数学の偉大なところは「異なるものが,ある種の同一視 を通じて,同じように振る舞う」と考え,統一的に扱う見方を与えてくれるところです.群論においては,何らかの変換操作 に対して,それによる違いを無視できるという発想が重要になります.例えば,円周上の点を考えたとき,360度回すのも0度回すのも元の位置に戻るため,回転角の違いを「360度の倍数だけ違うものは同じ」とみなすことができます.
この考え方のもと,集合の要素を分類すると,その各々は剰余類と呼ばれます.いま挙げた例でいうと,回転数の違いを無視して分類した集合が剰余類になります.さらに,剰余類同士での演算も,構造を保ったままできると,個々の要素の違いは捨てて,代表元だけを取ってきても同じように計算ができて便利です.このように構成された集合のことを剰余群といいます.剰余群の構成は,群の正規部分群を用いることで体系的に行えます.
また,群と群を比較したときに,一見異なるものを構造によって同じとみなすのが準同型の考え方です.準同型を考えると,元の群の一部の違いを無視しながら,より単純な群に置き換えることができます.このとき,準同型の核(カーネル)を用いて剰余群を構成すると,元の群の情報を適切に圧縮しながら,新しい群を得ることができます.
一般に,ある操作を施しても変わらない性質があるとき,対称性 があるといいます.したがって,群論の根底には広い意味での対称性の概念が横たわっているといえます.
今回は,群論のこのような考え方を理解することを目標に解説します.
目次
群の定義 「同一視」の二種類の意味 剰余類による同一視 同型写像による同一視 剰余群と準同型定理 剰余群 準同型定理 例 整数の集合 回転操作 群の定義 群(group)
G とはある演算
\circ に対して閉じている「集合 」であり,その集合上での「構造 (結合則,単位元・逆元の存在)」を持つものと定義されます.具体的に書くと,
演算について閉じていること(closure)
s,t \in G ならば
s\circ t \in G結合法則(associativity)
s , t , u ∈ G s,t,u \in G s , t , u ∈ G
s,t,u \in G ならば
( s ∘ t ) ∘ u = s ∘ ( t ∘ u ) (s\circ t) \circ u = s \circ (t\circ u) ( s ∘ t ) ∘ u = s ∘ ( t ∘ u )
(s\circ t) \circ u = s \circ (t\circ u)単位元の存在(identity) 任意の
s\in G に対し
s ∘ e = e ∘ s = e s\circ e = e \circ s = e s ∘ e = e ∘ s = e
s\circ e = e \circ s = e なる元
e が
G に存在する.逆元の存在(inverses) 任意の
s\in G に対し
s ∘ s − 1 = s − 1 ∘ s = e s\circ s^{-1} = s^{-1} \circ s = e s ∘ s − 1 = s − 1 ∘ s = e
s\circ s^{-1} = s^{-1} \circ s = e を満たす
s^{-1} が
G に存在する.
の性質が満たされている集合をいいます.数や行列や関数などの集合に適切な演算を入れたものに上の性質が満たされていればそれは群です.
群論が強力なのは,演算の具体的な形を指定しなくても,この抽象的な性質(公理系)だけからかなりのことがいえるからです.以下では演算の記号を略して単に
s ∘ t = s t s\circ t = st s ∘ t = s t
s\circ t = st
と書くことにします.また,この演算のことを積と呼びます.一般に積は交換可能ではありませんが,交換可能なとき,つまり
st=ts のときは,この群をアーベル群(加法群) といいます.アーベル群の積のことは「和」ともいい,演算の記号を「
+ 」で書くことがあります.
「同一視」の二種類の意味 「同一視」にも二種類あり,剰余類による同一視は「自分自身の中で同じものを分類すること」といえ,同型写像による同一視は「自分と他人が同じような振る舞いをすること」といえます.このことを見ていきましょう.
