民の目をそらさせようとしている、意図のようなものを感じる」
反米、反基地、反政府の論調が際立つ沖縄メディアにあって孤軍奮闘する仲新城さんが先月、新著『紅(あか)い沖縄認知戦 中国の行動原理を暴く』(産経新聞出版)を上梓(じょうし)した。
中国の「認知戦」(情報戦)の実態を明らかにした必読の書の第7章では、名護市辺野古沖で3月に船2隻が転覆し同志社国際高(京都府)2年、武石知華(ともか)さん(17)ら2人が死亡した事故をテーマに取り上げている。危険な抗議活動を長年放置してきた沖縄社会の構造を筆鋒(ひっぽう)鋭く論じており、僭越(せんえつ)ながら、筆者も仲新城さんのインタビューを受け、現場で取材を進めた記者として登場する。
仲新城さんは筆者にインタビューしながら、「知事選では辺野古沖の事故も争点になる」と語っていた。
現職の玉城デニー知事が3選を目指して出馬する知事選(8月27日告示、9月13日投開票)が迫る中、選挙への影響を懸念したのか分からないが、不思議なことが起きている。
それは、転覆した2隻が出航した辺野古漁港に設置された防犯カメラ映像を報じるメディアが、産経新聞と沖縄八重山日報以外、見当たらないことだ。
筆者が警察取材を担当していたのは10年以上も前だが、ある殺人事件の現場周辺に設置された防犯カメラ映像を報道各社がこぞって手に入れ、報じたものだ。むろん、映像の公開にはプライバシーに最大限配慮しなければならないが、沖縄ではどうも「捜査の証拠」となり得る映像を報じることは適切ではないらしい。
思い返せば、2年前に米軍普天間飛行場の辺野古移設工事に反対する抗議者の女(重過失致死容疑で書類送検)がダンプカーの進む車道に出て、それを制止しようとした警備員が死亡した事故でもそうだった。3カ月半後に産経新聞は事故当時の防犯カメラ映像を公開したが、追随するメディアはなく、今年6月になって琉球新報が報じた程度であった。