オンラインゲーム、SNS、教育子供を狙った"密室支配"の実態を被害者たちが告白! 世界中で社会問題化する「性加害グルーミング」の毒牙
このような「手なずけ」を用いた性加害の手口は『性的グルーミング』と呼ばれ、近年、世界的に深刻な社会問題となっている。性加害者への再犯防止プログラムに取り組む、西川口榎本クリニック副院長の斉藤章佳氏は、その実態をこう解説する。 「性的グルーミングの本質は、加害者が被害者に『自分たちは特別な関係にある』と思い込ませる、心理的な支配環境を構築することにあります。加害者はまず、家庭不和や孤独感を抱えた『脆弱な状態』にある子供を冷徹に見極めて近づく。 そこで心理カウンセラーも顔負けなほどの受容・共感・傾聴を使い、子供の承認欲求を満たしつつ、自他の境界線(バウンダリー)を少しずつ侵害していきます」 「バウンダリー」とは、心理学上の自分を守るための心身の境界線。加害者はこの線を、暴力ではなく「重要な理解者」という仮面によって、性的意図を隠しながら、子供が気づかないように侵害していく。 「加害に及んだ後は、『ふたりだけの秘密』という形で周囲から心理的に隔離し、戦略的に口を封じます。彼らの手法は巧妙で、大人でも容易には見破れない。被害者の中には、加害者のことを〝日だまりのような人〟と回想することすらある。子供から被害の自覚を奪う、いびつな心理的拘束がグルーミングの恐ろしさです」 この心理的な罠を、今から18年前に実際に経験した当事者がいる。沖縄県那覇市議会議員の嘉手川航汰さんだ。嘉手川さんは小学校5、6年生の頃、バスケットボール部の外部指導者から継続的な性被害を受けていた。 「その指導者は保護者からの評判も良く、子供からも〝優しいお兄さん〟と慕われていました。部活終わりに『まだ教えたいことがあるから公園に行こう』と誘われたときは、自分だけが期待されているようで純粋にうれしかった」 そこから斉藤氏が指摘する、段階的な「手なずけ」が始まった。公園での練習はやがて、自宅でのゲームや映画鑑賞への誘いに変わる。 「最初から不自然な要求をされていたら身構えたでしょう。でも、日常の延長線上の誘いだったので、気づいたときには逃げ場のない『心理的密室』に嵌まっていました」 何度目かの訪問で「ちょっと寝ようか」とベッドに案内された。眠りに就こうとしたとき、指導者に股間を触られ、口淫された。 「当時は何が起きているのか理解できず、とにかく怖くて寝たふりをし続けました。でも、最終的には抵抗できませんでした」 指導者からは「君は特別だから呼んだ。誰にも言わないでね」と秘密の共有を強いられた。 「彼は監督でもあった。声を上げればチームが崩壊し、保護者たちが苦労して探した指導者がいなくなる。自分が我慢すれば丸く収まる。そう自分に言い聞かせ、耐え続けるしかありませんでした」 加害者がつくり上げた「秘密」を守るために、被害者自らが沈黙という名の防壁となってしまったわけだ。 嘉手川さんの調査によれば、同じ指導者による被害者は少なくとも6人。加害者は行為を認めたものの、反省の色はなく開き直ったという。