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この作品「除夜の鐘でクソデカおっぱいにTS改変されて初詣に行く話」は「膨乳」「超乳」等のタグがつけられた作品です。
除夜の鐘でクソデカおっぱいにTS改変されて初詣に行く話/東雲アリカの小説

除夜の鐘でクソデカおっぱいにTS改変されて初詣に行く話

14,508文字29分

除夜の鐘で改変みたいな話題が出たので書いてみました。家族全員を超乳美女に認識改変です。

リクエストを募集しておりますので、興味がある方はよろしくお願いいたします!
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 除夜の鐘って、もっと退屈で寒いだけの行事だと思っていた。

 本当は、こたつでみかんを食べながら、テレビの特番をだらだらハシゴするつもりだった。紅白観て、チャンネル変えて、お笑い観て、SNSで年越しカウントダウンの実況を眺める。
 その予定だった。

 それが。

「ほら、行くわよ。たまにはちゃんと鐘つきに行くの」

 母さんのひと言で全部ひっくり返った。
 渋る俺を半ば強引にコートに押し込み、父さんと姉貴まで巻き込んで、家族総出で近所の寺へ。
 テレビの画面は、リモコンの赤いランプを最後に真っ暗になった。

 ……正直、その時点では、かなり不満だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 大晦日の夜、俺は商店街の外れにある小さな寺の境内で、吐く息を白くしながら鐘楼を見上げていた。

 テレビで見る有名なお寺と違って、人もまばらで屋台も出てない。
 ただ、冷たい石畳と、ぼんやりした提灯の明かりと、線香の煙だけがある。

 まあ……思ってたより悪くはない、か。

 風が頬を刺すたび、家のこたつが恋しくなる一方で、境内に漂う静けさが、じわじわと落ち着きを連れてくる。
 さっきまで頭の中で流れていたテレビのジングルも、派手なカウントダウン演出のイメージも、ここには一欠片もない。

 代わりにあるのは、足元の砂利を踏む音と、ときどき誰かが立てる咳払い、それから、

 ゴーン……。

 低い鐘の音だった。

 暗い空に溶けていくような、重たい音。
 耳だけじゃなく、胸の奥のほうまでゆっくり振動させてくる。
 思っていたより、ずっといい音だった。

「今年もいろいろあったな……」

 ぽつりと漏らした独り言を、家族は特に拾わない。

 前を歩く父さんは、四十代半ばの、少し腹が出てきたスーツ体型だ。
 背は俺より少し高いけど、最近はお腹まわりの方が存在感がある。黒いコートの前をしっかり閉めて、ポケットの上で両手をこすり合わせて息を吹きかけている。髪には白いものが混じり始めていて、横顔には年相応のしわが刻まれている。

 母さんは、その隣でマフラーの中に顔半分を埋めている。父さんと同じくしわが目立ち始めた年齢。
 小柄で、少しふっくらした体つき。コートの下のラインは、スタイルが良かっただろう昔の名残は感じられるけど、やっぱり年齢相応の丸みが目立つ。
 学生のとき友達に見られても、「よくいるお母さん」って一言で片付けられそうなシルエットをしている。

 姉貴は髪をひとつに結んで、ロングコートの裾をひらつかせながら歩いている。身長は俺より少し低いくらいで、細身。
 胸だって、雑誌のモデルみたいに特別大きいわけでもなく、本当に平均的な女の子の体型という感じだ。スマホをちらっと見て時間を確認しただけで、あとはポケットに突っ込んだまま、ぼんやり息を白くしている。

 そんな3人の少し後ろを、俺は手ぶらで歩いていた。

 仕事は忙しかった、彼女はいない、貯金は薄い。
 それでもまあ、こうして無事に年を越せるだけマシか……と、半分開き直りながら鐘楼の列に並んでいた。
 除夜の鐘は、人間の煩悩を数えた108回。鐘が鳴るたびに煩悩がひとつ消えていく。なんて話を真面目に信じているわけじゃないが、こんな空気の中で聞いていると、不思議とその話にも説得力が出てくる。

 ゴーン……。

 またひとつ、鐘が鳴る。
 さっきより、少し近くで聞こえた。
 俺たちの番も、だんだん近づいている。

 来てみると、案外悪くないな……。

 こたつとテレビを手放したことを、さっきまで少し根に持っていたけれど、今はもうそこまで惜しいとは思わない。
 頭の中に溜まっていた雑音が、音の波に洗われてほどけていく感じがする。

 ゴーン……。

 境内の片隅で、誰かが静かに手を合わせる気配がした。
 線香のにおいが風に乗って、うっすらと流れてくる。
 遠くの国道を走る車の音も、ここでは別の世界のノイズみたいに遠い。

