Column:なぜ世界的なアーティストがブルーノート東京に出演したがるのか(7,500字)
僕は「ジャズの仕事」を、というよりも「海外のジャズミュージシャンの仕事」をやっているから必然的にブルーノート東京に行くことが多い。
ブルーノート東京は国内のアーティストも多数出演するのだが、海外のアーティストが出演する割合のほうが高い数少ないライブハウスだ。
今ではあらゆるジャンルのアーティストがライブを行うので「ジャズのライブハウス」というわけではないが、それでももともとアメリカのNYにあるブルーノートNYCがジャズのライブハウスだったこともあり、ジャズ系のアーティストの出演が中心だ。
最初の話に戻るが、だから海外のジャズミュージシャンの仕事をしていると、必然的にブルーノート東京へ足を運ぶ機会が増える。
あと、僕は海外のジャズミュージシャンのインタビューをたくさんしている。これまでおそらく1000本以上のインタビューをしてきたが、そのほとんどは海外のジャズミュージシャンだ。日本のミュージシャンに話を聞くことはかなり珍しい。もちろん時々あるのだが、上原ひろみや挾間美帆、黒田卓也、BIGYUKIら海外を拠点に活動するミュージシャンが中心になる。
という感じで、ブルーノート東京にはライブを観に、あるいは取材をしによく行くし、そこで出演している海外のアーティストに会って話すことも多い。彼らの多くは口を揃えて「ブルーノート東京でライブができてうれしい」「ブルーノート東京にまた出演したい」と言う。
最初は、日本人へのリップサービスで、世界中どこでも同じことを言っているのだろうと思っていたのだが、どうやらそうでもなさそうだということが徐々にわかってきた。
最近、友人から「ブルーノート東京って何がすごいの?」という問いを投げかけられた。確かに、それを自分なりにはっきりと言葉にしたことはなかった。
いい機会だと思ったので、この15年くらい何百回も足を運び、取材を通じてスタッフとも接してきた自分の立場から、それを言葉にしてみようと思う。
◉ 歴史あるジャズクラブのひとつであること
まず、ブルーノート東京には長い歴史がある。本家の7年後に開店していて、途中で移転もあったので現在までずっと同じ場所にあったわけではないが、もうすぐ40年になる。
・ブルーノート系列の中での最古参
ここに世界中のブルーノートを並べてみたが、その多くは2000年以降にできたものだ。この中で特に特別な店として扱われるのはイタリアのミラノで、ここはヨーロッパのジャズシーンでも特別なライブハウスとして認識されている。それでもブルーノート東京より15年ほど新しい。ブルーノート東京ほどの歴史を持つライブハウスは、ブルーノート系列では本店を除けば他にない。
1981 Blue Note New York
☆1988 Blue Note Tokyo
2003 Blue Note Milano
2010 Blue Note Nagoya
2015 Blue Note Hawaii
2016 Blue Note Rio de Janeiro
2016 Blue Note Napa(※2025年末で現会場営業終了)
2017 Blue Note Beijing
2020 Blue Note São Paulo
2021 Blue Note Shanghai
2024 Blue Note Los Angeles
2026 Blue Note London
・世界的な老舗ジャズクラブのひとつ
では、アメリカ以外でブルーノート以外の、現在も営業している著名なジャズクラブをリストアップすると以下のようになる。世界中の都市を見ても、ブルーノート東京並みの歴史を持つジャズクラブを探すのは意外なほど難しいことがよくわかるだろう。
1959 Ronnie Scott's Jazz Club ロンドン
1974 Bimhuis アムステルダム
1977 Fasching ストックホルム
1981 New Morning パリ(スタンディング)
1984 Le Duc des Lombards パリ
1988 Blue Note Tokyo
1990 The Jazz Cafe ロンドン(スタンディング)
でも、「コペンハーゲンのJazzhus Montmartreや、ベルリンのA-Train、パリならSunset-SunsideやBaiser Salé、Le Duc des Lombardsもあるだろう」と思われるかもしれない。ただ、基本的にそれらは国内のアーティストが出演することが多いので、ブルーノート東京というよりは、東京でいえばピットインやボディ&ソウルと比べるべきライブハウスだと思う。
パリのLe Duc des Lombardsも基本的にはそんな感じなのだが、パリではNew MorningとLe Duc des Lombardsで役割を分け合っている印象なので、ここでは両方を載せておいた。
ここまで見ても、ブルーノート東京が世界でも屈指のライブハウスであることがわかるだろう。
近年、ブルーノート東京では海外からの観光客が目につくようになった。基本的に1〜2割くらいは常にいる印象があるし、3〜4割ほどが外国人客だと感じる日もある。それは、ブルーノート東京が世界的にも特別な会場だからだと思う。
◉ ラインナップの豪華さ
実際、海外の有名ジャズクラブの出演者のラインナップを見てみると、ブルーノート東京のスケジュールがいかに豪華なものかがわかると思う。
本国アメリカを除けば、世界中のトップアーティストやレジェンドがこれほど継続的に出演するライブハウスは、なかなか他にない。実はブルーノート東京は非常に希少なライブハウスであり、東京のように海外のミュージシャンを日常的に観られる都市は極めて稀有であることがわかるだろう。
つまり、アメリカの大都市圏に住んでいる人でもなければ、普段は滅多に観られないトップアーティストを観られる場所として、わざわざ東京滞在中に足を運ぶ価値は十分にある。日本を訪れる外国人観光客が急増するにつれ、ブルーノート東京を訪れる外国人客が増えるのも必然だと思う。今後も日本への観光人気が続く限り、この状況は続くだろう。
そして、そんなライブハウスに出演することが、アーティストにとって一つの目標であり、ステータスにもなっていることもわかるはずだ。それは海外のアーティストのプロフィールに、出演歴としてブルーノート東京の名前が記されているのをたびたび見かけることからも伝わってくる。
◉ アーティストにとって充実した環境
ブルーノート東京が、その評価にふさわしい環境を整えていることも重要だろう。ステージという意味では楽器も充実しているし、PAも良い。照明だってしっかりしている。
個人的には、なんだかんだでブルーノート東京の音響の解像度に慣れているので、スタンディングのライブハウスへ行くと、演奏の細部まで聴こえずがっかりすることも多い。
そして、これを海外のライブハウスと比べると、ブルーノート東京がどれだけ手間も人員もかけているかがよくわかる。出演者にとっては、とても恵まれた環境だと思う。
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音楽に関するテキストを書きます。最低週1本で更新していけたらと思っています。インタビューを沢山公開した月はレビューやコラムの更新少ないかも…
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