昼過ぎに届いたその一通のメッセージを見た瞬間、思わず立ち上がった。
仁人くんが体調を崩すなんて珍しい。
普段から自己管理はしっかりしているし、少しくらい具合が悪くても周りに心配をかけないタイプだ。
だからこそ、その短いメッセージだけでいつもより具合が悪いんだろうなと分かった。
すぐに返信すると、数分後に返事が来る。
送信した途端、電話がかかってきた。
少し強めに言うと、電話の向こうで小さな笑い声が聞こえた。
少しだけ元気のない笑い方。
それを聞いただけで、早く顔を見たくなった。
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仁人くんの家のインターホンを押す。
しばらくして扉が開いた。
思わず息を呑む。
明らかに顔色が悪い。
髪は少し乱れていて、頬だけが熱で赤い。
目元もどこかぼんやりしていた。
部屋に入ると、テーブルの上にはスポーツドリンクと薬。
だけど食事らしいものは何もなかった。
小さな声で言い訳する姿が、なんだか少しだけ可愛い。
普段なら絶対に認めないのに。
コンビニで買ってきたおかゆを温める。
その間、仁人くんはソファに座っていたけれど、ぼーっとしていて明らかに辛そうだった。
素直に受け取る。
一口食べて、少しだけ目を丸くした。
そんなことを言いながら少しずつ食べ進める。
その様子を見ているだけで安心した。
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薬を飲ませて、ベッドへ追いやる。
ベッドの横に座ると、仁人くんがこちらを見上げる。
少し潤んだ瞳。
熱のせいだと分かっているのに、ドキッとしてしまう。
そう言ったきり、視線を逸らした。
部屋に静かな時間が流れる。
時々、仁人くんの辛そうに呼吸をするのが聞こえる。
それだけしんどいのだろう。
額に手を当てる。
その一言に胸がはねる。
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気づけば、夕方になっていた。
そう言った瞬間だった。
服の袖が、くいっと引っ張られる。
見ると、仁人くんがこちらを見ていた。
思わず目を瞬く。
その声は弱々しくて、少しだけ寂しそうだった。
冗談っぽく聞く。
すると仁人くんは数秒迷ってから、小さく頷いた。
その仕草があまりにも珍しくて。
思わず笑ってしまう。
耳まで赤くなっている。
熱のせいだけじゃない。
付き合ってから分かったけれど、仁人くんは意外と照れ屋さんだ。
小さな声。
お願いするような口調。
その瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた。
即答すると、仁人くんは安心したように目を細めた。
そして次の瞬間。
そっと私の手を握る。
弱った声でそう言う。
普段なら絶対にしないような甘え方。
そう言いながら、ぎゅっと少しだけ力を込める。
その手の温かさが愛しくて。
私は握り返した。
すると仁人くんは満足そうに笑う。
眠気に負けそうな声でぽつりと零れた言葉。
その言葉を最後に、仁人くんは静かな寝息を立て始めた。
握られた手だけは離れないまま。
きっと明日になったら恥ずかしくなって ″忘れて″なんて言うんだろう。
でも。
こんな風に弱った時だけ見せる素直な姿を知っているのは、恋人の特権だと思った。
眠る仁人くんの前髪をそっと撫でながら、私は小さく笑った。
早く元気になってね、仁人くん。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。