 ……来年は、もう少しまともな一年だといいな。

 祈るというほど大げさではなく、ただそう思う。
 仕事が少し落ち着いて、もうちょっとだけマシな日々になればいい。
 そんな、ささやかな願いだった。

 年越しの時間が近づくにつれて、鐘のリズムが変わった。
 さっきまで少し間を置きながら鳴らされていたのが、時計の針に合わせるように、一定のテンポを刻み始める。

 ゴーン……。

 今ので何回目だろう。
 ちょうど本堂の軒先にある時計が見える位置まで列が進んで、デジタル表示の時刻が「23:59」を表示しているのが見えた。

「あとちょっとで年越しね」

 隣の姉貴が小声で言う。俺はうなずきながら、吐く息を見つめた。
 白い煙みたいなそれが、空気に溶けていく。

 秒針が、じりじりと「59」から「00」に近づいていく。
 寒さでかじかんだ指先の感覚が鈍くなっているのを、逆にありがたく感じていた。
 余計なことを考えずに、ただ音だけを追いかけていられる。

 ゴォォォォン……!

 さっきまでのものより、ほんの少しだけ深く響く音が鳴った。
 耳で聞いているはずなのに、頭の中の方が先にビリ、と震えたような気がした。
 世界の輪郭に、指でそっとなぞりを入れられたような、そんな変な感覚。

 ……あれ?

 ほんの一瞬、足元がふわっと軽くなった気がした。次の瞬間には逆に重心がすこしだけ前に寄る。

 分かりやすく言えば、体のバランスが、ほんの少しだけ変わった。
 でも「変わった」と認識する前に、頭の方が勝手に補正してしまう。

 ……最初から、こうだったっけ?

 首を傾げかけて、そこで思考がふっと濁る。
 違和感はあるのに、それを掴もうとすると、指の間からするりと抜け落ちていく感じだ。

 コートの中で、シャツの襟ぐりが、少しだけゆるくなった。
 腰回りのジーンズは、逆に、ごくわずかにきつくなる。手袋越しの自分の指が、さっきより細く見える気がした。
 でも、寒さと鐘の音と人いきれの中で、それもすぐ「そういうもんだ」として処理されてしまう。

 境内の空気はさっきと同じようで、どこか違う。それが何なのか分からないまま、時間だけがちゃんと進んでいく。

 胸のあたりで、服の中の何かが、じわじわと膨らんでいるような感覚があった。
 でもそれは、厚着のせいかもしれない。マフラーやインナーやヒートテックを重ね着したせいで、いつもより着ぶくれしている。
 そんなふうに、自然に思えてしまう。

 そして。

 境内に置かれた古い時計が、「00:00」を示した。

 新しい年が来る。

 ゴォォォォン……!

 その瞬間を待っていたかのように、最後の鐘が、夜空に突き抜けた。
 比べものにならないほど、深く長い音だった。
 空気がまるごと震えて、頭の中のざわざわした部分を一気に撫で落としていくような感覚。

 その振動が胸の奥で一度だけ、ボン、と跳ねた。
 最初は、鼓動が一拍増えたような、ほんのかすかな違和感だった。けれど鐘の余韻が尾を引くのに合わせて、コートの内側で、胸のふくらみがじわ……じわ……と、ゆっくり前へ押し出されていく。
 パーカーの生地が、時間差でぐぐ……っと前に引っ張られ、シャツのボタンのあたりで、きゅっ、と細い張りが走った。

 鐘の音が、まだ空気の底を這っている。
 その長い尾が半ばを過ぎたあたりで、胸の奥で溜め込まれていた圧が、一瞬だけ静かに固まった。

 次の瞬間、ぶわん、と一気に来た。

 ボォォォォォォンッ!!!!!

 内側からの衝撃が、胸の中心で炸裂した。
 さっきまでじわじわ膨らんでいたふくらみが、一気に前方へズドンッ!!! と突き出される。
 空気を押し分けるようにコートの前身頃がめくれ上がり、視界の下半分が、膨らみの弧で一気に塗りつぶされた。

 布地が一瞬だけ悲鳴を上げたみたいに、ビキッ、ときしむ。
 しかし次の拍では、シャツもパーカーもコートも、まるでそれが最初から決まっていたサイズであるかのように、無理やり形を変えていく。縫い目ひとつ切れることなく、新しい輪郭に沿ってぴたりと馴染んだ。

 胸の前には、バランスボールを二つ抱え込んだみたいな丸いシルエットが、どん、と当然のように鎮座している。
 さっきまでそこになかったはずの重さも、落ちてくるより早く、肩紐とサポーターが勝手に最適な位置へ滑り込み、身体の側が先にバランスを覚え直してしまった。