剰余類による同一視 群論では,本質的に区別する必要のないものを同一視し,より簡潔な集合を考えることができます.この集合を与えるために,部分群というものを考えると,区別しなくてよい部分が何かを定めることができます.
さて,群
G の部分集合
H が,
G と同じ演算で群をつくるとき,
H を
G の部分群(subgroup) といいます.
H が部分群であることを判定するためには次をチェックすればよい.
・
s,t\in H ならば
st\in H ・
s\in H ならば
s^{-1} \in H
を満たすとき
H は部分群になります.つまり,積について閉じていて,逆元をとる操作についても閉じていれば良いということです.結合法則は
G と演算は変わらないので当然成り立ち,逆元があれば積を取ることで単位元はもちろん作れます.そのため,これらをチェックする必要はないということです.また,これらをまとめて
s , t ∈ H ならば s − 1 t ∈ H s,t\in H \text{ ならば } s^{-1}t\in H s , t ∈ H ならば s − 1 t ∈ H
s,t\in H \text{ ならば } s^{-1}t\in H
としても
H は
G の部分群であることがいえます.
一般に,群
G が部分群
H を持つとき,
G を
H で「割る」ことができます.どういうことでしょうか. まず群
G を代表して
s\in G をとってきます.そして
G の部分群
H の全ての元のそれぞれと積をとって得られる集合
s H : = { s h ∣ h ∈ H } sH := \{ sh \mid h\in H\} sH := { s h ∣ h ∈ H }
sH := \{ sh \mid h\in H\}
を考えます.すると,この集合は,
s − 1 t ∈ H s^{-1} t \in H s − 1 t ∈ H
s^{-1} t \in H を
s と
t の間の同値関係とするような同値類をなします.この同値類を左剰余類(left coset) といいます.(代表元を左に置いているから左剰余類.)
H s : = { h s ∣ h ∈ H } Hs := \{ hs \mid h\in H\} Hs := { h s ∣ h ∈ H }
Hs := \{ hs \mid h\in H\}
を考えた場合にできる同値類は右剰余類(right coset) といいます.
sH と
tH という複数の左剰余類について考えたとき,これらは全く同じか,そうでなければ一つも共通の元を持たない集合であることがいえます.なぜなら,ある
h i , h j ∈ H h_i,h_j \in H h i , h j ∈ H
h_i,h_j \in H について,
s h i = t h j sh_i = th_j s h i = t h j
sh_i = th_j のとき,
h_i の逆元を作用させて
s = t h j h i − 1 s = t h_j h_i^{-1} s = t h j h i − 1
s = t h_j h_i^{-1} となりますが,
h j h i − 1 ∈ H h_j h_i^{-1} \in H h j h i − 1 ∈ H
h_j h_i^{-1} \in H なので
s H = t h j h i − 1 H = t H s H = t h_j h_i^{-1} H = t H sH = t h j h i − 1 H = t H
s H = t h_j h_i^{-1} H = t H となり,
sH と
tH の間に共通の元が一つでもあればこれらは集合として全く等しくなるからです.したがって,左剰余類を用いると,群
G は
G = H ∪ s H ∪ t H ∪ u H ∪ ⋯ G = H \cup sH \cup tH \cup uH \cup \cdots G = H ∪ sH ∪ t H ∪ u H ∪ ⋯
G = H \cup sH \cup tH \cup uH \cup \cdots
と重複なく分解することができます.これが群
G を部分群
H を用いた同値関係によって割る ということの意味であり,得られた新しい集合を
G / H = { H , s H , t H , ⋯ } G/H = \{ H, sH, tH, \cdots\} G / H = { H , sH , t H , ⋯ }
G/H = \{ H, sH, tH, \cdots\}
と書き,左剰余集合 といいます.(この集合が群になる剰余群についてだけこの記号
G/H で書く場合もありますが,ここではただの同値関係で割っただけの集合にもこの記号を使うことにします.)剰余集合の要素の個数(無限集合の場合は濃度)を指数(index) といい,
(G:H) で書きます.
