ファクトチェックはなぜ届かないのか、「上から目線」は逆効果 参院選で拡散した外国人の偽情報、誤り修正も態度や潜在意識は変わらない恐れ
誤情報の拡散は、テレビや新聞、雑誌などマスメディア全盛の時代から起きていたが、安野さんは、SNSの登場以降、さらに顕著な形になったという。 SNSの場合、悪意を持ってだまそうと思えば、利用者をネットワークに組み込んで、他の情報が届かないようにしたり、同じように信じる仲間だけを集めたりしやすい。安野さんは「だまそうとしている人にとって、SNSは一番使いやすいメディアになっている」と話す。 重要なのは、人の脳はだまされやすく、自力で偽情報を見抜くのは難しいと自覚することだという。「『SNSには真実がある』というような考えが強いと、逆にだまされてしまう恐れがある。SNSの特徴をよく踏まえて接することが大切だ」と注意喚起する。 ▽社会の中で報われていないという感覚 外国人犯罪が増え、治安が悪化したなどの偽情報は陰謀論とは違うのだろうか。陰謀論を研究する北星学園大の真嶋良全教授(認知心理学)は、定義上は異なるとしつつ「陰謀論と地続きの現象だ」と話す。
社会全体や個人の中で不満や不安が高まると、それを説明してくれるストーリーを信じやすい。その中で「共通の敵」とされやすいのは、外国人のような少数派だ。 たとえ、外国人犯罪が統計的に少ないと指摘されても「自分自身が社会の中で報われていないという感覚や、生活が脅かされているという感覚があると『少なくても犯罪はあるじゃないか』と見てしまう」と話す。感情的な結論が先にあり、事実をそれに合うように解釈してしまいやすいのだ。 ▽エピソードに引きずられないためには SNSでは、実際に誰かが外国人とトラブルになったり、外国人オーナーから家賃を急に値上げされたりした事例が、目に見える形で提示される。真嶋さんは「一人一人のエピソードは直感に訴えかけてくるため、引きずられてしまいやすい。 一方、客観的な証拠や、事実関係に間違いがないかを吟味して考えるのは個人にとって非常に負荷が高い。その結果『怖いことが起きているなら、起きないようにしてほしい』という結論ありきで物事を考えてしまい、統計情報などのファクトそのものが意味を持たなくなってしまう」と解説する。