【SPXL】30年で159倍。99%の確率でガチホに勝つ戦略
前回の記事で、組み合わせ戦略の72年バックテストで年率17.21%、最終資産が約9万倍という結果を紹介しました。
この組み合わせ戦略は、2つのシグナルを使います。
①金利シグナル:政策金利が0.25%未満ならSPXL、2%以上なら退避
②200DMAシグナル:S&P500が200DMAより2.5%以上、上回っていればSPXL、5%以上下回ったら退避
2つのシグナルのうち、どちらか一方でも「SPXLを買え」と言っていればSPXLを保有。
両方が「退避しろ」と言っている時だけMMFに退避します。
前回の結果を見て、こう思った方もいるのではないでしょうか。
「特定の時期が良かっただけで、実際の運用には参考にならないのでは?」
「現実的な運用期間だと違う結果になるのでは?」
これは正当な疑問です。今回はその疑問に、データで答えます。
1. 過去72年バックテストの弱点
シリーズで紹介してきた72年バックテストには、確かに弱点があります。
ひとつは、特定の歴史的な始まり方を仮定していること。 1954年7月から始めると、たまたま戦後の高度成長期から始まり、その後の歴史を全部抱え込む形でのバックテストになります。
もうひとつは、現実の運用とのギャップです。 実際の投資家が72年も運用することはまずありません。
長くて30年程度というのが現実的でしょう。
つまり、
スタート地点を変えたら結果はどうなるのか
30年程度の運用ならどうなるのか
この2つを検証する必要があります。
2. 30年運用を167パターンで検証
検証方法はシンプルです。
「30年運用」を、開始時点を3ヶ月ごとにずらして繰り返し検証します。
1954年7月開始、1954年10月開始、1955年1月開始、… というように、3ヶ月ごとにずらしながら、それぞれの30年運用の結果を計算します。 過去72年データなので、最後の検証は1996年4月開始(〜2026年4月終了)。
合計167パターンの30年運用バックテストになります。
それでは結果を見てみましょう。
3. 結果
組み合わせ戦略の年率リターン中央値は+18.4%。
最終資産はおよそ159倍。
100万円が30年で1億5900万円ほどになります。
72年通しの数字(+17.2%)とほぼ同じ水準が、
様々な期間の中央値として再現されています。
最悪のケースでも年率+8.4%。
ガチホSPXLの中央値は+9.4%、
ガチホS&P500の中央値は+10.7%。
最悪の時期でも、S&P500ガチホに肉薄しているのはかなり心強い結果といえます。
4. 散布図で見る個別パターン
次に個別のパターンを見てみましょう。
横軸がガチホSPXLの年率リターン、縦軸が組み合わせ戦略の年率リターンです。
同じ開始時期の30年間における、戦略と SPXLガチホのリターンをそれぞれプロットしたものです。
つまり、点が45度線より上にあれば「戦略の勝ち」、下にあれば「ガチホの勝ち」ということになります。
ほとんどすべての点が線より上にあり、167パターン中165パターンで戦略が勝利。
その勝率はなんと99%です。
しかも、点が線から大きく上に離れていることが多く、リターン差の中央値は7.05ポイントでした。
5. 最悪のパターンを検証する
ここで、組み合わせ戦略がガチホに負けた2パターンを見てみます。
①1954年7月開始(〜1984年7月):
戦略+8.60%
ガチホSPXL+8.86%
②1954年10月開始(〜1984年10月):
戦略+8.37%
ガチホSPXL+8.52%
開始時期が3ヶ月違うだけで、どちらも1954年から1984年の30年間を捉えた、実質的に同じ時代の2パターンでした。
この期間は、戦後の安定成長期で、右肩上がりの相場でありながら200DMAバンドのダマシが多発した時期でした。そのため、組み合わせ戦略では売買回数が多くなり、手数料と税金が負担になっています。
また、緊急利下げが必要になる金融危機も発生しなかったので、金利戦略の出番もありませんでした。
組み合わせ戦略が想定する2種類の相場が、どちらもうまく機能しなかった珍しい時代と言えます。
それでも年率+8%は確保しており、ガチホとの差もわずか0.15〜0.26ポイント。
