何処にでもあるチェーン店のコーヒーショップで初めてアルバイトをし出してから、もうすぐ半年が経過しようとしていた。
半年も居れば、大体お客さんのパターンというものが見えてくる。
定番でありふれた量産系の同じ歳くらいの学生と、少し年上くらいのカップル。見せびらかすようなギラギラした時計を付けた怪しいスーツの男も居れば、刻み込まれたような隈が心配になる同じようなスーツの男も居た。厄介そうなチャラチャラした男が絡んできたと思えば、初めて足を踏み入れたのだろう緊張している様子の男の子。その他は自意識過剰なOL風の女。
老若男女というには少し年齢の偏りはあるものの、大体こんな感じだ。
ただ、こんな言い方をしているが、ほとんどのお客さんは嫌いじゃなかった。
ありふれてるとはいえ、一応身なりや礼儀がしっかりとした人の方が多数だった。
そんな中、時々間違えようのない声と頭髪……そして同じ顔を持った家族が他人のフリをして、私の職場に足を踏み入れることがあった。一応バイトの子達にバレないように配慮してくれてるのか、帽子だけ被って。
✂️「ドリップコーヒーショート、ブラックで」
✨️「……かしこまりました。お持ち帰りですね?」
✂️「いや、ここで飲む……お気遣いありがとう“親切な店員さん“」
そう、家族というのは姉のことだ。
次女であるtemplateは何かと末っ子の私を笑いに来る愚かな姉だ。
ただ、バイト先でお客さんに対して乱暴な口は利けない。
だからいつも店に来た時は、他の子に隠れてカップにメッセージを残す。
私が差し出した後、そのメッセージを見て声を堪えながら笑うあいつがいつも憎たらしい。
いつもこんなやり取りを終えた後、あいつは何事も無かったかのようにコーヒーをゆっくり飲み干して帰るんだけど……今日は予想外のことが起きた。
私やあいつがよく知る特別なお客さんが2人同時に訪れたのだ。
🚬「すみません可愛い店員さん、ダークモカチップフラペチーノのショートに、エスプレッソショットを追加して貰えるかな」
templateとは違う爽やかな笑みを浮かべ注文する三女のシャンティ。
その隣にはキョロキョロと周りを見回し、落ち着きのない長女の姿もあった。
いつも私の為を思って客として来ない2人が、何を思ったのか目の前に居る。
その事実がどうにも現実と思えなくて、呆気に取られてしまった。
🚬「……注文、し直した方がいいかい?」
✨️「あっ……ごめ……じゃなくて……すみません、もう一度お願いします」
🚬「ふふっ、いいよ。注文が多くてごめんね」
そう言って柔らかに笑うシャンティ。
後ろに隠れているおねーちゃんは、まだ私の目すら見ていない。
🚬「……私の分は以上で。GHOST、君の注文もしておこうか?」
👻「え……あ、す、すみません……あの……同じやつを2つ……あっ、全部で2つ……お願いします」
長女であるはずの彼女がまるで幼い妹のように見え、つい吹き出してしまう。
他の子達に気づかれないように接客したかったのに……この人は本当に愛おしい。もちろん、今日みたいにかっこいい時もあれば、たまに天然なシャンティだって、私にとっては愛おしい大好きな姉だ。
✨️「かしこまりました!すぐご用意します!店内でお過ごしですか?」
少し笑ったお陰で吹っ切れたのか、やっといつも通りの接客に戻れた。
私の様子にシャンティは満足そうに笑い、おねーちゃんは目を丸くしていた。
🚬「あぁ、店内で―」
そう言いかけたシャンティは突然ピクリと頭を動かし、より一層笑顔で
🚬「やはりテイクアウトにするよ、お気に入りの席がもう埋まってたみたいだからね」
✨️「へ?」
👻「へ???」
私以上に動揺しているおねーちゃん。やっぱ最初から店内の予定だったんだよね……なんで変えたんだろ。気を使ってくれたのかな。
🚬「行こうかGHOST。そこにいつまでも立っていたら邪魔になる」
👻「あっ……すみませ……」
そう言ってシャンティはおねーちゃんの手を引いて受け取り口まで行ってしまった。
……お気に入りの席って言ってたけど……家から遠いし、私が知る限りシャンティは絶対来たことないはずなのに……あれ、そう言えばtemplateは―
2人が来た衝撃ですっかり忘れていた。
次のお客さんを対応している最中にtemplateが居た席に視線をやると、そこにはもう姿はなかった。
……帰ったのかな、あいつ。せっかく2人も来たのに……間の悪いやつ。
👻「……シャ、シャンティ……さっき言ってた席って……?」
🚬「……ホットコーヒーを嗜む淑女の邪魔はしたくないからね」
👻「え……あっ……あれ…テンちゃん……?だよね……なんであんな隅っこの席に……?」
🚬「ようやく気がついたか。それにしても全く……あんな帽子程度で変装しているつもりなんだろうか。姉妹に隠してまで会いに来るとは相当お熱のようだ」
👻「……えっ!?そういうこと!?」
🚬「……声が大きいよ、姉さん」
👻「あっ……すみませ……」
✂️「……チッ…火傷して味分かんねぇ……あいつ休憩まだかよ。周りもさっさと行かせろよ。帰れねぇだろ……クソ」
おまけ
✂️カップ【来ないでってあれだけ言ったよね💢火傷しちゃえバーカ💢】
🚬カップ【シャンティのカスタム今度飲んでみる!おねーちゃんとのデート楽しんでね♡】
👻カップ【おねーちゃんならいつでも大歓迎だからまた来てね♡緊張してて可愛かったよ♥】