 ……ああ そうだ 俺のおっぱい これくらいだったっけ

 さっきまでの「変わった気がする」という感覚は、最後の鐘の尾が消えるのと一緒に、どこかへ溶けていった。
 今目にしている巨大なふくらみの方が、むしろしっくり来る。
 石畳の上で少し前のめりになりながら、バランスボール級のおっぱいを抱えて立っている自分の姿を、当たり前のものとして受け入れていた。

「……あ」

 横から、母さんの声がした。

「0時になったわね。……あけましておめでとう」

 振り向く。
 そこにいるのは、見慣れた母さん。と言っても、見た目だけなら二十代前半くらいの、若い美女そのものだ。
 ふわっとした柔らかい顔立ちに、大きな瞳。頬はうっすら上気していて、黒髪のロングがコートの襟元にさらりとかかっている。
 冬用のコートは、前のボタンのあたりから丸く盛り上がり、その下でバランスボール級のおっぱいが、どん、と前に突き出していた。
 コートの布地がふっくら持ち上がったラインは、俺のより少し控えめ。とはいえ、どう見ても常識外れのサイズで、前面がなめらかな弧を描いている。

「あけましておめでとう」

 自然とそう返しながら、今度は父さんの方を見る。

「今年もよろしくな」

 聞こえてくるハスキーボイスは、どう聞いても父さんだ。
 ただ、その声が乗っている見た目は、きりっとした系統の若い美女になっている。
 背丈は高めで、すらりとした脚と腰のライン。黒髪を後ろでまとめていて、首筋から顎のラインにかけて、余計なもののないシャープさがある。街中を歩けば、まず一度は振り返られるタイプだろう。

 そして、その美人シルエットの胸元も、やっぱりクソデカかった。
 コートの前をぐい、と持ち上げるように、巨大なおっぱいがふたつ並んでいる。
 母さんよりさらに一回り大きく、真正面から見ると、胸のあたりがそのままバランスボール2個分の塊に見える。歩けばきっと、どゆん……どゆん……と落ち着いた大きな揺れ方をするんだろうな、という量感だ。

「……あけおめ、父さん」

 口が勝手にそう呼ぶ。
 若い美女の姿と、聞き慣れた父さんの声が、何の違和感もなく頭の中でくっついている自分に、ほんの一瞬だけ「ん?」と思う。
 けれど、その小さなひっかかりも、すぐに「いや、前からずっとこうだっただろ」で上書きされていった。

「あけおめー」

 今度は姉貴が、マフラーの隙間から顔を出した。
 ぱっちりした目に、少し気の強そうな眉。肩までの髪をざっくりとまとめていて、ラフさと垢抜け感が混ざった顔立ちだ。
 ダウンコートの前では、丸く張り出したおっぱいが主張している。
 膨らみの高さは母さんと同じくらいだけど、全体的にきゅっと上向きで、弾力をそのまま形にしたみたいな張り方をしていた。真正面から見ても横から見ても、輪郭がはっきり分かるクソデカシルエットだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 参拝を終えて境内を抜けると、冷たい夜気が胸元にまとわりついた。
 と言っても、コートの前はみっちりおっぱいで埋まっているから、実際に当たっているのは布と布の隙間だけだ。
 階段を下りる一歩ごとに、バランスボール級のそれが、ドインドインと、半拍遅れて大きく揺れる。

 うわ……今日、さすがに詰め込みすぎたかな……?

 そう思いながら、胸の下に手を差し込んで、ぐいっと少し持ち上げる。
 腕にずしっと重さがのしかかって、肩紐の食い込みが一瞬だけ軽くなる。
 持ち上げた分、おっぱい全体がふわっと浮き、その反動で柔らかく沈み直した。沈みながらまた、ドインとひと揺れする。

 石段を降り切ると、商店街へ続く緩い下り坂になる。
 家族みんなで列になって歩き出すと、それぞれのコートの前で、おっぱいが当たり前みたいな顔で揺れ始めた。

 前を歩く父さんのコート越しに、丸いシルエットが左右にゆっくり振れるのが分かる。
 その隣で、母さんのおっぱいも、どぷん……どぷん……と、歩幅に合わせて控えめに揺れている。
 姉貴はというと、肩を少し後ろに引き気味にして、コートの前で揺れる自分のおっぱいをうまくコントロールしていた。