剰余類の性質として,任意の代表元
s に対して,
∣ H ∣ = ∣ s H ∣ |H| = |sH| ∣ H ∣ = ∣ sH ∣
|H| = |sH|
が成り立ちます.
|H| の記号は集合
H の元の数を表し,これを位数(order) といいます.つまり,どの剰余類もサイズが等しいわけです.また,
s\in H なら
H = sH
でもあり,これは並べ替え定理 といいます.
s に逆元が存在するため,
H と
sH には一対一対応の関係があることがほぼ明らかであり(全射は明らかで,
s h i = s h j sh_i = sh_j s h i = s h j
sh_i = sh_j となる
h i , h j ∈ H h_i,h_j \in H h i , h j ∈ H
h_i,h_j \in H が存在するとすると,逆元
s^{-1} が存在するからそれを左からかけると
h_i = h_j となるから単射),それゆえこれらの性質も明らかです.この性質と,剰余集合による分解を合わせて考えると,
∣ G ∣ = ( G : H ) ∣ H ∣ |G| = (G:H) |H| ∣ G ∣ = ( G : H ) ∣ H ∣
|G| = (G:H) |H|
が直ちにいえます.これをラグランジュの定理 といいます.元の群の位数
|G| の約数になっていないような位数の部分群を探しても意味がないことがわかるという意味でこの定理は有用です.また,並べ替え定理とラグランジュの定理を合わせると群の積表(二項演算の結果どの元になるかを示した表)を埋めるときに,まるで数独のパズルを解くときのように決定でき,役立ちます.
同型写像による同一視 二つの群
G と
G' を考えます.そして,
G から
G' への全射
f により,
g\in G と
g'\in G' のあいだに
g'=f(g) なる対応があるとします.このとき,
f ( g i ) f ( g j ) = f ( g i g j ) f(g_i)f(g_j) = f(g_i g_j) f ( g i ) f ( g j ) = f ( g i g j )
f(g_i)f(g_j) = f(g_i g_j)
が成り立つとき,
f を準同型写像といい,
G と
G' は準同型(homomorphic) であるといいます.これを
G \sim G' と書きます.準同型写像とは,群の演算の構造を保つ写像です.
準同型の性質として重要なものを二つ挙げておきます.群
G から群
G' の間の写像
f が準同型写像のとき,
f ( e ) = e ′ f ( g − 1 ) = f ( g ) − 1 \begin{align*}
f(e) &= e'\\
f(g^{-1}) &= f(g)^{-1}
\end{align*} f ( e ) f ( g − 1 ) = e ′ = f ( g ) − 1
\begin{align*}
f(e) &= e'\\
f(g^{-1}) &= f(g)^{-1}
\end{align*}
が成り立ちます.ただし,
e は
G の単位元,
e' は移った先の
G' の単位元です.
f ( e ) = f ( e e ) = f ( e ) f ( e ) f(e) = f(ee) = f(e)f(e) f ( e ) = f ( ee ) = f ( e ) f ( e )
f(e) = f(ee) = f(e)f(e) であるため
f(e)=e' がいえ,さらに
f ( g − 1 ) f ( g ) = f ( g − 1 g ) = f ( e ) = e ′ f(g^{-1}) f(g) = f(g^{-1}g) = f(e) = e' f ( g − 1 ) f ( g ) = f ( g − 1 g ) = f ( e ) = e ′
f(g^{-1}) f(g) = f(g^{-1}g) = f(e) = e' より
f ( g − 1 ) = f ( g ) − 1 f(g^{-1}) = f(g)^{-1} f ( g − 1 ) = f ( g ) − 1
f(g^{-1}) = f(g)^{-1} となるわけです.
準同型写像がとくに全単射のとき,
G と
G' は同型(isomorphic) であるといい,
G\cong G' と書きます.同型な二つの群は,一見異なる見た目だとしても,全く同じ群と見なすことができます.
