プレジデント・オンライン、大阪・千里中央についてデマを拡散し炎上?
サムネイル画像:買い物客で賑わうせんちゅうパル(左)、北大阪急行の千里中央行き電車(右)
はじめに
プレジデント・オンラインで8月21日に配信された記事「新大阪駅から15分なのに巨大廃墟がそびえる…「消えた終着駅」が映し出す昭和のニュータウンの栄枯盛衰」が、内容が事実無根のデマ記事だとして批判を浴びている。
著者はライターの鼠入昌史。記事内容は彼の著書「ナゾの終着駅」の抜粋だ。
この記事は、大阪府豊中市の千里ニュータウンに位置する千里中央駅(以下千中)について紹介したものだ。北大阪急行(地下鉄御堂筋線直通・以下北急)に乗れば大阪都心まで20~30分ほどでアクセスできるほか、新大阪駅も伊丹空港も15分でアクセスできる便利な場所である。
そんな千里中央は長らく北急の終着駅だったが、2024年に箕面萱野へ北進し、終着駅ではなくなったという背景がある。そのために千中は没落し衰退、地価は暴落し駅前のショッピングビルは廃墟に……というのが鼠入がこの記事で描いた「物語」である。
記事内で目立つ捏造とデマの拡散…「セルシー廃墟化」のホントとウソ
しかしX(Twitter)やYahoo!ニュースコメント欄での情報によれば、いずれも事実無根のデマとのことだ。
まず、駅前のショッピングビル「セルシー」が現在廃墟になっているのは事実だ。だがそれは、再開発のために解体を待っている最中(8月より解体開始)だというのが理由であり、決して地域の衰退や利用者減によるものではない。閉鎖の主な理由は2018年の大阪北部地震により建物が損傷し使えなくなったことによるものだ。
たしかにこれだけ長く閉鎖したままでいるなら、「巨大廃墟が聳えたつ」という印象を持たれてしまうのもやむを得ないのかもしれない。一方、記事では再開発には一切触れていない。この再開発は事業者や自治体も発表しており、調べればすぐにわかることである。記事を見る限り、鼠入は一応現地取材をしているようではあるが、このような杜撰な取材では「取材が甘い」どころか、もはやライターとして適正な力量があるか疑問である。ましてや「終着駅というアドバンテージを失ったことによる衰退」という物語を描きたいがために意図的に隠しているとしたら、それはもう立派な捏造である。
加えて、「住民の新陳代謝が進まずオールドタウン化した」「セルシーの廃墟化はニュータウンの栄枯盛衰を反映しているのかもしれない」といった書きぶりが目立つ。どうしても鼠入は「千中が衰退した」という物語を描きたいようだが、反面千里中央地域の地価は、北急の箕面萱野延伸を経てもなお上昇を続けている。千中のある豊中市や隣接する吹田市、箕面萱野駅のある箕面市など、北摂地域は全体的に府内でも高い地価を維持している。そしてニュータウンがオールドタウン化しているのは、千中に限らず全国のニュータウンが直面していることだ。実際記事中でも、住宅の建て替えが進む部分もあると指摘されている。
客観性に乏しい謎の決めつけを平然と述べる筆者
さらに鼠入は、記事中で「安易な決めつけ」も多数展開している。
(前略)だから、大阪の人はもとより新幹線でたまに大阪にくるような人にとっても、千里中央という駅は気になる駅のひとつとしてすり込まれているに違いない。
千里中央駅、近くに住まいや職場があるわけでもない限り、まず訪れる機会はないだろう。全新幹線ユーザーにとってのナゾの駅。千里中央駅は、そう位置づけられる駅だった。
ららぽーとという家族でクルマで遊びに行ける施設ができれば、そちらに人が流れるのもとうぜんのこと。50年の歴史を刻む千里中央と比べれば、若い人たちにとってもEXPOCITYのほうがいいにきまっている。
こういった事情もあって、千里セルシーが“新しい町のレジャーセンター”だった時代は過去のものになった。老朽化なりなんなり、閉鎖された理由は別にあろうが、いまの千里中央駅前の千里セルシーは、そういったニュータウンの栄枯盛衰を象徴しているのかもしれない。
とにかくこの記事には「まず訪れる機会はないだろう」「EXPOCITYのほうがいいにきまっている」「閉鎖された理由は別にあろうが」などのように、事実確認を怠っていたり、筆者の勝手な印象で書いていたりする部分が多数見受けられる。「訪れる機会はないだろう」って地元民に対して失礼過ぎではないだろうか。Yahoo!ニュースのコメント欄では「地元民ではないがよく行く」という趣旨のコメントも投稿されていた。私は関西人ではないので、千中がどれだけ地域外の人にも利用されているかわからないが、主要な交通拠点に連絡できる乗換駅であり、ホテルや百貨店もそなえる地域の核である以上、「近くに住まいや職場があるわけでもない限り、まず訪れる機会はない」は言い過ぎではないかと思う。