 その三人の少し後ろで、俺のおっぱいだけが、ひときわ大きな弧を描いていた。
 一歩踏み出すたび、胸の塊がドインッドインッと、他の三人より一段深く重く揺れる。
 足音と一緒に、おっぱいの重さが前に流れ、遅れて背中側に戻ってくるたび、全身のバランスがぐんと引っ張られる。

「帰り、コンビニ寄る?」

 母さんが前を向いたまま言う。
 その声に合わせて、胸元のふくらみがぽよんと上下した。

「いいよ。私、おしるこ欲しい」

 姉貴の返事と一緒に、おっぱいが一拍遅れて、ばふんと弾む。
 自分の視界の中でも、俺のおっぱいが、二人よりさらに大きなカーブで前後しているのが分かる。バインバインバインと、歩幅に合わせて一定のリズムで揺れ続ける。

 歩くたびに胸の重さがタイミングよく前に流れて、少し遅れて背中側に戻ってくる。
 別に意識して揺らしているわけじゃない。歩けば揺れるし、止まれば止まる。それだけのことだった。普段意識もしていない。

「ちょっと、また揺れ方エグくなってるわよ」

 姉貴がちらっと振り返って、俺の胸元を見てくる。

「別に普通に歩いてるだけなんだけど」
「その普通が問題なんだって。バインバインいってるじゃん」

 姉貴のおっぱいも十分おかしいサイズなのに、言っていることはもっともだった。
 その会話を聞いていたのか、母さんがふっと笑う。

 確かに自分でも分かる。
 俺のやつは、明らかに一段階デカい。
 コートの前身頃は完全に前へ持ち上げられていて、下を見ようとすると、まず自分のおっぱいの丸いカーブしか見えない。
 バランスボールを2つ、無理やり抱えて服の中に押し込んだみたいなシルエットだ。

「一番デカいんだし腰やらないように気をつけろよ」

 父さんも、いつもの調子で言う。
 父さんのコートの前も、バランスボール級のおっぱいでしっかり盛り上がっているのに、それでも「一番」は俺だと、全員が疑いなく思っている。

「……まあ、さすがに分かるけどさ」

 そう返したとき、ちょうど歩幅と揺れのリズムが噛み合って、胸が前にドインッと強く跳ねた。
 その反動で肩紐がきゅっと引かれ、重さがずしりと乗る。

 普段考えたことなかったけどやっぱりこのサイズだと歩き方考えないとな……

 エロいとか、恥ずかしいとか、そういう発想は最初からどこにもない。
 バランスボール級のおっぱいがドインドイン揺れるのは、「今日も風が冷たいな」と同じくらい当たり前の出来事だった。

 商店街のシャッターは、ほとんどがもう閉まっている。
 ところどころ開いている店の前を通るたび、ガラスに映るシルエットが目に入った。

 街灯の下、歩く自分の影は、お腹のあたりから不自然に前へ張り出している。
 コートの前が丸く膨らみ、その下で脚だけが細く伸びている。
 影の中でも胸の部分だけが、ゆっさ……ゆっさ……と、リズムよく揺れていた。

「うわ、あの家族、全員すごいね」

 すれ違ったカップルの片方が、大きなおっぱいを震わせながら、小声でそう言った。驚き半分、ちょっと感心半分みたいなトーンだ。

「正月から肩こりやばそう……」
「でもあれくらいの方が、姿勢いいって言うよね」

 そんな会話が耳に入る。
 褒められているのか心配されているのかよく分からないが、どちらにせよ「特別変わっている」というニュアンスではない。
 街行く人もみんな、大なり小なり、似たようなバランスボール級のおっぱいを抱えて歩いているのだ。
 さっきのカップルも二人ともバランスボール級なのは当然のこと。うちの家族は周りよりもちょっと大きいだけだ。
 自分のがひときわ大きいという事実も、「そういう体質」で片付けられている。

「ほら、聞いた? 全員すごいねだって」

 姉貴がちょっと得意げに笑う。おっぱいがググンと強調される。

「でも本当に、おっぱいのための体操はちゃんと続けなさいよ」
「分かってるって。毎晩やってるし」
「ウエストの筋トレもね。そこでサボると腰やるから」
「はいはい」

 母さんとそんなやり取りをしながら、俺は無意識におっぱいの揺れ方を微調整していた。
 足を少し真下に下ろすようにすると、揺れが縦寄りになって、肩紐への負担がマシになる。逆に大股で前に踏み出すと、前後の振れ幅が増えて、ドインドインとちょっと暴れ気味になる。

 そんなこんなでようやくコンビニの明かりが見えてくる。
 ガラス戸の向こうには、同じように巨大なおっぱいを抱えた人たちが、おっぱいをたわませながら温かいコーヒーやおでんを手に並んでいた。

