第3話

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2026/07/06 20:35 更新





ある日の夜。



仕事帰り、マンションへ向かって歩いていると突然雨が降り始めた。




「最悪……。」





朝は晴れていたから傘なんて持っていない。







コンビニの軒先で立ち止まる。



「あなたさん?」





聞き慣れた声に振り返る。





「吉田さん。」





吉田さんが傘を差して立っていた。







「帰るところ?」



「はい。でも傘が忘れちゃって……。」



「じゃあ、一緒に帰ろ。」



「え?」



「家、隣なんだから。」







あまりにも自然に言うものだから、断る理由が見つからなかった。




「……お願いします。」










一つの傘に二人。


肩が触れそうで触れない距離。




雨音だけが静かに響く。







「仕事、大変?」



「最近ちょっと忙しくて。」



「無理しないでね。」



「ありがとうございます。」







本当に優しい人だ。


テレビで見ていた印象と変わらない。


いや、それ以上かもしれない。







(……ダメダメ。)


(普通に接するって決めたでしょ。)






そう思いながらも、隣を歩く横顔を見てしまう。




「どうかした?」



「……いえ。」



「顔見られてた。」



「すみません!」





慌てる私を見て、吉田さんは声を上げて笑った。






「そんな焦らなくても。」



「……癖です。」



「ふふ。」




その笑い声が心地よくて。


気付けば、雨の日が少し好きになっていた。









________





部屋へ戻り、ドアを閉める。



ドアに背中を預けて、大きく息を吐いた。





「危なかった……。」





今日もバレなかった。


M!LKのファンだということも


ライブへ行っていることも


最推しが舜太くんだということも。








この関係が壊れるのが怖くて、全部胸の奥へしまっている。


けれど、その秘密は思いもよらない場所で明かされることになる。


まだ、その時の私は知る由もなかった_____


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