食虫植物についているアルファベット記号(随時更新)

やまぶき


食虫植物を買うときに時々「AW」「BCP」「MK」などのアルファベットがついていることがあります。

食虫植物に限らず、他の植物でも付されています。(熱帯植物ならLAとか)

例えば Nepenthes ventricosa Madja-as form BE-3278です。

これはフィリピンの Madja-asで採取されたN.ventricosaで、ボルネオエキゾチカの管理しているクローンのうちBE-3278と名付けられているクローンということになります

植物の後ろについている謎のアルファベットや英語はこのような情報が含まれています。
含まれている情報はラベルによりいろいろですが、主に「生産者(または採取者)」「産地情報」「クローンナンバー」などです。

それから学名由来でついているものもあります。




産地情報


分かりやすい情報から説明すると、「産地情報」はそのままその植物が元はどこで採取されたものかという情報です。

例えば「Amuri Tepui, Venezuela」とあれば、ベネズエラのプタリテプイで採取されたもの(またはそのクローン)であると分かります。

「Ptari, Ven.」と略される場合もあります。


ちなみに産地ではなく「Seedling」と書かれている場合は、一般的には実生繁殖した個体ということになります。
「Seedgrown」と書かれていることもあり、英語としてはコチラのほうが正しいです。

株分けや葉挿しで増えた個体は親となった植物のクローンのため、同じ形質を持つので同じラベルでいいのですが、実生で増やすと親とは違う形質の子が産まれてくるため、基本的に採取物のクローンと同じとせず「Seedling」「Seedgrown」として区別します。





生産者(採取者・交配者)情報


冒頭で書いたAW,BCP,BEなどの記号の話です。
これはその植物を生産(または採取や交配、選別)した個人名やナーセリー、団体を示しています。
略称や通称、普通に日本語で書かれる場合もあります。

由来という呼ばれ方もしますね。

これがあると何が良いかというと、同じ原種であっても、それぞれの農園が所持している元の株には違いがあるので、その見分けになります。
特に交配種はいくらでも違いがあるので、あると無いとでは大きく違います。

それから単純に由緒が知れた植物という付加価値があります。


下記に代表的なものを挙げていきます。

Araflora
 オランダの業者です

AW
 Andrew Wistuba
 ドイツの学者兼趣味家で、ネペンテスとヘリアンフォラの原種に強いです。
 フラスコ苗が多いため、クローンナンバーも付属してます。

BCP
 Best Carnivorous Plants
 チェコの業者。
 幅広い食虫植物を取り扱っています。
 クローンナンバーは「BCP ID:#〇〇〇」のような形式で付されます。

BE
 Borneo Exotics。
 スリランカのネペンテス業者。
 ネペンテスの原種もオリジナル交配種も幅広く扱っています。
 クローンナンバーは「BE-〇〇〇〇」といった形式で付されます。
 (a),(b)などの形式もあります。

Cedric(C.C)
 Cédric Carnivore's
 フランスの業者。

CK
 Christian Klein(Carnivors and More)
 ドイツの業者で、特にサラセニアのラインナップが凄いです。

CS
 Carnivorous spot
 フラスコ苗メインの業者です。


CZ(CZP)
 CZ Plants
 チェコの業者です。

David
 チェコのDavid氏。

DW
 Drosera World
 ドロセラメインの業者です

EP
 Exotica Plants
 オーストラリアの業者。
 ネペンテスを中心に取り扱っています。

GS
 Green Spot
 組織培養専門の業者だったそうですが、事故で廃業したそうです。
 まだその末裔が時々見られます。

HCP
 イギリスの業者です。

HFC
 兵庫県立フラワーセンター
 植物園なのであまり市販はされませんが、時々即売会をするのでその由来の株が流通しています。

HIPs
 HIRO's Pither Plants
 山梨県の食虫植物農園で、名前の通りネペンテスに強いです。
 オリジナル交配種も多く、全国の即売会にも積極的に参加しています。