 自動ドアが開くとき、センサーの位置が胸の高さに合っていて、俺のバランスボールおっぱいが先に反応する。
 コート越しの丸い影がガラスに映り、ふっと左右に揺れた。

 センサーの高さもおっぱい前提なんだよな。そういえば……。

 当たり前すぎて、改めて考えたこともなかった。
 家に帰れば、ドアの幅も、廊下の広さも、テーブルの高さも、全部このおっぱい込みの寸法で作られている。

 家族でおしるこやチキンなどを買って、家路につく。
 帰り道、階段を上がるたびに、おっぱいが一段遅れて上下し、ドインッと弾む。
 玄関の段差を越えるときには、少し前かがみになって、おっぱいがドア枠にぶつからないように角度を工夫する。

 靴を脱いで廊下に上がるときも、胸が膝に当たらないように、いつもの癖で片足ずつ慎重に動かした。

 それら全部が、特別なことではなく、生活の一部になっている。

「ただいまー」

 リビングの戸を開けると、こたつとテレビと、暖房の効いた空気が迎えてくれた。
 おっぱいが前にせり出したままコートを脱ぎ、肩紐をちょっと整えて、そのままどさっと座る。

 こたつの天板に、おっぱいがどん、と乗った。
 ゆっくり腰を落ち着けるあいだ、胸の重さは当たり前のように前に流れ、柔らかい丸みが天板の上でほんの少しだけ波打つ。

「ふー……やっぱ外よりこたつだな……」

 そう言いながら、自分でも無意識に、おっぱいを軽く持ち上げて位置を調整する。
 何も考えずにやっているその仕草が、ごく普通のありふれた新年のワンシーンだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 元旦の朝、布団の中は、いつものように窮屈だった。
 胸のあたりで、どっしりとした重みがのしかかっている。
 仰向けで寝ると苦しくなるから、横向きで、クッションや抱き枕をうまく使って、おっぱいの置き場所を確保するのが毎晩の課題だ。

 ん……重い……。

 もぞ、と身体を丸めると、パジャマの前ボタンがぱつぱつと引き伸ばされて、おっぱいがたぷんと揺れた。
 布越しでも分かる、むっちりした弾力。
 腰のあたりまで流れ落ちるような質量。膨らみは、枕の端から端までを占拠している。

 バランスボール級、なんて言い方をする。けど、バランスボールなんて大きさは普通過ぎてあんまり大きい感じはしないな。

 布団から上半身を起こすと、おっぱいが遅れてずるんと滑り落ちる。
 ドスン、と太ももの上に乗って、そこからさらにこたつ布団みたいに前へこぼれ、膝の先にまで達する。
 視界の下半分は、いつも通りおっぱいで埋まった。

「あけましておっぱい……」

 寝ぼけた頭で、口をついて出た言葉に、自分で笑ってしまう。
 別に誰も聞いていないし、言ったところで何もおかしくない。
 だって、こんなサイズのおっぱいなんて、この世界では珍しくもなんともないのだから。

 時計を見ると、もう10時を回っていた。
 起き上がる勢いに任せて片腕をおっぱいの下に差し込み、えいや、と持ち上げる。
 バランスボールに腕を回して持ち上げるときみたいな負荷が、二の腕にずっしりかかる。

「ふー……今日も元気だなあ、俺のおっぱい」

 言いながら、当たり前のように自分の胸を確認する。
 少しむくんでいる気がするけど、正月だからこんなものか……と雑に結論づけて、押し入れから専用のブラを取り出した。

 幅広の肩紐に、分厚いアンダーベルト。
 カップというより、ほとんどハンモックかスリングだ。
 大人2人が乗れるサイズのバランスボールを懐で抱きかかえて、布でがっちりと吊るす。肩にずしりと重さが乗るいつもの感覚。

 姿見を見ながら自分の見た目を確認する。
 顎のラインは少しだけ中性的で、髪は肩にかかるくらい。
 顔立ちはどちらかといえば整っている方だと思うけれど、それより先に目がいくのは、もちろんおっぱいだった。
 パーカーを着込んでも輪郭をごまかせない、バランスボール級の双丘。
 腰までなだれ落ちるような量感を、スポーツ用のサポーターベルトで下から支えるのが、ここ数年のマストアイテムだ。

「ん、いい感じ」

 おっぱいを弾ませながらリビングに降りると、母さんが座椅子に腰かけてテレビを見ていた。
 テーブルの上にはおせち、雑煮、みかん、そして母さんのおっぱい。

「おはよう。あけましておめでとう」
「あけおめー……あ、ちょっとどいて。おっぱい乗せる」
「はいはい」

 母さんが自分のおっぱいをぽこん、と膝の上に持ち上げる。
 そのすき間に、俺のおっぱいをテーブルの縁に沿わせて置く。ドン、と木の板が低く鳴る。天板の半分以上を俺の膨らみが占拠していた。

