日本の不正対策の甘さを突く中国人
2025年、京都大学大学院生の中国人男性が、「TOEIC」を他人名義で受験し逮捕された。この男性は他人名義で試験会場に入り、小型マイクを使用して、他の中国人受験生に解答を教えていたことがわかった。また、その大学院生に指示を出していたのは都内に住む別の中国人で、その男性も逮捕された。
TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会は、23年5月から25年6月までの間に受験した約800人が、虚偽の住所で申し込んだ疑いがあると発表。不正受験の可能性が高いとして、同協会は受験者の得点を無効とした。
日本でもよく知られているが、中国では、「高考(ガオカオ)」(大学統一入試)や「国考(グオカオ)」(公務員試験)などでは徹底的な不正対策が行われている。
25年6月、私は上海に滞在中、高考の試験会場となっている高校を取材した。現場は、AIカメラや金属探知機による検査のほか、ボディチェックも厳しく行われ、校内への入場の際に膨大な時間をかけていた。
試験会場には、透明のビニールケースに入れた受験票と身分証明書、筆記用具しか持ち込めない。高考は昼休みが長く、午前の試験が終わると全員がいったん会場の外に出るため、弁当も持ち込めない。
私が訪れたとき、受験生は校門前で家族や教師にスマホを渡していた。試験会場で不正が発覚したら、失格となるだけでなく、刑事罰の対象となり、最高7年の懲役刑が科される可能性がある。そのため、中国の試験で不正を働く人は極端に少なくなっている。
「日本は甘いから大丈夫だろう」という認識が広がっている?
そこまで厳しいチェックが行われない日本の試験では、不正を働く中国人が後を絶たない。近年は不正に関する「アルバイト」の情報が、緑ナンバーの名義貸しと同様、小紅書などで簡単にやりとりされているのが実情だ。
以前なら、替え玉受験を依頼するにしろ、「知り合い」のネットワークに依存した犯罪だった。ところが現在では、SNSを通じて見ず知らずの人同士がつながり、依頼することが可能になっている。
自動車運転免許の外免切替(海外で取得した免許証を日本のものに切り替える制度)も同様だ。
25年10月に制度が厳格化される前は、滞在先ホテルを住所として記載でき、試験問題も非常に簡単だと中国のSNSで紹介された。それにより大挙して来日し、外免切替をする人が増えた。
日本に長く住む中国人は「自分たちは何十万円もかけてまじめに自動車教習所に通い、やっと免許を取得できたのに、制度を悪用して取得するなんて許せない」と憤っていた。
最近、日本に来た中国人のなかには、母国でやれるのだから日本でもいいだろう、また逆に母国では厳しくてできないが日本は甘いから大丈夫だろう、という意識、認識でルールを破ったり、制度の穴を突いたりする人もいる。
「最近来日したばかりの人は、ルールを守ってくれない人が多い」
長く日本に居住してきた中国人の一部も「仲介役」として不正に加担している。以前はルールを守っていた人も、(ごく少数ではあるのだが)中国に住む人、あるいは最近来日した人から悪影響を受けているようなのだ。
ある生保会社の営業の女性は、在日中国人に生保を販売する際、契約したら25カ月間は解約できないというルールを事前に説明している。ほとんどの人は、そのルールをきちんと守るが、「最近来日したばかりの人は、ルールを守ってくれない人が多い」と嘆いていた。
その女性は「問題なのは、不正をする人が増えることによって、在日中国人社会に『日本のルールを守らなくても別に問題はないんだ』『そういうふうにすれば、簡単にルールをすり抜けられるんだ』という意識が広がってしまうことです」と話していた。ごく限られた範囲であるとはいえ、女性の不安は現実のものになっている。