本当に必要な人材を迎え入れるため「移民法」の制定を
そして第三に、政府が投資を増やすに当たってその財源をどこに求めるのか、やがて十分な説明が必要になろう。長期金利の上昇に見られるように、市場との対話が重要な段階になる。また、積極財政を可能にするために、基礎的財政収支(国債費を支払う前の収支)の黒字化を単年度では目指さないことが議論されている。
しかし、そもそもこれまでも、基礎収支黒字化を単年度で求めたことはない。基礎的収支の黒字化を目指す必要などない、という強硬派に配慮して、曖昧表現にしたものと推察される。
ここで重要な疑問は、重視する17の分野は挙げられている(これが多すぎるという批判も聞かれるが)が、全ての産業分野に共通する制度の改革問題が十分論じられていない点だ。その代表は、労働市場の改革だ。さまざまな産業でAIを活用した経営改革が期待されるが、その際現状日本の厳しい解雇規制(1979年の東京高裁判例に基づく)の下で思い切った経営改革は容易ではない。
期限を決めて研究開発を進める場合、一定の期間を超えると長期雇用を義務付けている現状の制度は、大きな妨げになる。労働市場改革の重要性は以前から言われているにも関わらず現内閣で十分な議論がなされている形跡はない。
また、今の経済のボトルネックである労働力不足に関して、外国人労働力の活用も重要になる。そのためには、本格的な「移民法」を制定し、厳しい条件下で真に必要な人材を迎え入れる制度作りが必要だ。ちなみに、主要国の多くは移民法(または外国人労働法)を策定している。日本政府はいまだに、移民の存在そのものを認めていない。
ライドシェア、農業など、改革が停滞していることによって、さまざまな問題が現に生じている。一昨年のノーベル経済学賞を受賞したアセモグル教授(MIT)は、制度改革の必要性を強調した。
筆者は、積極財政そのものに決して反対ではない。しかし一方で、労働市場改革や移民制度制定など、構造改革無くして経済活性化は本当に可能なのか…。高市内閣において、積極財政に合わせて構造改革の議論が進むことを期待したい。