プロを目指すのは今年で最後…『25歳のオールドルーキー』退路を断ちもう一つの夢へ駆け上がる
2025年7月6日 10時46分
◇記者コラム「Free Talking」
勝利の瞬間、マウンドにいたのは前日も先発した九谷瑠投手(25)だった。6月29日に行われた社会人野球の都市対抗大会東海地区2次予選第6代表決定戦。九谷は、最後の1枠に滑り込んだ王子にこの春に加入したばかりの新入りだ。歓喜の輪の中央で見せた笑顔が印象的だった右腕のこれまでの歩みをたどると、いっそう感慨深い。
滋賀・堅田高、大阪大谷大を経て、昨季までの3年間はクラブチームの矢場とんブースターズに所属。名古屋名物のみそカツ専門店を提供する「矢場とん」の店舗で働き、練習時間は午前中のみと限られた。その環境の中でも、外部コーチを務める元中日投手の鹿島忠さんと出会いも転機となって、本気で夢を追うようになった。
「プロを目指すなら今年が最後」。昨オフに退路を断って、矢場とんを退社。独立リーグへの加入を考えていたタイミングで、王子の関係者から声がかかったそうだ。「企業に行くのも夢のひとつだった」。思いがけない一本の電話で、環境はがらりと変わった。王子もまた、クラブチーム仕込みのタフネス右腕に救われた。
今予選で王子は新人左腕の樋口新投手(愛工大)と2人で先発を回し、九谷は全7試合のうち先発3試合を含む5試合に登板。先発した同28日のJR東海戦は141球を投じて2失点完投していたが、「まだまだ投げたいですね。矢場とん時代もずっと投げさせてもらっていたので」と涼しい顔。宣言通り、翌日の代表決定戦は7回からマウンドに上がって3イニングを無失点に抑えた。もちろん、登板後のケアは会社の充実した設備に感謝しながら今まで以上に入念に行っている。
王子の投手陣では兼任コーチを除いて最年長の“オールドルーキー”。入社後に直球の最速を1キロアップの151キロに更新するなど、まだまだ成長途上だ。夢のひとつだった都市対抗の舞台で輝いて、もうひとつの夢であるプロへと駆け上がってほしい。(アマチュア野球担当・石曽根和花)
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