あなたの個人情報は丸裸?捜査機関によるスマホ解析の手順
こんにちは、弁護士の髙野です。
いまや私たちの生活に欠かせないスマートフォン。連絡手段としてはもちろん、写真や動画、スケジュール、検索履歴、SNSでの交流、支払い情報まで、まさに個人の「情報の宝庫」と言えるでしょう。大切な情報がたくさん詰まっているからこそ、もし何らかの理由で捜査機関に押収され、中身を調べられるとなったら…
この記事では、捜査機関が押収したスマートフォンをどのように解析するのか、その基本的な流れとポイントについて、お話ししていきます。
この記事の結論は、スマートフォンは押収されると、ロック解除、データ抽出、解析を通じて、通信履歴、位置情報、写真、SNSなど幅広い情報を調べられる可能性があるということです。刑事訴訟法第218条は、犯罪捜査に必要がある場合に、裁判官の発する令状により差押えや捜索をすることができると定めています。
あなたのスマホが「押収」されるのはどんな時?
なんらかの罪の疑いがかけられると、最近ではほとんどの事件でスマートフォンは押収されます。すぐに返されるケースもありますが、解析に回されることが多いです。
スマートフォンの押収や解析は、単に端末を預かるだけではありません。刑事訴訟法第222条は、捜査機関が行う押収又は捜索について、関係する規定を準用しています。端末の中にある情報が事件とどう関係するのか、令状や手続の範囲が問題になります。
解析への第一歩:「ロック解除」という大きな壁
さて、捜査機関がスマホの中身を調べるためには、まず最初の大きな壁を乗り越える必要があります。それは「ロック解除」です。皆さんも、パスコードやパターン認証、あるいは指紋認証や顔認証で、ご自身のスマホを保護しているはずです。
捜査機関と言えど、このロックを無条件に通り抜けることはできません。では、捜査機関は、どのようにしてこのロックを解除しようとするのでしょうか。
まず最初に行われるのが、スマホの持ち主に対して、任意でパスコードなどを教えるように求めることです。捜査に協力してほしい、という形でお願いされるわけです。しかし、黙秘している被疑者であれば当然答えるはずがありません。
次の方法としては、指紋認証や顔認証を用いてロックを解除することです。ただし、これらは強制的にその人の指や顔などを利用することになるため、裁判所が出す令状がなければ行うことができません。
そして最後は、ロック解除のための特殊なツールやソフトウェアを利用したりすることになります。技術は日々進歩しており、捜査機関も専門的な技術や機器を導入しています。その1つはこちらのnoteに書いてあります。
いよいよ中身へ:データの「吸い出し(抽出)」作業
無事にロックが解除された場合、捜査機関がまず行うのは「物理コピー」の作成です。これは我々が日常的に行っているファイルのコピーなどとは異なり、ファイル作成日やログのタイムスタンプも含め、元のスマートフォンとまったく同一のスマートフォンをもう一つ作成するようなことを指します。
なぜこのような事をするかというと、証拠品であるスマートフォンそのものを操作して解析を行うと、誤ってデータを消去してしまったりしたときに取り返しがつかなくなるからです。ですので、証拠であるスマートフォンそのものはいじらずに、この物理コピーされたデータを操作することが一般的なようです。
このデータの吸い出しには、スマートフォン解析専用に開発された特殊な機器やソフトウェアが使われます。イメージとしては、パソコンにスマホをケーブルで繋いで、中の情報をまるっとコピーするような感じです。この作業によって、スマホの中に保存されている様々な情報が、捜査機関の管理下に置かれることになります。
データ解析:膨大な情報から何を探しているのか?
データの吸い出しが終わると、いよいよ本格的な「解析」が始まります。スマートフォンには、私たちが想像する以上に膨大な情報が記録されています。捜査機関は、この膨大なデータの中から、捜査している事件に関係する証拠や手がかりを探し出すのです。
具体的に、どのような情報が見られる可能性があるのでしょうか。例を挙げてみましょう。
- 電話帳(連絡先リスト)
- 通話履歴(いつ、誰と、どれくらい話したか)
- SMSやMMSなどのメッセージのやり取り
- LINE、Facebook、X(旧Twitter)、InstagramなどのSNSアプリでの投稿やメッセージ交換
- 保存されている写真、動画、音声ファイル
- 送受信したメールの内容
- インターネットの閲覧履歴(どんなサイトを見たか)
- GPS機能による位置情報(いつ、どこにいたかの記録)
- インストールされているアプリの種類や、それらをいつ利用したかの履歴
など、本当に多岐にわたります。
ここで気になるのが、「削除したデータはどうなるのか?」ということではないでしょうか。実は、私たちがスマホ上で「削除」したと思っているデータも、完全に消去されているとは限りません。パソコンのゴミ箱のように一時的に保管されていたり、あるいは特殊なデータ復元の技術を使ったりすることで、削除されたはずのメッセージや写真などが、後から見られる状態になる可能性もゼロではありません。
捜査機関は、これらのデータを分析するために、特定のキーワードで検索をかけたり、特定の人物との通信記録を抽出したり、GPS情報や写真の撮影日時などから行動履歴を時系列で追ったりと、様々な方法を用います。
解析結果はどのように使われるのか
こうして解析された結果、事件に関係する情報が見つかった場合、それは捜査報告書という形でまとめられます。そして、その情報が事件の真相解明に重要であると判断されれば、最終的に裁判において、検察官が証拠として提出する可能性があります。スマートフォンのデータが、裁判の行方を左右する重要な証拠となるケースも少なくありません。
まとめ:不安を感じたら、まず相談を
スマートフォンの解析は、私たちのプライバシーに深く関わる捜査手法です。もし、ご自身のスマホが押収されるような事態に直面したら、多くの方が大きな不安を感じるはずです。そんな時、一人で抱え込まず、ご自身の権利を守るためにも、信頼できる弁護士に速やかに相談することが、何よりも大切です。弁護士は、法的な手続きが適正に行われているか、ご自身の権利が不当に侵害されていないかを確認し、適切なアドバイスやサポートを提供することができます。
FAQ
Q. 捜査機関はなぜスマートフォンを押収するのですか?
連絡先、通話履歴、メッセージ、写真、位置情報、検索履歴など、事件に関係する情報が入っている可能性が高いからです。刑事訴訟法第218条に基づく差押えや捜索が問題になります。
Q. パスコードを教える義務はありますか?
任意で求められることはありますが、供述としてパスコードを教えるかどうかは慎重に考える必要があります。黙秘している場合には、弁護士と相談せずに答えるべきではありません。
Q. 削除したデータも見られることがありますか?
可能性はあります。削除したと思っていても、端末内やバックアップ、解析用データの中に残っていることがあります。押収後に慌てて操作するのではなく、早急に弁護士へ相談することが重要です。
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