 母さんも、父さんも、姉貴も、みんな相変らず同じようにクソデカおっぱいだ。
 家族で並ぶと、テーブルの周りが半分くらい乳房で埋まっているんじゃないかってくらいの迫力だけど、普段からそんな感じだから誰もそのことで照れたりしない。
 代わりに話題になるのは、最近のケアグッズとか、肩こりがマシになるストレッチの話ばかりだ。

「今年はね、会社の健康診断でおっぱいの重さも測るらしいわよ」
「また? 去年も測らなかったっけ」
「去年はサイズだけ。今年からは重量も出すって。負担の目安になるんですって」

 母さんが、当然のことのように言う。
 テレビのワイドショーでも、正月特集として「国家おっぱいケア計画」とかいう真面目なのか何なのか分からない企画をやっていた。
 街頭インタビューでは、老若男女がバランスボール級のおっぱいを揺らしながら、今年の抱負を語っている。

『今年はおっぱい筋トレを頑張りたいですね』
『在宅勤務でおっぱいがなまってしまったので……』
『子どもが生まれたので、ちゃんとおっぱいを管理できるママになりたいです』

 スタジオのタレントも、おっぱいについて語るとき、真剣だったり、ちょっと笑いを交えたりするだけで、妙な下ネタに走ることはない。
 大きすぎるおっぱいは、生活の中心であり、社会インフラであり、健康の話題であり……それ以上でも、それ以下でもなかった。

 かつておっぱいが「性的なもの」として消費されていた時代があったらしいけど実感がない。
 雑誌のグラビアは、いまや手や足や背中のラインを特集している。水着姿のモデルも、おっぱいの形そのものより、姿勢や筋肉の付き方を褒められる。
 ネット広告からは、やたら胸を強調したバナーが姿を消し、代わりに「おっぱい用バックパック」とか「おっぱい用昇降机」とか、やたら実務的なアイテムが並んでいた。
 俺はそれらを見て育ち、それを当たり前だと思っている。

「早く食べないと冷めちゃうわよ」
「あーはいはい。いただきます」

 箸を取ろうとすると、おっぱいが邪魔で少し腕が上がりにくい。
 いつもの動きで、少し体をテーブルから離し、おっぱいの手前にスペースを作る。
 膨らみの向こうに、母さん特製のお雑煮が見える。

 こういうちょっとした不便も、日常の一部だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 昼過ぎ、近くの神社に初詣に行くことになった。

 コートの中は、専用のホルダーとサポートベルトでおっぱいを固定してある。
 それでも歩けば、服の内側でどん、と揺れが伝わる。階段を上るたび、重みが前方に引っ張ってくるから、自然と腰を引き気味にしてバランスを取るようになった。

 駅前から神社までの参道は、いつになく人が多い。
 そのほとんどが、俺と同じようにバランスボール級おっぱいを抱えて歩いている。
 冬のコートからは、どこもかしこも大きな半球が二つずつ突き出ていて、上から見ると、まるで巨大な実を抱えた木々が列をなしているみたいだった。

 すれ違いざまに、おっぱい同士がかすかにぶつかることもある。
 それが失礼という感覚はない。
 「すみません」と軽く会釈して、お互いのおっぱいをさっと押さえる。それくらいの接触は、満員電車で肩がぶつかるのと同じくらい、ありふれたことだった。

「今年は混んでるね」

 隣で歩く姉貴が言う。
 姉貴のおっぱいは俺よりひとまわり大きくて、歩くたびにコートの前がふわんふわんと揺れていた。

「まあ、景気が少しマシになってるとか言うしな。みんなお参りしたいことあるんでしょ」
「おっぱい運も上向きだといいわね」
「それは困る。これ以上大きくなったら、マジでドア通れないって」

 冗談半分に言ったつもりなのに、姉貴はまじめな顔で頷いた。

「でもほら、今年から公共施設もおっぱい基準の見直し始まるじゃない。駅の改札とかさ」
「あー、ニュースでやってたね」

 電車の座席、会社のデスク、学校の机、映画館や飛行機のシート。ありとあらゆるインフラが、バランスボール級のおっぱいを前提に作り替えられつつある。
 街頭ビジョンでは、内閣なんとか会議のダイジェストが流れていた。