MK
 Mike King
 イギリスの趣味家で、ここ由来の立派なサラセニアが多く出回っています。
 「MK-A〇〇」などのようにつけられて、MKの後ろのアルファベットは種小名(A=alata、F=flavaなど)、数字はクローンナンバーを表します。


MT
 Malaysia Tropical
 マレーシアの業者。
 最近はあまり食虫植物を作っていないらしいです。

SWC
 South West Carnivorous Plants
 イギリスの業者です。サラセニアを中心に出回っています。


TF(TP)
 Triffid Park
オーストラリアの業者です。

TH
 タイからの輸入だそうで、山田食虫植物農園での販売でよく見かけます。(Pitcher Plant ThailandかThailand.comあたりかなと思います)

XC
 Xc Plants
 タイにあるネペンテスメインの業者だそうです。

YG
 YG Park
 マレーシアの業者です。

Y's
 山田食虫植物農園
 広島の食虫植物農園で、特にネペンテスに強いです。
 Y'sがついているのはオリジナル交配種、選別株、無菌播種や由来不明で増殖したものなどだそうです。

一正園
 一正園
 八丈島の老舗食虫植物農家で、主にネペンやサラセニアに強いです。
 古くから日本に輸入されていた歴史ある個体やオリジナル交配種が多いです。

伊勢
 伊勢花しょうぶ園
 三重の農園で、主にサラセニアがすさまじい物量あります。

ビオパルコ
 ビオパルコ三明
 フラスコ苗を順化して販売していた業者でしたが、廃業してしまいました。
 当時にしては珍しい品種も多かったです。

konan, SB, Thomas Alt, 土居, 猪熊 などなど
 それぞれ個人名やニックネームです。


クローンナンバー
 ナーセリーによってはクローンナンバーを付しています。
 よく見かけるのは「BE-〇〇〇〇」「MK △〇〇」などです。

 同じナンバーが付されている植物は、基本的に全て同じものということになります。


学名関係


 これらは学名上の記述、分類学上の表記です。
 本来であれば正しく論文に記載された植物だけにつけられ、勝手につけることはできないのですが、園芸で流通している植物には誰かが勝手に名付けたもの(いわゆる裸名)が多く含まれます。

ssp.(subsp.)
「亜種」を表します。
基本種と明確な違いがあるが、別種として分離するほどでもない、でも基本種とは地理的に隔絶されている場合に分類されます。


Sarracenia purpurea ssp. venosaS.purpreaの中で北アメリカ南部に自生し、蓋が波打つタイプ)
Pinguicula macroceras subsp. nortensisP.macrocerasの中でカリフォルニア州とオレゴン州の境に隔離分布し、基本種より大型のタイプ)


var. (variety)
「変種」を表します。
亜種と異なり基本種と地理的に隔絶されていないが、明確な違いがある場合につきます。


Sarracenia flava var. ornata(S.flavaの中で赤く強い葉脈が入るタイプ)
Nepenthes rafflesiana var. MardiN. rafflesianaの中でもマルディ産の傘がキノコのようになる個体についています。記載のない裸名です。ただの産地名であり、学名っぽい書き方なのに語頭が大文字でしかもラテン語化されておらず、あらゆる面で間違えているよくない表記です。)


f.(form.)
分類学上の「品種」を表します。園芸品種とは別物で、論文によらずに個人が勝手に名付けていいものではありません。
変種ほどの違いはないが、基本種とは明確に区別できる植物につきます。
花の色が違う程度などの場合によく付きます。


Utricularia minor f. natans(地下茎をほとんど形成せず、浮遊し、貧弱な形態のU. minor)

cv.(または' ')
「栽培品種」を表します。
人工的に選別された特定の形質を持つ植物で、国際栽培植物命名規約に則り登録された栽培品種(cultivar)へ付けられます。
かつてはcvを使って栽培品種を表していましたが、現行の国際栽培植物命名規約上は「'〇〇〇'」のように「'」で囲んで表記し、現在cv.の表記は使いません。
また、学名の種小名と違い最初の1文字が大文字で書かれ、ラテン語は使わず、イタリック体(斜体)も使いません。


