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#MeTooは制作現場では広まっていない

――2019年から業界団体が経産省と連携して「映画制作現場の適正化」を推し進めていますし、映連に所属する大手映画会社の中にハラスメント講座やホットラインを設けているところもあると聞きます。こういった動きがあるので、映像業界全体にインティマシー・コーディネーターを起用する流れがあるのかと思っていました。

西山:ご興味をもってくださる監督やプロデューサーは少なくないですし、私のクライアントはリピーターが多いです。しかし、#MeTooやハラスメントに関しては現場ではそれほど話題になっていないのが現状です。私の経験からいうと、現場で働いているスタッフは早朝から深夜まで働き詰め。撮影が始めると毎日、数時間しか眠れない日も多い……。そうなると、「明日の朝、起きれるだろうか?」しか考えられなくなるんですよ。

過酷なスケジュールで心身ともに疲弊していると、社会で何が起こっているとか、ハラスメントはやめなきゃいけないとか、そこまで思考がついていかないわけです。社会との接点がなくなっているというか……。

写真はイメージです〔PHOTO〕iStock

――しかし、映画監督たちのなかにはハラスメント講習やリスペクト・トレーニングを入れている人もいますよね。

西山:そういう方もいらっしゃいます。特に若い制作者たちはハラスメントに関して意識が高いです。とはいえ、アメリカのように組合の規則があるわけではないので、完全に“人”によります

もちろん、テレビ局や大手映画会社で働いている人たちはハラスメント講習を受けていると聞きます。しかし、実際に現場で働くのはフリーランスのスタッフたちが多いので、なかなか#MeTooまで気にかける余裕は生まれない……。目の前の仕事をこなすのが精一杯の状況に陥っていると思います。

そもそも日本のエンタメ業界は、フリーランスのスタッフの労働者としての権利すらまともに守られていないところがあるので……。

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――それはどういうことですか?

西山:これは私の個人的な体験談ですが、数カ月前に終わった仕事のギャラが振り込まれない。連絡してもスルーされる。支払うと言われても全く振り込まれない。そのやり取りを繰り返す、ということがあります。正直、疲れます。毎日山ほどある業務の中、外部機関に相談する労力もなかなかかけられない。

自分だけに起こっているわけではなく、周りでもそういう話は実際に聞きます。しんどいけど、諦めてはいけないと思っています。でも、被害を受けているほうがしんどいなんて、間違っていますよね。

◇続く後編「日本人は自分のNOを知らない。日本社会が抱える『性的同意』以前の問題とは?」では、包括的性教育が導入されていない日本が抱える根本的な問題について語ってくれました。

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