1998年
ある日、私たちに1つの依頼が来た。依頼人は私達よりも身長は低く、年齢も幼い女の子だった。キュアっと探偵事務所に来られたのは、自分の母親が事件に巻き込まれ、その時に助けてもらった時に貰った名刺を頼りにしてきたと言う。依頼の内容は、虹ケ浜の砂浜で母親から貰った指輪を無くしてしまったというものだった。玩具の指輪ではあるけれど、その子にとっては、とても価値のあるものだった。けど、あいにくその日は波浪警報が出ていて、捜索ができる状態じゃなかった。それなのに、くれあは1人だけでその子の指輪を探しに向かってしまった。
まことみらい市 虹ケ浜
ブゥオオオオオオオオ……!!
ザァァァァァァァァァ!!
風も雨も激しく身体を打ち付けるかのように吹き荒れている。こんな中で、くれあは1人だけで無くし物を探しに行くだなんて。死ぬかもしれないのに……大切な物を失った1人の女の子を笑顔にするために……自分の身を顧みないで……!!
「くれあ!!どこにいるの!!くれあぁ!!」
大声で叫んでも、くれあが返答してくれるはずがないか……。こんな風と雨の中で、聞こえるとは思えない……。
「るるか!!早く帰りましょう!!このままじゃ吹き飛ばされてしまうわよ!!」
私に抱き抱えられたままのマシュタンが言う。私もマシュタンも合羽を着ている。くれあもシュシュタンも合羽を着て外に出て行ったけど……大丈夫かな……。
「る……!!るか……!!」
「るるか!!遠くからくれあの声が聞こえてくるわ!!」
「えっ……」
マシュタンの言う通り、声が聞こえてくる。その声の方向を向くと、そこには私の所へ走ってくるくれあの姿があった。
「くれあ……!!」
私もくれあの元へ駆け寄っていく。くれあは長靴を履いていたけど、途中で足元を滑らせてしまう。
「はっ、くれあぁ!!」
私は急いでくれあの元へ走っていき、前に倒れ込みそうになっていたくれあの身体をぎゅっと抱きしめ、転倒を阻止する。
「はぁ……はぁ……ありがとうるるか……。見つかったよ……あの子の大切な物……。」
くれあの右手には、依頼人の女の子が大切にしていた玩具の指輪があった。雨に濡れて所々砂が付いてしまっているけれど、洗い流して綺麗に出来る状態だった。
「さぁ、帰ろうるるか……。」
ぎゅっ……
「つ……冷たい……。くれあ!!なんで外に出たの!!警報が出ているのに外に出るなんて自殺行為よ!!」
「ごめん……ね……でも……あの子に笑顔に……なって欲し勝ったから……」
「くれあ……?」
「そう……私は、私の煌きに……従った……だ……け…………」
くれあの身体から力が抜けていき、ドシッと身体の重みが私の元へやってきた。
「うっ!!」
「くれあ~!!大丈夫でシュか?くれあ!!返事をするでシュ~!!」
シュシュタンが暴風に吹き飛ばされないようにくれあの合羽を掴みながら言う。
「落ち着きなさいシュシュタン!!きっと風邪ね。シュシュタン、くれあは砂浜だけを捜索していたの?」
暴風に吹き飛ばされないように私の合羽を掴んでいるマシュタンがシュシュタンに聞く。
「砂浜だけじゃないでシュ!!海の中にも入っていたでシュ!!」
「それね……全く、困ったものね。」
「でもくれあは一生懸命だったでシュ!!だからシュシュタンも一緒に探したでシュ!!」
「くれあ……。」
もっと、自分を大切にしてくれあ……。あなたが傷付いたら、私はとても傷つくの……。あなたには幸せでいて欲しい。本当は、名探偵になって欲しくなかった。くれあには、パティシエになるという素敵な夢があったのに、私は名探偵になる道を勧めてしまった。今思えば、この後のことも全て私のせい。くれあがキュアエクレールとして戦うことになったのも、くれあがウソノワールとの一騎打ちで記憶を全て失ったのも、ウソノワールにキュアエクレールのマコトジュエルを奪われてしまったのも……全て……全て私のせい……だからその罪を少しでも清算するそのために頑張ってきたのに……
1999年 まことみらい市 ランドマコトタワー前
「解き放て!内なる真実の香り!名探偵……キュアエクレール!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
「すごい!!キュアエクレールだけでウソノワールを圧倒してる!!」
「キュアエクレール……かっこいい……!!」
「ぐっ……!!」
キュアエクレールに変身したくれあが私の元へ歩み寄ってくる。
「ごめんね、るるか。記憶を失ってしまって。でも、もう大丈夫。さぁ、私達と一緒に、ウソノワールを倒そう!!」
パンッ!!
私はキュアエクレールの手を払い除ける。
「えっ……」
どうしてなのくれあ。なぜ思い出してしまったの?自分の身も顧みずに、また同じことを繰り返すの?私はもう見たくない。あなたが傷つき、苦しむ姿を……。
「どうしたのるるか、何かあったの……?」
「何も分かってないくせに……謝られても、私は嬉しくない!!」
私はキュアアルカナ・シャドウに変身を遂げる。
「アルカナスターレイン!!」
くれあにアルカナスターレインを放ち、回避したくれあの顔面に向かって蹴りを与える。
あなたは記憶を失っていたままでよかった。あなたは何もしなくてよかったの。でも、それは全て私のせい。私のせいで、くれあは苦しんだ。苦しませてしまった。くれあの信じる煌きは、時に、彼女の心も、身体も蝕んでしまう呪縛にさせてしまっていた。そうさせてしまったのも私だ。私が全て悪いんだ。だから……
「るるか……どうして……どうしてなの!!」
「くれあ……私はもう、あなたのことを相棒だとは思わない。」
「そ、そんな……なんでそんなこと……」
これは全て、私の贖罪。私の犯した罪、過ち、間違い……。くれあのことを全て知っていたと思っていた私の償わなければならないもの。もうくれあには戦って欲しくない。くれあには、くれあが叶えるべき夢がある。だからくれあ……
「あなたのマコトジュエル、頂くわ!!」
本当は戦いたくない。だけど……絶対に、そのマコトジュエルは私が手に入れる。くれあ、これは全て、あなたのためなの……!!