剰余群と準同型定理 剰余群 部分群の中でも,群全体の対称性を支配するような重要な部分群があり,正規部分群(normal subgroup,またの名を不変部分群;invariant subgroup) というものがあります.正規部分群は,群全体で変換操作しても崩れない核となるようなもので,
H が
G の部分群で,任意の
g\in G ,
h \in H に対して,
g − 1 h g ∈ H g^{-1} h g \in H g − 1 h g ∈ H
g^{-1} h g \in H となるときのことをいいます.正規部分群によって剰余類を考えたときには,左剰余類も右剰余類も等しくなり,区別は不要になります.
さらに,
H が
G の正規部分群なら,
H によってつくった剰余集合
G / H = { s H ∣ s ∈ G } G/H = \{sH \mid s\in G\} G / H = { sH ∣ s ∈ G }
G/H = \{sH \mid s\in G\} は,
( s H ) ( t H ) = s H t H = s t t − 1 H t H = s t H H = s t H (sH)(tH) = sHtH = stt^{-1}HtH = stHH = stH ( sH ) ( t H ) = sH t H = s t t − 1 H t H = s t HH = s t H
(sH)(tH) = sHtH = stt^{-1}HtH = stHH = stH
とかけるから,
( s H ) ( t H ) = s t H (sH)(tH) = st H ( sH ) ( t H ) = s t H
(sH)(tH) = st H という自然な演算について閉じています.すなわち,剰余類もまた群をなしていて,元の群の全射な準同型になっているということになります.したがって,演算は代表元だけで行ってもよく,単純化されます.このように正規部分群で割って得られる群を剰余群(factor group) といいます.
準同型定理 二つの群
G ,
G' とその間の全射な準同型写像
f:G\to G' があったときに,その対応関係は一般には
n 対1対応なわけですが,写像で移った先で同じになるものはあらかじめまとめて同一視しておけば,
1 対
1 対応になり,同型写像を作ることができます.この同一視を行うためには,なんらかの正規部分群で剰余群を作れば良いはずです.この正規部分群が何かを与えてくれるのが準同型定理です.
この説明をする前に,群
G と
G' の間の準同型写像
f に対して核(kernel)と像(image)を次のように定義します.まず,核とは
f によって単位元に送られるものの全体の集合で,
k e r ( f ) : = { g ∈ G ∣ f ( g ) = e ′ } \mathrm{ker}(f) := \{ g \in G \mid f(g) = e' \} ker ( f ) := { g ∈ G ∣ f ( g ) = e ′ }
\mathrm{ker}(f) := \{ g \in G \mid f(g) = e' \}
と書きます. また,像とは
f によって移された元全体の集合で,
I m ( f ) : = { f ( g ) ∣ g ∈ G } \mathrm{Im}(f) := \{ f(g) \mid g \in G \} Im ( f ) := { f ( g ) ∣ g ∈ G }
\mathrm{Im}(f) := \{ f(g) \mid g \in G \}
と書きます.
準同型写像
f:G\to G' の核は,群
G の正規部分群 になります.これを示すのは次のようにしてできます.まず任意の
s , t ∈ k e r ( f ) s,t \in \mathrm{ker}(f) s , t ∈ ker ( f )
s,t \in \mathrm{ker}(f) に対して,
f ( s − 1 t ) = f ( s ) − 1 f ( t ) = e ′ e ′ = e ′ f(s^{-1}t) = f(s)^{-1}f(t) = e' e' = e' f ( s − 1 t ) = f ( s ) − 1 f ( t ) = e ′ e ′ = e ′
f(s^{-1}t) = f(s)^{-1}f(t) = e' e' = e' より,
s − 1 t ∈ k e r ( f ) s^{-1}t \in \mathrm{ker}(f) s − 1 t ∈ ker ( f )
s^{-1}t \in \mathrm{ker}(f) から,部分群になっていることが示せます. 次に,任意の
g\in G と
s ∈ k e r ( f ) s \in \mathrm{ker}(f) s ∈ ker ( f )
s \in \mathrm{ker}(f) に対して
f ( g s g − 1 ) = f ( g ) f ( s ) f ( g ) − 1 = e ′ f(g s g^{-1}) = f(g) f(s) f(g)^{-1} = e' f ( g s g − 1 ) = f ( g ) f ( s ) f ( g ) − 1 = e ′
f(g s g^{-1}) = f(g) f(s) f(g)^{-1} = e' から
g s g − 1 ∈ k e r ( f ) g s g^{-1}\in \mathrm{ker}(f) g s g − 1 ∈ ker ( f )
g s g^{-1}\in \mathrm{ker}(f) もわかるため,示せました.
