子どもの頃から小動物が好きでカメを育てていた中国籍の20代青年、李文(リブン)(仮名)。金に困ると、カメは稼ぐ手段になった-。昨年秋、県内に生息する国の天然記念物リュウキュウヤマガメなど100匹以上を捕獲したなどとして、他の男女3人と共に種の保存法違反などの罪で有罪判決を受けた李が、拘置所で本紙の取材に応じた。李によると、頭部や甲羅の赤やオレンジ色の斑紋が「縁起が良い」とされ、高値で取引される背景があるという。(北部報道部・吉田光)
中国でカメは「四霊」の一つに数えられ、麒麟(きりん)、鳳凰(ほうおう)、竜と並び、めでたい生き物とされている。李が「縁起が良い」と表現したリュウキュウヤマガメの体色の赤は幸運、繁栄、長寿を象徴し、祝い事で多用される。闇取引では、1匹当たり38万~57万円程度で売買されているという。
他に違法に捕獲したヤエヤマセマルハコガメは、名前の通り、背の甲羅が盛り上がっているのが特徴。中国で球体は美しいとされ、李は2種を掛け合わせ、色と形に優位性を持つ「いいとこ取り」をもくろんでいた。
李は中国・蘇州にある理系大学で、DNAなどを中心とするバイオテクノロジーを専攻し2022年に卒業。コロナ禍の就職難の中で勤めた香港の製薬会社は、人の命に関わる責任の重さから心身ともに疲弊し1年足らずで退職した。
その香港で、趣味で飼育していたカメを通じて知り合ったのが共謀者の一人だった。「カメを捕りに行かないか。カネになる」と誘われ、安易な気持ちから一線を越えた。
2月、那覇拘置支所の面会室。好きなアニメや日中の恋愛観などを語っていた李は、事件に話が及ぶと一転、険しい表情を見せた。「カネのことしか頭になく周りが見えていなかった」「カメをもうけの道具だと認識し、自分を客観視する機会がなかった。犯罪を始めてしまうと後戻りできない。何かがおかしかった」
李の姿は、社会的な競争に疲れ向上心を失う中国の「タンピン族(寝そべり族)」や、高額な報酬に惹(ひ)かれて「闇バイト」に加担する日本の若者と重なって見えた。
裁判には中国から50代の母親が駆け付け、ほぼ毎日拘置所へ面会に通った。母親は「親に困り事を相談しにくい環境をつくった私の責任だ」と語る。自営業で借金を抱えていた父親の負担を思い、大学院進学を諦めて、香港に渡った息子の選択を悔やんだ。
法廷での被告人質問で李は、左手の3本指をすっと顔の横に真っすぐ立てた。「日本だけでなく大陸でも犯罪には手を染めません。厳しく自分に言い聞かせます」。中国では誓いを立てる時に見られる動作の一つだった。
李は執行猶予付き判決を受けて帰国した。母親によると、電話番号を変え、共犯者と連絡を取れないようにした。デリバリーの仕事をしながら就職活動を始めたという。