昼休み。
学食で向かいに座る柔太朗くんが、スマホを見ながらふっと笑った。
珍しいなと思って画面を覗き込むと、そこにはサッカー選手の写真。
短い返事。
でも、その表情はどこか楽しそうだった。
正直、私はサッカーのことをほとんど知らない。
オフサイドって何だっけ、くらいのレベルだ。
すると柔太朗くんが少しだけ顔を上げた。
曖昧に答えると、柔太朗くんは少し考えるように黙った。
そして。
まるで″ コンビニ行く? ″くらいの軽さだった。
でも私の心臓は全然軽くない。
柔太朗くんは少しだけ笑った。
その笑顔が見られただけで、誘いを受けてよかったと思う。
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試合当日。
スタジアムは思った以上に人が多かった。
選手のユニフォームを着た人たちが行き交い、試合前から熱気に包まれている。
柔太朗くんはどこか誇らしげだ。
好きなものを見せたかったんだろうな、となんとなく思う。
席に座ると、柔太朗くんは試合が始まる前からいろいろ教えてくれた。
普段はクールなのに、サッカーの話をしている時だけは少し表情が柔らかい。
その横顔を見ているだけで楽しかった。
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試合が始まる。
応援の声が響く。
選手たちが全力で走る。
ルールは全部分からなくても、スタジアムの空気だけで十分わくわくした。
と柔太朗くんが笑う。
その笑顔につられて私も笑った。
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気づけば試合はあっという間に終わっていた。
帰り道。
スタジアムから駅へ向かう人の波に流されながら歩く。
これは紛れもない本心だった。
慌てて言葉を探す。
でも焦るほど口が勝手に動く。
沈黙する。
数秒前まで聞こえていた周りの声が、急に遠くなった気がした。
……え?
私、今なんて言った?
自分の発言を理解した瞬間、顔から火が出そうになる。
何が違うのか自分でも分からない。
柔太朗くんは黙ったままこちらを見ている。
お願いだから何か言って。
そう思っていると、
心臓が跳ねる。
柔太朗くんは少しだけ目を逸らした。
しばらく歩いていると、柔太朗くんが小さく笑った。
柔太朗くんは前を向いたまま。
でも耳だけが少し赤かった。
思わず聞き返す。
すると柔太朗くんは当たり前みたいに言った。
その横顔を見た瞬間。
次の試合も、きっと私は柔太朗くんばかり見てしまうんだろうなと思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!