最悪の時期を切り取っても、ガチホとほぼ同等という見方もできます。
6. なぜここまで安定しているのか
過去72年というのは、
高度成長期(1950-60年代)
スタグフレーション(1970年代)
高金利期(1980年代)
ZIRP期(2009-2015、2020-2022)
など、まったく異なる経済環境を全部含んでいます。 どの時代から30年運用を始めても、戦略が勝ち続けたということは、戦略の優位性が特定の時代に依存していないことを意味します。
理由は前回の記事で見たとおり、2つの異なる相場を別のシグナルで捉える構造のためです。
通常の強気相場 → 200DMA戦略が機能
クラッシュ後の急回復 → 金利戦略が機能
どんな時代でも、このどちらかは必ず発生します。 だから、戦略は時代を問わず機能します。
7. 運用年数を変えてもどうか
「自分は30年も運用するつもりはない、10年程度だ」という方もいるでしょう。 運用年数を変えて検証してみました。
運用年数が長いほど、戦略の勝率と安定性が高まります。
10年運用:勝率76%、戦略の最悪リターンは+0.56%
20年運用:勝率96%、戦略の最悪は+4.95%
30年運用:勝率99%、戦略の最悪は+8.37%
50年運用:勝率100%、戦略の最悪は+12.87%
10年運用だと結果のばらつきが大きく、戦略が負ける確率も20%超あります。
これは「短期では運の要素が大きい」という投資全般の性質によるものです。
ただし、最悪から最良までの範囲がガチホに比べて明らかに小さいことは、組み合わせ戦略の強さと言えるでしょう。
また、10年運用でも戦略の年率リターン中央値は+19.43%で、ガチホSPXL(+10.71%)より明らかに高いです。
勝率は下がるが、戦略の優位性は維持される、というのが正確な評価です。
8. 結論:いつ始めても勝てる戦略
今回の検証で確認できたことは、
過去72年のどの30年を取っても、戦略は99%の確率でガチホに勝つ
最悪のケースでも、年率+8.37%は確保
異なる経済環境でも安定して機能している
運用期間が長いほど、戦略の優位性は確実になる
これは特定の歴史を切り取った都合のよい結果ではなく、戦略の構造的な強さを示すデータです。
未来もこれまでのような経済サイクルが続くなら、組み合わせ戦略は今後も機能する、と考えられます。
シリーズの最後で、これらの戦略を自分のパラメータで自由に試せるシミュレーションツールを販売予定です。
この記事で使ったN年運用ローリング検証もツールに搭載されています。 任意の運用年数で、開始時点を四半期ごとずらしたバックテストが一発で実行でき、戦略の頑健性を自分の目で確かめられます。
詳しい内容は、シリーズの締めくくりでお知らせします。
最後までお読みいただきありがとうございました。 記事の感想やリクエストはコメントいただけると嬉しいです。




非常に面白い記事でした。 コロナショック時に当てはめてみますと、2020年3月9日に200DMAを5%以上下回ったためルール②が退避を要求します。 しかし、この時点でFFレートは1.00~1.25%と2%を下回っているためルール①は直前のポジションを維持を要求します。 ①と②の両方が退避を要求した時の…
おっしゃる通りです。 コロナショックのように低金利が続いた状態での下落だと、金利での退避条件が出ないため、ずっとホールドになります。 その点を脆弱と考えて200DMAのみを見て売買する方が良いか、コロナショック時に実際に急回復した結果を鑑みて「やはり低金利では回復が速い」と考えるかは…
コメントありがとうございます。 少し難しい話になりますが、TQQQの元になるNASDAQ100は、過去の平均リターンが17.4%ですがボラ(結果のばらつき)も25.9%と高いです。 一方、S&P500は平均リターン11.8%ですがボラが16.0%です。 ここから最適レバレッジを計算すると、NASDAQ100では2.60、S&P500では…
興味深い記事でした。楽しく読ませていただきました。 3倍レバレッジでTQQQではなくSPXLをお選びになった理由が気になります。既出のお話でしたら申し訳ありません。