生徒会の手伝いで、私は「落とし物ノート」の管理を任されていた。落とし物の名前や特徴を書いて、持ち主が現れたらチェックを入れる。地味な仕事だけど嫌いじゃない。
放課後、一人でノートを整理していると、ふと変な記録を見つけた。
『 好きな人への気持ち 』
落とし物の欄に、そう書いてある。思わず二度見した。
なにこれ?何かのいたずら??
ページを捲ってみると数日後にも同じような言葉が。
『 伝えられなかった言葉 』
さらに次の週には
『 勇気 』
意味がわからない。しかし、どうしても気になってしまった。
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それから私は、その記録を探すようになった。落とし物が書き込まれるたびにノートを開く。そして見つける。
『 あの日の後悔 』
『 会いたい気持ち 』
でも、どれも落し物じゃない。なのに、どこか本気で書かれているような気がした。
ある日の放課後。ノートを見ていた私は、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこに居たのは太智くんだった。わたしは慌ててノートを閉じる。が、遅かった。彼はノートの表紙を見るや否や
しばらく沈黙した後、困ったように笑う。
そう聞くと、彼は窓の外を見た。
夕日が差し込んでいる。
彼は私を見た。優しい目だった。
意味が分からなかった。でも、なぜか目を逸らせない。
私が尋ねると彼は笑ってこくりと頷いた。
彼の視線がまっすぐ私に向いた。心臓がうるさい。
何も言えない私に、彼は少し照れたように笑う。
窓から吹く風がノートのページをめくる。
ぱらり、と開いた最後のページ。
そこには今日の日付で、たった一行。
『 君への気持ち 』
私は思わず笑ってしまった。すると彼も笑う。
その瞬間、ようやく分かった。
あのノートに書かれていたのは、全部落とし物なんかじゃなかった。
ずっと、私へ向けられていた、小さなラブレターだったのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。