k e r ( f ) \mathrm{ker}(f) ker ( f )
\mathrm{ker}(f) は群
G の正規部分群なので,これを用いて剰余群を作ることができます.すると,できた剰余群は自然な写像で
\mathrm{Im}(f) と同型になります.すなわち,
G / k e r ( f ) ≅ I m ( f ) G/\mathrm{ker}(f) \cong \mathrm{Im}(f) G / ker ( f ) ≅ Im ( f )
G/\mathrm{ker}(f) \cong \mathrm{Im}(f)
であり,これを準同型定理(fundamental theorem on homomorphisms) といいます.このときの同型写像は
s\in G に対し
f ˉ : s k e r ( f ) ↦ f ( s ) \bar f: s \mathrm{ker}(f ) \mapsto f(s) f ˉ : s ker ( f ) ↦ f ( s )
\bar f: s \mathrm{ker}(f ) \mapsto f(s) で定義されます.この写像がよく定義されていること(代表元の取り方によらず
f(s) が定まること)は,もし
s,t\in G に対し
s k e r ( f ) = t k e r ( f ) s\mathrm{ker}(f) = t\mathrm{ker}(f) s ker ( f ) = t ker ( f )
s\mathrm{ker}(f) = t\mathrm{ker}(f) なら,
f ˉ ( s k e r ( f ) ) = f ˉ ( t k e r ( f ) ) \bar f(s \mathrm{ker}(f)) = \bar f(t \mathrm{ker}(f)) f ˉ ( s ker ( f )) = f ˉ ( t ker ( f ))
\bar f(s \mathrm{ker}(f)) = \bar f(t \mathrm{ker}(f)) を示せばよいわけですが,これは
k e r ( f ) \mathrm{ker}(f) ker ( f )
\mathrm{ker}(f) は移った先では単位元に潰れるために簡単にわかります.つまり,ある
k ∈ k e r ( f ) k \in \mathrm{ker}(f) k ∈ ker ( f )
k \in \mathrm{ker}(f) を用いて
s = tk と書けるため,
f ˉ ( s k e r ( f ) ) = f ( s ) = f ( t k ) = f ( t ) f ( k ) = f ( t ) = f ˉ ( t k e r ( f ) ) \bar f(s \mathrm{ker}(f)) = f(s) = f(tk) = f(t) f(k) = f(t) = \bar f (t \mathrm{ker}(f)) f ˉ ( s ker ( f )) = f ( s ) = f ( t k ) = f ( t ) f ( k ) = f ( t ) = f ˉ ( t ker ( f ))
\bar f(s \mathrm{ker}(f)) = f(s) = f(tk) = f(t) f(k) = f(t) = \bar f (t \mathrm{ker}(f)) として示せます. 準同型定理は,群を自然な形で割って情報を圧縮しているということであり,ほぼ自明に思われると思います.
例 簡単な例をいくつか紹介します.
整数の集合 整数の集合
Z = { ⋯ , − 2 , − 1 , 0 , 1 , 2 , ⋯ } \mathbb{Z} = \{\cdots,-2,-1,0,1,2,\cdots \} Z = { ⋯ , − 2 , − 1 , 0 , 1 , 2 , ⋯ }
\mathbb{Z} = \{\cdots,-2,-1,0,1,2,\cdots \} は加法(足し算)を演算として群となります.単位元は
0 であり,
a \in \mathbb{Z} の逆元は
-a となっています.