Drosera cv. Andromeda(シザンドラとプロリフェラの人工交配種)
Pinguicula cv. BCP Golden Eye
※ちなみにこの2つの品種は国際栽培植物命名規約に則った登録がされていません。
上記の通り現行の規約ではcv:は使われないため適切な例がなかったためあえてあげました。

sp.
「属名までは分かるが、なんの種類か(種小名)までは分からない場合」につきます。
後ろには採取地や特徴が続くことが多いです。
研究が進むと新種になったり既存の種に組み込まれて名前が変わることがあります。


Pinguicula sp. Huajuapan(メキシコのHuajuapanで見つかったピンギキュラの1種)
Nepenthes sp. Viking(タイで見つかったネペンテスの1種。今はNepenthes orbiculataとして記載されています。)

cf.
既存の種にようだと同定したものの、一部形質が異なるまたは確認できないため断定できない場合に付けられます。
「この種類に似ているけど断定できないなぁ」といったニュアンスです。
後ろには似ている種の種小名が続きます。


Utricularia cf. platensis(日本に帰化しているエフクレタヌキモと呼ばれる外来タヌキモですが、南米の本来のU.platensisとは一部特徴が異なっています。)


aff.
既存の種にとても似ているが、重要な形質が異なっているため違う種類と疑われる場合に付けられます。
「種小名は分からないけど、この種に近縁の未記載種(新種)だと思う」といったニュアンスです。
後ろには近縁だと思われる種の種小名が続きます。


Utricularia aff. longifolia(通常のlongifoliaより幅広い葉をもつウトリ。交雑種疑惑があります。)



その他


Mix of clone
「Mix of clone」などと書かれている場合は、フラスコの中に種を撒いて無菌播種し、そこから収穫(挿し木や萌芽)したクローンということになります。
つまりこの場合は複数の形質があるということになります。(ただしフラスコ内で淘汰が起こって1つになってしまうこともあり得ます)
「Mix of 100 clone」などの場合は、100粒の種を撒いたうちの1つとなります。

May be hybrid
これはそのまま「おそらく交雑種」ということです。
採取物で交雑が疑われるような形質が出ている植物につきます。

H/L
High Landの略で、高地性の種のことです。
EP独特の言い回し。

L/L
Low Landの略で、低地性種のことです。
EP独特の言い回し。


-sib
シブクロス(sib-cross)の略です。
正確には「兄弟株同士での交配」をした場合に使います。つまり同じ株から同じタイミング(同じ果実)から採れた種子たちから育った実生苗、その兄弟関係にある実生苗同士を使った交配を指すのが正確な意味です。

ですが実際には兄弟ではない同じ種類同士での、単なる種内交配をした際に使われていることが多いです。

番外編
園芸品種について


栽培品種(cultivar)
国際栽培植物命名規約に基づいて登録された個体へ付けるものです。品種名は「' '(シングルクオーテーション)」で囲います。
例: Pinguicula 'Rose' (八重咲のP. primuliflora

種苗法や特許法に基づく品種
日本の種苗法や特許法に基づいて登録された品種です。こちらの表記は国際的な命名規約に縛られませんので、各法令に基づいて認可されればその通りに使用できます。
例:Dionaea muscipula モンスタープレミアム

その他の品種
どの法令にも国際規約にも則っていない品種名、言い方は悪いですが「自称品種」については表記のルールがありません。
こういった品種については、学名と混同されない(語頭を大文字にし、ラテン語を使わず、イタリック体を使わない)、栽培品種と混同されない(' 'で囲わない)ように表記すれば少なくとも大きな問題にはならないかと思います。
例:  …は角が立ちそうなのであえて挙げません


終わりに


いろいろと網羅できていないので、後々追記していきたいと思います。
間違いがありましたらご指摘ください。

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Posted byやまぶき

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