『おっぱいを支えるためのサポートウェアを、医療費控除の対象に――』
『おっぱい重量税の導入については――』

 真面目な顔をした政治家たちも、スーツの下から巨大なおっぱいを前に突き出している。全てはただの日常なんだから。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 神社の鳥居が見えてきた時点で、嫌な予感はしていた。

 参道入口からもう、人とおっぱいとコートがぎゅうぎゅうに詰まっている。
 遠目に見ても分かる。前に並んでいる人たちの胸元が、だいたい全部バランスボール級でせり出していた。
 コートの中におさまっているというより、前に飛び出して体に支えられている感じだ。

「……覚悟決めるか」

 肩ベルトをぎゅっと持ち直して、俺は列の最後尾に入る。
 すぐ後ろにいた青年が「すみません」と軽く頭を下げてくる。その胸元からも、分厚いコート越しに丸いおっぱいがどんと突き出ていた。

 ゆっくりと列が進み始める。
 一歩進むたび、おっぱい同士がかすかに押し合う。
 前の人のおっぱいが俺ののし掛かったおっぱいにふにっと当たり、その反動で俺のが後ろの人の胸に押し返される。その後ろの人も、さらにその後ろの誰かのおっぱいに押されているはずだ。

 言ってしまえば、参道全体が巨大なおっぱい同士のせめぎ合いみたいになっていた。

「すみませんちょっと押しちゃってますか」

 前の女性が振り向いて声をかけてくる。
 彼女のおっぱいが、くるっと身体をひねった勢いで俺の胸にむぎゅ、と沈んだ。
 お互いのバランスボール級おっぱいが一瞬だけ重なり合って、ふわっと弾力が返ってくる。

「あ、大丈夫です自分のが前に出すぎてるだけなんで」

 俺も反射的にそう返す。
 謝るでもなく笑うでもなく、ただの確認みたいな会話。
 こういう「おっぱい接触確認」は、満員の初詣ではお約束みたいなものだった。

 列が止まる。
 足も止まる。
 でも、おっぱいだけは止まらない。
 前の人がちょっと体勢を変えるたび、そのおっぱいが俺のを押し出し、押し出された俺のが後ろの誰かをぐいっと押す。
 そのたびに、肩ベルトにずしんと負荷がかかる。

 うわ……今日ちょっと張ってるのに……。

 正月特有のむくみなのか、いつもよりおっぱいが重い気がする。
 肩に食い込むベルトを片手で持ち上げて少しだけ負荷を逃がすと、その反動でおっぱい全体がどさっと持ち上がり、前の人の背中にふわっとぶつかった。

「あ、すみません」
「いえいえ今のはこっちも動いたので」

 そんなやり取りが、あちこちで飛び交っている。
 「すみません」「大丈夫です」を、みんなおっぱいを押さえながら口にしている光景は、冷静に考えるとかなりシュールだ。
 初詣で人混みができると、おっぱいがせめぎ合うのは当たり前だ……という前提で、みんな淡々と対処している。

 列が少しずつ前に進むたび、境内の密度が上がっていく。
 左右からもおっぱいがじわじわ押し寄せてきて、参道はほぼ「乳の壁」と化していた。
 上から見たら、きっと丸い風船をぎゅうぎゅうに詰め込んだみたいな光景なんだろうな……と、他人事みたいに思う。

「大丈夫?」

 後ろから姉貴の声がした。
 振り向く余裕はないので、首だけちょっとひねる。
 視界の端で、姉貴のおっぱいが俺の背中にむにっと乗りかかっているのが分かる。
 背骨越しに、みっちりした重さが伝わる。

「生きてる そっちは」
「まあね おっぱいクッションだらけだし」

 姉貴が冗談っぽく言う。
 たしかに、転んでも前後左右どこかしらおっぱいに当たって止まりそうではある。
 安全と言えば安全だが、だからといって楽なわけでもない。

 前の方から、小さくため息が聞こえる。

「はあ……今年も混んでるなぁ おっぱいつっかえすぎ……」
「これでもマシな方ですよ 去年より列スムーズってニュースで言ってましたし」
「マジで おっぱい対策の導線って結構効くんだな……」

 どうやら神社側も、おっぱいのせめぎ合い前提で参道を組み直したらしい。
 曲がり角が少なくなって、左右にちょっとした「おっぱい逃がしスペース」が作られている。
 実際、片側のスペースでは、前に押し出されすぎたおっぱいをいったん横に避難させて姿勢を立て直している人たちがいた。

「すみません一旦おっぱい退避しまーす」

 そんな声を掛け合いながら、大玉を転がすみたいに自分の胸を押し戻している。
 誰もそれを見て笑わない。
 真冬のコート姿でバランスボール級のおっぱいを道端に逃がす行為が、完全に日常の一部として受け入れられている。

