第5話

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2026/07/06 14:16 更新

ある日の夜。



残業を終えて帰宅すると、エレベーターの前で吉田さんがスマートフォンを見ながら立っていた。





「あ、おかえり。」


「ただいまです。」






画面を見たまま小さく笑っている。





「何かいいことありました?」


「あー……。」



一瞬だけ迷ったような表情を見せる。



「仕事。」


「順調なんですね。」


「うん。」





それ以上は話さなかった。



きっと仕事の内容は言えないのだろう。

芸能人だから。




(聞かない方がいいよね。)




そう思って話題を変える。







「今日コンビニで新作アイス買ったんです。」


「美味しかった?」


「当たりでした。」


「いいな。」


「半分食べます?」





冗談のつもりだった。


すると吉田さんは吹き出した。





「半分だけ?」


「全部はあげません。」


「ケチ。」


「ふふ。」




くだらないやり取りが楽しくて、二人とも笑ってしまう。








________





部屋へ戻ると、スマートフォンが震えた。

高校時代からの友人・美咲からのメッセージだった。



『ねぇ!!!』

『特典会どうする!?』





(あ。)




そういえば、今日から抽選受付だった。

M!LKの特典会。



ライブやイベントには何度も足を運んでいるけれど、最近の接近イベントは倍率が高い。


舜太くんに認知してもらえるくらいには何度も行っていたが最近はファンも増え先着なんかじゃなかなか取れない。


抽選も倍率が高く、今回は諦めるか悩んでいた。







『まだ悩んでる』



返信すると、すぐ電話がかかってきた。



「絶対応募しな!」


「いや、当たらないでしょ。」


「応募しなきゃもっと当たらない!」



「まあ、それはそうだけど……。」



「舜太くんに会えるかもしれないんだよ?」






その言葉だけで少し心が揺れる。


画面に映る舜太くんの笑顔。






ライブで目が合った気がして、一人で喜んだ日。


全部思い出す。






(……会いたい。)






もちろん、他のメンバーにも。




でも、一番会いたいのは舜太くんだった。






「分かった。応募だけしてみる。」


「そうこなくっちゃ!」





電話を切ったあと、公式サイトを開く。





「どうせ当たらないし。」



そう呟きながら応募ボタンを押した。






だから、この時は本当に軽い気持ちだった。

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