3 の倍数の集合
3\mathbb{Z} は
\mathbb{Z} の正規部分群になっています(
3\mathbb{Z} はただの記号です.剰余類とは関係ありません).
3\mathbb{Z} で剰余群を作ることができて,
Z / 3 Z = { 0 + 3 Z , 1 + 3 Z , 2 + 3 Z } \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} = \{0+3\mathbb{Z}, 1+3\mathbb{Z}, 2+3\mathbb{Z} \} Z /3 Z = { 0 + 3 Z , 1 + 3 Z , 2 + 3 Z }
\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} = \{0+3\mathbb{Z}, 1+3\mathbb{Z}, 2+3\mathbb{Z} \}
と分解できます.数値が
3 ずつずれているだけのものは同一視して,
3 で割った剰余の情報だけで分類しているということです.剰余だけで加法について群になっているため,剰余だけを知りたい場合,計算をシンプルにすることができます.
回転操作 ここでは複素平面上での120度回転を考えてみましょう.120度の回転を表す複素数を
ω = e i 2 π / 3 \omega = e^{i2\pi/3} ω = e i 2 π /3
\omega = e^{i2\pi/3} とすると,
C 3 = { 1 , ω , ω 2 } C_3 = \{1,\omega, \omega^2 \} C 3 = { 1 , ω , ω 2 }
C_3 = \{1,\omega, \omega^2 \} と表される集合は,積について群となります.
整数の集合
\mathbb{Z} から
C_3 への写像
f を
f ( n ) = ω n ( n ∈ Z ) f(n) = \omega^n \ (n\in \mathbb{Z}) f ( n ) = ω n ( n ∈ Z )
f(n) = \omega^n \ (n\in \mathbb{Z})
で定義します.すると,
s , t ∈ Z s,t\in \mathbb{Z} s , t ∈ Z
s,t\in \mathbb{Z} に対して
f ( s + t ) = ω s + t = ω s ω t = f ( s ) f ( t ) f(s+t) = \omega^{s+t} = \omega^s \omega^t = f(s)f(t) f ( s + t ) = ω s + t = ω s ω t = f ( s ) f ( t )
f(s+t) = \omega^{s+t} = \omega^s \omega^t = f(s)f(t) より
f は準同型写像です.この準同型写像の像は
I m ( f ) = C 3 \mathrm{Im}(f) = C_3 Im ( f ) = C 3
\mathrm{Im}(f) = C_3 であり, 核は
k e r ( f ) = { n ∈ Z ∣ f ( n ) = 1 } = { n ∈ Z ∣ ω n = 1 } = { 3 n ∣ n ∈ Z } = 3 Z \mathrm{ker}(f) = \{ n \in \mathbb{Z} \mid f(n) = 1 \} = \{ n \in \mathbb{Z} \mid \omega^n = 1 \} = \{ 3n \mid n \in \mathbb{Z} \} = 3\mathbb{Z} ker ( f ) = { n ∈ Z ∣ f ( n ) = 1 } = { n ∈ Z ∣ ω n = 1 } = { 3 n ∣ n ∈ Z } = 3 Z
\mathrm{ker}(f) = \{ n \in \mathbb{Z} \mid f(n) = 1 \} = \{ n \in \mathbb{Z} \mid \omega^n = 1 \} = \{ 3n \mid n \in \mathbb{Z} \} = 3\mathbb{Z} です.
準同型定理により,
Z / 3 Z ≅ C 3 \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \cong C_3 Z /3 Z ≅ C 3
\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \cong C_3 となり,整数を
3 で割った余りの集合に加法が入ったものは,複素平面上での120度回転と全く同じ構造をしていることがわかります.
