かつて、家電製品の安売りで有名な城南電機という会社があった。亡き社長の宮路年雄さんは型破りな人で、商談や仕入れにはアタッシェケースに現金を詰め込み持ち歩いていた。常に3千万~4千万円は入っていたそうである。
▼「人生で一番大事なのがお金。二番目が命。最後が信用や」。即金で安く仕入れて安く売る。昭和から平成にかけてのひところ、話題をさらった現金至上の手法には利点もリスクもあった。社長の主義は広く知れ渡り、強盗に襲われたこともある。
▼わが日常を顧みると、飲食や買い物の支払いは電子マネーとクレジットカードが大半で、現金に触れる機会がかなり減った。日本のキャッシュレス決済比率は5割を超える。訪日外国人客が増え、決済額はこの5年でほぼ倍増だ。むろん信用を後ろ盾にした決済には脆(もろ)さもある。