第4話

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2026/07/06 14:10 更新



休日の昼。




スーパーで買い物を終え、マンションへ戻ると、エントランスで大きな段ボールを抱えた吉田さんと鉢合わせた。




「あ。」


「こんにちは。」


「すごい荷物ですね」


「うん。思ったより大きくて。」



苦笑いする吉田さんに思わず笑ってしまう。






「持ちます。」


「いや、大丈夫。」


「でも一人じゃ大変そうですよ?」




「……じゃあ、お言葉に甘えようかな。」







二人で段ボールを抱えながらエレベーターへ乗る。




「重っ。」

「何買ったんですか?」



「加湿器。」



「ああ、だから。」



「乾燥すると喉やられるから。」




何気ない一言だった。


けれど、その瞬間だけは”アイドル”という仕事を思い出す。


喉を大切にするのも、きっと仕事の一部。






(ライブも、レコーディングもあるもんね。)





そう思ったけれど、口にはしない。


知らないふりをすると決めたのだから。









________







「そういえば。」




荷物を部屋の前まで運び終えると、吉田さんが振り返った。




「この前おすすめしてくれたパン屋。」


「あ、行ってくれたんですか?」


「行った。」


「どうでした?」


「クロワッサン、本当に美味しかった。」


「ですよね!」



思わず声が弾む。



「あと、プリンも食べた。」


「プリンも美味しいんですよ!」


「じゃあ今度はシュークリーム。」


「売り切れるの早いので午前中がおすすめです。」








そんな他愛ない話だけで、気付けば十分近く立ち話をしていた。



「……なんか。」



吉田さんが少し笑う。




「あなたさんって、一緒に話してると落ち着く。」




突然の一言に心臓が跳ねる。




「え?」


「いや、変な意味じゃなくて。」




少し照れくさそうに頭をかく姿に、こちらまで照れてしまう。




「ありがとうございます。」


「こちらこそ。」





その笑顔を見ていると、ふと考える。


もし最初に『ファンです』なんて言っていたら。


きっと今みたいな関係にはなれなかった。








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