対称操作 ある物体に対して操作をしても,見た目が変わらないような操作のことを対称操作といいます.例えば,正三角錐を考えてみると,120度の回転,240度の回転,適当な面に対して鏡写しする操作(鏡映操作)は対称操作になっています.120度回転操作を
c_3 ,3つある鏡映操作を
σ , σ ′ , σ ′ ′ \sigma,\sigma',\sigma'' σ , σ ′ , σ ′′
\sigma,\sigma',\sigma'' という記号で表すと,
C 3 v = { 1 , c 3 , c 3 2 , σ , σ ′ , σ ′ ′ } C_{3v} = \{1, c_3, c_3^2, \sigma, \sigma', \sigma'' \} C 3 v = { 1 , c 3 , c 3 2 , σ , σ ′ , σ ′′ }
C_{3v} = \{1, c_3, c_3^2, \sigma, \sigma', \sigma'' \} は連続する操作について群になっています.対称操作においては,不動となる点があることから,このような対称操作による群を点群と呼びますが,これはその一例となっています.
C_{3v} の部分群として,
{ 1 , c 3 , c 3 2 } \{ 1,c_3,c_3^2\} { 1 , c 3 , c 3 2 }
\{ 1,c_3,c_3^2\} ,
{ 1 , σ } \{ 1, \sigma \} { 1 , σ }
\{ 1, \sigma \} ,
{ 1 , σ ′ } \{ 1, \sigma' \} { 1 , σ ′ }
\{ 1, \sigma' \} ,
{ 1 , σ ′ ′ } \{ 1, \sigma'' \} { 1 , σ ′′ }
\{ 1, \sigma'' \} があります.このうち,正規部分群となっているのは,
{ 1 , c 3 , c 3 2 } = C 3 \{ 1,c_3,c_3^2 \} = C_3 { 1 , c 3 , c 3 2 } = C 3
\{ 1,c_3,c_3^2 \} = C_3 であり,これによって剰余群を作ると
C 3 v / C 3 = { C 3 , σ C 3 } C_{3v}/C_3 = \{ C_3, \sigma C_3 \} C 3 v / C 3 = { C 3 , σ C 3 }
C_{3v}/C_3 = \{ C_3, \sigma C_3 \}
とできます.
{ 1 , σ } = : H σ \{ 1, \sigma \} =: H_\sigma { 1 , σ } =: H σ
\{ 1, \sigma \} =: H_\sigma によって剰余集合を作ると
C 3 v / H σ = { H σ , c 3 H σ , c 3 2 H σ } = { H σ , σ ′ H σ , σ ′ ′ H σ } \begin{align*}
C_{3v}/H_\sigma &= \{ H_\sigma, c_3 H_\sigma, c_3^2 H_\sigma \} \\
&=\{ H_\sigma, \sigma' H_\sigma, \sigma'' H_\sigma \}
\end{align*} C 3 v / H σ = { H σ , c 3 H σ , c 3 2 H σ } = { H σ , σ ′ H σ , σ ′′ H σ }
\begin{align*}
C_{3v}/H_\sigma &= \{ H_\sigma, c_3 H_\sigma, c_3^2 H_\sigma \} \\
&=\{ H_\sigma, \sigma' H_\sigma, \sigma'' H_\sigma \}
\end{align*}
などと書けますが,こちらは代表元の選び方によって自然な積が定義できないことがわかります.鏡映は特定の軸に依存した対称性であるのに対して,回転は群全体を支配するより本質的な対称性だといえます.
まとめ 群論では,特定の変換による違いを無視し,統一的に扱う発想が重要となる.集合を分類したものが剰余類であり,適切な演算が定義できると剰余群を成す.また,準同型を用いると,群の一部の違いを無視しながら単純な群に置き換えられる.特に,その核を用いて剰余群を構成することで,群の情報を適切に圧縮できる.群論は本質的な対称性を捉え,異なるものを同一視する枠組みを提供する.
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