なぜか「新幹線ユーザーにとって」謎の駅と決めつけているのも気がかりだ。確かに新大阪で新幹線から乗り換えるユーザーも多いだろうが、それと同じかそれ以上に重要であろうはずの、大阪一の大動脈たる御堂筋線ユーザーのことが綺麗に忘れ去られている。日常的な通勤通学買い物客を差し置いて、出張や旅行でたまに来阪する新幹線ユーザーを強調している。後述する東京中心的な視点がそのまま表れているなと強く感じられる。
X上では批判・指摘が相次ぐ
このような現実を無視した事実無根の記事に対し、X上では批判のポストが多数見受けられた。以下、一部を引用して紹介する。
千里中央「落日」記事の構造分析、なぜ東京発の全国誌で拡散されたのか。プレジデントオンラインの記事は「巨大廃墟」「消えた終着駅」という強い言葉で読者を惹きつけ、1970年大阪万博から始まる千里ニュータウンの盛衰を物語化しています。https://t.co/JMlAmeFTLJ…
— ロング@再都市化 (@saitoshika_west) August 23, 2025
千里中央駅前では、セルシー敷地と千里阪急ホテル敷地の一体再開発が着々と進行中。雑誌プレジデントは地元に行けばすぐわかることすら調べずに嘘を拡散している。
— 上山信一 Ueyama (@ShinichiUeyama) August 23, 2025
➡
新大阪駅から15分なのに巨大廃墟がそびえる…「消えた終着駅」 #プレジデントオンライン https://t.co/8AjCNguxCe https://t.co/Aja0qHBfzG
千里中央だけではありません。隣の箕面船場阪大前駅周辺でもタワーマンションや文化施設などの建設が行われており、また阪大箕面CPが開設され多くの人が訪れています。万博記念公園駅前では1.8万人規模のアリーナを核とした大規模開発が予定されています。
— 雨☂️のち晴れ☀️ (@AmeHare_ishin) August 24, 2025
北摂は落日どころか、日の出直前です。 https://t.co/v1ohI5CLbk pic.twitter.com/fAyp7cCy8a
そもそも元々の「ナゾの終着駅」自体が、関東でも郊外圏に対する偏った視線に集まりがちで割と全方向煽りの側面がある気がするんですよね……
— ゆういち (@usUCzFFKny27c5Y) August 23, 2025
この手の経済誌が「努力して成功して都心部に住む人々⇄無為に地方に住む人々」構図を勝手に作って対立を煽る傾向はどうにかしてほしいな https://t.co/3tbOLv7tMh
再開発はなかなか始まりませんし、記事の内容は半分くらいあってると思います。千中で降りても人は多いけど「巨大廃墟」があるという印象になるのは確かです。
— toppo (@toppo_store) August 24, 2025
リプ欄や引用欄を見ましたが、そんな極端に東京を敵対視して貶めようとする必要はないと思います。 https://t.co/GymCVY7aDd
千里中央のセルシーは今後再開発の計画あり。勝手に廃墟とか、何を言ってるのでしょう?首都圏在住者が大して事情も知らずに書いた記事としか思えません。
— ふしトラ(旅行&交通&まちづくり&バリアフリー) (@fushitra_si787) August 23, 2025
千里中央は新大阪・伊丹空港・梅田・難波・天王寺、いずれにも直通で行ける、便利な立地です。 https://t.co/K8fuu2wIrz
プレジデントが巨大廃墟と貶す千里中央が、実際には再生しているらしいお話。
— TKG (@tkgsan_biz) August 23, 2025
東京メディアが「今、関西では〇〇!」などと派手なことを言うとき、だいたい地元の人が「んなわけないだろ」と言いがちなやつ。 https://t.co/QUBACnYhoe
テレビ含めたメディアは東京で店がオ一ブンした情報は無駄に発信するのに東京以外の情報は無理やり廃墟などと捏造するのはなぜなのか?千里中央は全面建替計画進行中だよね!テレビのキ一局を東京は2局に減らして大阪、名古屋、九州に分散希望、それからBSも同様に! https://t.co/U4mYm672xS
— ゆう (@3KRgzu1qAwirmpE) August 23, 2025
正直、1980年代の東京生まれにまことしやかに語ってもらいたくないかな。
— tora114 (@tora114) August 24, 2025
新大阪駅から15分なのに巨大廃墟がそびえる…「消えた終着駅」が映し出す昭和のニュータウンの栄枯盛衰 駆け出しのアーティストやアイドルにとっての"聖地" #プレジデントオンライン https://t.co/RnXAsjdaWO
実際には「炎上」とまではいかないが…
