ホルムズ海峡を巡る緊張は、エネルギー源としての原油の重要性を改めて認識させるとともに、日本が輸入原油の9割超を中東に依存する危うさを浮き彫りにした。日本はオイルショックを契機に調達先の多角化を進め、1980年代後半には世界各地から多様な原油を調達していた。原油調達先の多角化が改めて焦点となっているが、それを取り巻く条件は当時とは異なる。

     中東産原油の大半はホルムズ海峡を通過する。このため、同海峡が事実上封鎖されたことを受け、元売り各社は代替調達を進めた。ホルムズ海峡を経由しない中東産原油に加え、米国、メキシコ、アゼルバイジャン、アフリカ諸国などからも原油を確保した。

     もっとも、日本には多様な原油を扱ってきた実績がある。1988年には21カ国から80銘柄を超える原油を調達し、中東依存度は68%まで低下していた。性状の異なる原油を処理できる製油所の対応力は、調達先を広げるうえで重要な要素となる。

     こうした製油所の対応力について、ENEOSホールディングスの宮田知秀社長は、10年以上前には中東産原油をほとんど使わない運用を行ったケースもあったと振り返る。同社は業界再編を通じて多様な製油所や装置を持つに至り、軽質油と重質油を組み合わせるなどして、性状の異なる原油に柔軟に対応できる体制を整えていると説明した。

     緊急時の代替調達について、出光興産の酒井則明社長は、当初は必要量を確保できるか不透明だったものの、4月以降は「順調に必要な量の確保ができる見通しが立ってきた」と説明した。一方、平時の調達環境は80年代とは大きく異なる。当時はインドネシア、中国などにも調達先が広がっていたが、産油国の国内需要増加や生産量減少により、輸出余力を持つ地域は減った。国際情勢の変化で調達が難しくなった産地もある。酒井社長は「現状、潤沢な輸出力があるところというと、やはり中東だ」と指摘し、原油の安定調達に向けて、「中東産油国との友好関係、信頼関係を長年かけて築いてきた」と強調した。

     有力な調達先とみられる米国にも制約がある。2000年代に始まったシェール革命は米国を世界最大の産油国に押し上げた。足元で緊急対応として米国産原油の調達が増えているものの、JOGMECの三田部真理氏は、中東産を大規模に置き換えるには限界があると指摘する。米国産は中東産と性状が異なるため、単純に置き換えることは難しい。輸送距離が長く物流コストもかさむほか、増産や輸出拡大にも制約があり、継続的な調達源として位置付けるには課題がある。

     平時の原油調達について、コスモエネルギーホールディングスの山田茂社長は、「ホルムズ海峡を回避する施策については、あらゆる選択肢を検討したい」としたうえで、「脱中東ではなく、脱ホルムズが重要だ」との認識を示した。中東産原油はコスト競争力が高く、日本の製油所にも適しているため、平時に中東産より割高な非中東産原油を調達し続けるのは難しいと指摘した。そのうえで、ホルムズ海峡を回避するパイプラインの活用や、湾外での備蓄拡充などを検討する方針だ。

     原油調達先の多角化は供給リスクの低減につながるが、日本の製油所で効率的に処理でき、十分な量を安定確保できる原油は限られる。輸送コストも踏まえれば、平時から非中東産への転換を大規模に進めるのは容易ではない。高市首相は、8月末までに「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」を策定するよう指示した。平時の原油調達をどう組み立てるか、現実的な対応策が問われる。

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