 ようやく鳥居をくぐる頃には、俺の肩は軽く悲鳴を上げていた。
 肩ベルトの位置をずらすと、皮膚の上を赤く線が走っているのが分かる。

 帰ったらマッサージしないとな……。

 そんなことを考えていると、今度は石段が迫ってきた。
 これがまた曲者だ。

 一段上がるたび、おっぱいがほんの少しタイミングを遅らせて持ち上がる。
 足をつくと、その勢いで前にぼふんと落ちる。
 段差のリズムとおっぱいの慣性が噛み合わないと、身体が前に引っ張られて転びかねない。

 前のおじさんが、おっぱいを両腕で抱え込むようにして慎重に上っていた。

「お先にどうぞ 足元危ないんで」
「あ、ありがとうございます」

 その横を通り過ぎようとすると、どうしてもおっぱい同士が石段の上でぶつかる。
 狭い階段の上で、丸い塊がぎゅうぎゅうに押し合う感触。
 石の欄干にも、あちこちでおっぱいがのし上がっている。
 列が止まると、みんな自然に自分のおっぱいを欄干に預けて、少しでも肩を休ませていた。

 ふと左を見ると、若い夫婦らしき2人が、並んでおっぱいを欄干に乗せていた。
 旦那らしき男の胸も、奥さんの胸も、コートの前をいっぱいに押し上げている。2つ並んだ巨大なおっぱいの向こう側で、小さな子どもが「寒い」と言いながら跳ねていた。
 その子だけは当然まだおっぱいが小さくて、ビーチボール程度の小さなおっぱいを揺らして身軽にぴょんぴょん動いている。

「ほら ちゃんと手すり掴んで お母さんおっぱいで見えないから」
「はーい」

 そんな会話が聞こえてくる。
 母親にとっておっぱいは、視界の邪魔であり、バランスを取るための荷物であり、でもどこまでも当たり前の身体だった。

 ようやく本殿前の広場に出ると、そこはもう完全に「おっぱいの海」だった。
 賽銭箱の方から、人の肩と頭の列 その前面にずらりと丸い膨らみが並んでいる。
 少し高い位置から見たら、本当に波打つ乳房の群れにしか見えないだろう。

 列がぎゅっと詰まる。
 俺のおっぱいは、前の人の背中と左右の人のおっぱいにきっちり挟まれて、逃げ場を失った。
 前に進むたび、柔らかい圧がぐにぐにと形を変えながら伝わってくる。

「……これ毎年思うけど おっぱい用の別レーン作ってくれないかな」

 思わず小声でこぼす。
 隣の姉貴がくすっと笑った。

「ここにいる全員おっぱい組だから 無理でしょ」
「そっか 全員おっぱいだった」

 バカみたいな会話だけど そこでまた一歩 列が進む。
 賽銭箱が近づいてくる。
 柵の向こうで、神主と巫女が忙しそうに動いていた。
 巫女の装束の上からでもブルンブルンと暴れまくり、やっぱりおっぱいは前にせり出している。

 いよいよ自分たちの番が近づいた。
 ポケットから財布を取り出そうとすると、おっぱいが邪魔で腕が曲がりきらない。
 身体をわずかにねじって、おっぱいの横から手を差し込んで小銭入れを探る。

「……よいしょ」

 うっかり姿勢を崩すと、おっぱいが前に転がりそうになるので ひとつひとつの動きが慎重になる。
 頭の中ではもう「今年も一年、無事におっぱいを支え切れますように」としか考えていなかった。

 たどり着いた賽銭箱の前。
 おっぱいが縁に当たって止まる。その弾力を受け止めた木の板が わずかに軋む。

 小銭を放り込み、鈴を鳴らし、そっと目を閉じる。

 どうか今年も 大きすぎるおっぱいに潰されずに生きていけますように……!

 祈っている内容は 割と切実だ。
 けれどその切実さも含めて ここに並んでいる全員が 似たようなことを考えているんだろうな……と思うと、ちょっと笑えてくる。
 目を開けると、前も横も後ろも相変わらずバランスボール級のおっぱいだらけだった。
 誰もそれを特別視せず、ただ「いつもの初詣」として行列を進めている。

 その光景に少し息苦しさを覚えながらも、やっぱりこれが自分たちの当たり前の日常なんだと 俺は肩ベルトを持ち直して、人の波、おっぱいの波の中に戻っていった。

「さて……今年も、おっぱい担いで頑張るか」

コメント

  • 好き
    3月24日
  • Chanron

    こういう団体改変が一番いいです。

    1月23日
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