このように批判が多数寄せられている当件の記事だが、「炎上」とまでは至ってないのが実情である(ミスリードを誘う記事タイトルにしたのはごめんなさい)。もちろん炎上してほしいというわけではないが、明らかなデマ記事である以上、もっと問題視され、批判が殺到していいはずである。にもかかわらず不完全燃焼感があるのはなぜだろうか。
これは私の妄想にすぎないが、仮説を述べさせていただくと、話題が大阪のローカルなトピックだからというのが挙げられるのではないだろうか。大阪府民や関西の人ならともかく、首都圏を含む他地域の人にはまずピンとこないだろう。もしかしたら同じ府民でも、河内や和泉の人にすらピンとこないかもしれない。
一方で大阪だからこそここまで批判が集中しているとも考えられる。大阪は言うまでもなく「日本最大の地方都市」であり、首都圏外の重要な拠点都市としての自負や誇りがある。そのためかマスメディアの東京偏重や相対的な地方下げには敏感で、SNSで見られるそのような意見は(京都や神戸を差し置いて)大阪からの発信が強い、という印象がある。その最たる例が、大阪・関西万博の開催を巡る報道や、それに対する反応だろう。吉村府知事も「東京メディアからのバッシング」には強い批判意識を抱いているようだ。
ところで炎上といえば、少し前にミツカンが「冷やし中華なんてこれで十分です」と具なし冷やし中華の画像を投稿して炎上したことがあった。これが炎上して、今回のプレジデント記事が炎上しないのも不思議であるが、一応こちらは「全国普遍の話題」だからということも考えられる。
一方で、千里中央の名はタイトルに出ていないとはいえ、このように東京発の全国メディアで記事にされているということは、ある程度の全国的な話題性があると判断され配信されているのだろう。にも拘わらず取材は杜撰を極め、「全国メディア」であるにもかかわらず、あまりにも雑に(東京以外の)地方を扱い、現実を無視し「廃墟」「衰退」のレッテルを貼って満足している。これは、普段東京で発信しているライターや編集者の中に、「地方のことは多少雑に書いても問題視されない」という無意識が潜んでいるようにも見える。そうして東京と比較し地方を相対化・矮小化する情報が全国レベルで拡散されていく。もちろん、SNSで拡散されるためにあえてオーバーな言葉を使う…もっと言えば「炎上商法」を狙っているというのもあるだろう。
このように地方を雑に扱うのは今に始まったことではない。
プレジデント・オンラインは以前にも、北海道・稚内のセイコーマートについて事実無根の記事を書いたことがあり、セイコーマートが直々に声明を出している。
また、前回の記事でも紹介したが、プレジデント誌(オンラインではなく紙媒体のほう)は同じ連載中で「堺筋本町」には(大阪市中央区)とことわりを入れたのにも関わらず、「青山」は東京の地名であるとことわりを入れてなかった。そのことからも、プレジデントが東京中心主義的なバイアスに陥っている側面が見て取れる。
まとめ
この記事の問題点は主に2つ。
ひとつは、記事内容が地方を軽視しており、かつ東京目線で書かれていること。東京から発信された「全国メディア」の記事が地方を相対的に矮小化し、そのためにはデマや捏造さえも許容されてしまっている。もっともこれは「地方が衰退している」という物語(一種の「衰退ポルノ」ともいえよう)を描きたい強い意図があったというよりは、東京視点で発信していることに対しての認識不足が大きいのではないかと思う。そのような「無意識なバイアス」こそが深刻な問題であり、「全国メディア」の記者や編集者にはそのあたりを強く意識していただきたいものだ。
もうひとつは、そもそも取材が杜撰で事実確認に不足があり、あまつさえそのような記事が配信されてしまっていること。確かに千中は北急の始発駅という地位を失ったし、セルシーが廃墟化しているのも事実だ。しかし再開発の真っ最中であるという少し調べれば簡単にわかることさえ無視し、事実に反した記事を書くというのは、ライター失格である。そしてこのようなデマ記事を、PVや広告収入のためにろくに事実確認もせずに配信する編集者や、配信媒体であるプレジデント社の責任能力にも疑問符がつく。
杜撰な記事を配信し続け、目先の利益しか考えない安易な運営を続けていれば、メディアとしての信用を失っていくのは火を見るよりも明らかだが、プレジデント社はそのへんわかっているのだろうか?
さいごに。本件は炎上しているようには見えないが、批判は根強く、確実に存在している。
このように地方の現実と乖離した記事を見かけたとき、読者としては媒体やライターに対し、ブレーキをかけさせるよう声を上げていくことが大切だ。そう私は思っている。



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