オンラインゲーム、SNS、教育子供を狙った"密室支配"の実態を被害者たちが告白! 世界中で社会問題化する「性加害グルーミング」の毒牙
【社会問題化する「ロブロックス」】 かつては学校などが犯行現場だったが、現在はその場がオンラインへとシフトしつつある。SNSの普及と利用者の低年齢化が、加害者に接触チャンスを与えてしまった。 とりわけ今、世界的に問題視されているのが、米国のゲーミングプラットフォーム「ロブロックス(Roblox)」だ。ユーザーが自らゲームや仮想空間(メタバース)を作成し、他者と共有できるプラットフォームである。 基本は無料で利用でき、低年齢層を中心に爆発的に普及しているが、それゆえに各国でグルーミング被害が続出している。 昨年、アメリカでは9歳の男児がロブロックス内で子供のふりをして接近してきた男に、性的な画像を送るよう求められた事件が発生。今年2月にも同国でロブロックスでのコミュニケーションをきっかけに12歳と14歳の姉妹が誘拐されている。 ガジェットライターの武者良太氏も、ロブロックスの構造的危うさを指摘する。 「ロブロックスでは加害者が自ら『密室』となる部屋を作成し、子供を容易に招き入れることができます。そこでは、ゲーム内通貨を豊富に持つ者や、人気ゲームのクリエーターが、絶対的権威として君臨します」 運営側もAIによる顔年齢推定やチャット制限の強化を進めるが、実態はいたちごっこだ。 「AI生成した3Dモデルで認証を擦り抜けたり、年少者のアカウントがダークウェブで売買されたりしています。テキストチャットは検閲できても、リアルタイムのボイスチャットでの『生の声』によるマインドコントロールを完全に監視するのは、現代の技術でも困難です」 ロブロックスの問題は日本にとっても対岸の火事ではない。主要コンビニでの課金導線が整うなど利用環境は拡大しており、国内でも今後被害が表面化する可能性は高い。
【日本版DBSの限界】 一方で、教育現場という「リアルの密室」も依然として深刻だ。文部科学省の調査では、児童生徒らへのわいせつ行為等で処分された公立学校教員は、2024年度で281人。12年連続で200人を超える異常事態が続いている。 前出の斉藤氏も「再犯防止プログラムを受ける子供性加害者の約3割が子供関連の仕事に従事していた」と警鐘を鳴らす。 今年12月からは「日本版DBS(こども性暴力防止法)」が施行される。性犯罪歴を照会し、犯歴のある人物を子供と接する職種から排除する仕組みだ。 「学校や保育園など認定施設・事業所の透明化には一定の効果があるでしょう。しかし、現行制度ではボランティアスタッフが対象外となるなど死角は多い。何より、オンライン上のグルーミングを規制することは不可能です」 性的グルーミングから子供を守ることは至難の業だ。斉藤氏は「実際の加害が起きる前の『手なずけ』の段階で第三者が介入するのは極めて難しい」と語る。 「オンラインでの自衛策として、アプリの利用制限やフィルタリングの設定を推奨するが、それも万能ではない。SNSを使いこなす現代の子供は、容易に解除法を自力で検索し、突破してしまいますから。やはり、家庭や教育現場での啓発活動に重心を置く必要があります」 斉藤氏が対抗策の柱に据えるのが「包括的性教育」だ。 「体の仕組みだけでなく、自分や他者を大切にする人権教育がベースです。どんなに親しい相手でもプライベートゾーンを無断で触ることはNGという『体の権利』について学ぶことで、子供は初めて被害を認識し、早い段階で信頼できる大人につながることができるのです」 加害者は孤独や隙を冷徹に見極める。だからこそ、日頃からの親子関係が最大の防波堤になると斉藤氏は説く。 「性に対して『恥ずかしい』『汚い』という誤った認識を持つ前に、正しい情報を伝えていく。大人が自身の失敗体験を共有するなど、日頃から対話できる関係性を築いておくことが、子供をグルーミングの罠から遠ざける鍵です」 12月から本格始動する日本版DBSは、犯歴のある加害者の物理的な排除に寄与する一歩に過ぎない。制度の限界を認め、その隙間を包括的性教育という個々の知性で埋めていく。それこそが、巧妙なグルーミングを防ぐ抑止力となるのだ。 取材・文/ツマミ具依 写真/PIXTA 時事通信社