「いいか。自分以外の人間は、誰も信じるなよ」 黒のカリスマ「蝶野正洋」が“王座返上”して葬儀に駆けつけた「偉大な父親」の金言
「新日本愛」を貫き通して
7年前、蝶野を主役にしたドキュメント番組が制作される機会があった。「一番、自分の中に残っている教えは?」の問いに、前出の、父に言われたという「自分以外の人間は、誰も信じるな」という言葉を挙げた。父の葬儀に蝶野がタイトルを返上してまで駆け付けたのは、冒頭に述べた通りである。 2000年11月、闘魂三銃士の中で最も新日本プロレスへの愛を強調していた橋本真也が団体を離れ、翌年には新団体ZERO-ONEを設立。2002年に1月には、絶対的なエース格だった武藤敬司も新日本を去った。 しかし、反体制と思われた蝶野が新日本を辞めることはなかった。それどころか、武藤退団の緊急事態に、リング上でアントニオ猪木からこう叱咤されている(2002年2月1日)。 「お前はただの選手じゃねえぞ、これから。いいか! プロレス界を全部仕切っていく器量になれよ! どうだ!」 「猪木さん、俺に全て任せて欲しい。この現場責任の全てを俺が全部やりますよ! (中略)新日本プロレス! もう一度ここで、最高の! プロレスラーの、レスリングを! もう一度よみがえらせる!」(蝶野) 闘魂三銃士の長兄格である武藤を失ったあとのこの姿に、兄を戦争で亡くした後、先頭に立って粉骨砕身した父の姿を重ね合わせるのは、うがった見方だろうか? 蝶野が新日本から離れたのはここから8年後の2010年1月。契約の満了による円満退社だった。リング上では、当時は若手とデビュー前の卵に過ぎなかった棚橋弘至と中邑真輔がエースとして躍動していた。 瑞 佐富郎 プロレス&格闘技ライター。早稲田大学政治経済学部卒。現在、近著「10・9 プロレスのいちばん熱い日」(スタンダーズ)が重版出来中。 デイリー新潮編集部
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