未来の猛虎のために、あえて平成を振り返る「平成の虎から令和の虎へ」。第2回は三顧の礼で迎えた野村克也監督(現サンケイスポーツ専属評論家)の時代にスポットを当てる。暗黒時代が続く猛虎は、「打倒巨人」を掲げた名将の力をもってしても…。
(1)当時タブー視された「外部招へい」
ミスター長嶋茂雄が姿を見せた。2日の東京ドーム。圧倒的な存在感。その瞬間に、虎は永遠のライバルに飲み込まれていたのかもしれない。平成最後のGT東京ドーム決戦は一発攻勢に沈み、歯止めの効かない大敗が3つ。矢野阪神はいきなり叩きのめされた。
「阪神の監督にとって一番大事なことは分かるか?」
阪神監督に就任した直後の野村克也に問われたことがある。「優勝することですよね」と恐る恐る答えたら…。
「違う。巨人に勝つことや」
打倒巨人、打倒長嶋にかけた名将の言葉はズシリと響いた。
1998年10月14日。大阪・福島区の阪神電鉄本社で、吉田義男の後任監督へ就任要請することが発表された。
「このたび野村克也サマに監督就任の要請を行うことになりました」
「さん」でもなければ「氏」でもなかった。後に発言の主でもある高田順弘球団社長(当時)は「さん」と言ったつもり…と振り返ったが、その場にいた全員が「サマ」を聞き逃していない。会場はざわついた。