「セクハラ受けてナンボ」カメラがある車内で着替えも… 女性トラックドライバーの労働環境を変えるために必要なことは?
真っピンクのトラック
2013年、東京で開かれた「東京モーターショー」に、三菱ふそうトラック・バス株式会社(本社:神奈川県川崎市)が開発したトラックが展示された。 そのトラックをはじめて見た時の衝撃と絶望感は、今でも胸に深く刻まれている。 車体は、全身「真っピンク」。水玉模様が施された荷台部分の「Enjoy Your Driving(運転楽しんで)」なる皮肉たっぷりのメッセージがさらに自尊心を傷付ける。 衝撃だったのが、これを開発したのは男性ではなく、女性だったという事実だ。 つまり、女性ならば偏見がないというわけではないことを物語る。 一方、国土交通省は同年、女性のトラックドライバーを受け入れるべく、ある取り組みを開始した。「トラガール促進プロジェクト」である。 そのウェブサイトには、前出のピンクトラックとともに、「近年少しずつではありますが、現場に華やぎを与える女性ドライバー(トラガール)が増えてきました」の文言が、こちらもピンク色の文字で記されていた。 このウェブサイトは4年前にようやく刷新され、ピンクのトラックは姿を消した。 しかし、その新しいウェブサイトに受け継がれた「ピンク色基調」と「トラガール」なる文字によって、同省の現場の女性に対する「現場の女性は幼稚性のある名称で呼びピンク色をあしらっていれば喜ぶ」なる固定観念の根強さを感じずにはいられないのだ。 一方、川上にいる彼らには、意識・知識の変容も見えつつある。 東京モーターショーの後身として始まった「モビリティショー」。昨年は、ハイヒール・ミニスカート姿の女性コンパニオンが姿を消し、ユニセックスで近未来的なデザインの衣装を身にまとった男女が立つようになっていた。 ピンクのトラックを作成した当該メーカーのブースでは、子どもが参加できる空間をつくることで家族連れを誘い込むことに成功。多くの笑い声があふれていた。 数年前まで、出会うほとんどが男性だった国交省の官僚も、最近、女性の割合が明らかに増えた。 また、女性向けのイベントや講演会には女性官僚だけでなく男性官僚の姿も。地方の運輸局では、女性の局長なども誕生している。 女人禁制にするような時代もあったブルーカラーの現場。この業界を変えるには、長い時間と多大な労力が必要になることは間違いない。 しかし、「現場にだけ労働者を入れればいい」「労働者は男性社会に順応すればいい」という短絡的なやり方では、今後女性は定着しない。 まずは、ルールを決める側、労働者を管理する経営者側から変わる必要がある。 運送業界で働く女性ドライバー一人ひとりが、当たり前の労働環境を得られる日を切に願う。 ■橋本愛喜(はしもと・あいき) 現ライター。元工場経営者・トラックドライバー。大型自動車免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。現在はブルーカラーの人権・労働に関する問題や、文化差異・差別・ジェンダーなどの社会問題などを軸に各媒体へ執筆・出演中。
橋本 愛喜